木下恵介生誕100年 木下恵介アワー 3人家族
1968/10/15〜1969/04/15 (火曜21時枠・TBS)

脚本:山田太一
監督:木下恵介、川頭義郎、中川晴之助
音楽:木下忠司
主題歌:「二人だけ」あおい輝彦、瀬間千恵
制作:木下恵介
ナレーション:矢島正明




第5話
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横浜駅で新橋行きの電車に乗った雄一は、同じ車両に敬子が
乗っており息のかかりそうな程近くに居る事を知る。
"毎日混みますね"と、二人は初めて言葉を交わす。
あまりに奇妙な出会いであり、抱き合うようにして向き合って
いる現実に驚く。
横浜から新橋までは26分。その間には川崎、品川に停車する。
川崎駅では更に人が乗り込んできて電車は混雑する。
雄一の目の前に敬子の髪の毛が有り、良い香りがするのを感じる。
敬子もまた雄一の背広の防腐剤のナフタリンとタバコの臭いが
してくるのを感じる。
川崎から品川までは12分だったが殆ど話せず終いだった。
雄一は黙ったまま何も言わずに終わっても良い物だろうかと
考える中で、自分は今忙しいのだと言い聞かせる。
品川駅では人が多数降りた為に、車内は多少余裕が出る。
雄一は前にも何度か逢いましたねと言葉を投げかけると確か5回
逢ったという敬子。しかし雄一は7度目だという。
まるで誰かのイタズラみたいでありどうしてなのかと言うが、
雄一はその後何も語らなくなってしまう。まるで話す事を
拒む意思を感じた敬子。17日には留学の試験が有り、最低2年間
の海外生活が待っているので今はそれだけが目標だと心の中
で呟く。敬子はようやく逢えたのに彼は冷たすぎる人だと感じ
る。私はそれ程魅力のない人物ではないと。
敬子は職場は何処なのか?と尋ねると、
田村町だという。
敬子の旅行会社は
霞ヶ関だという。また逢いますかね?という
敬子に対して、近いから逢うでしょという。
そんな言葉のやりとりをした後、次の約束もせずに立ち去って
しまう雄一に敬子は逃げ出すような別れ方だとして、今度
逢っても知らん顔をすると呟く。雄一は相手を怒らせてしまった
だろうかと気になるのだった。

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いよいよ横浜から新橋までの間、会話する機会が得られた
二人。しかし雄一は恋愛にかまけていられないとして、必要
以上に関係を深めないように当たり障りのない話をして
素っ気ない態度を見せてしまう。心の中で憤る敬子だが
どうしても彼を憎めずにいることが分かる。

兄だけでなく弟もまた浪人生という立場の中で苦悩している
様子が描かれ、柴田家と稲葉家の面白い対照的な関係が
描かれている。

踏ん切りの付かない雄一の姿に苛立ちを覚えつつも、仕事の
為、家計を支えるために苦悩している様はとても共感の
出来る物が有った。長男としての性格も有るんだろうね。

事情を話してしまえば良いのにと思う所だけど、まだ流石に
そういう近しい関係でもないし、これから関係が発展していく
中でのことなので立場的にもどう対応して良いのか難しい
ものがある。ただこれだけ一途に思いやっているのであれば
2年間程度の壁は越えられそうな感じもするし、まだ何も決まっ
ていない状況の中で色んな行動をセーブしてしまうのが果たし
て得策なのか否か。

一度しかない人生、悔いの残らない行動・決断をしたいところ
だろうけど、判断の誤りが生じた際に彼女の為だと考えるように
なると決して関係はうまくいかないとは思うので、どう気持ちに
折り合いを付けていくのか。

ただみているだけの関係が一度であれ声をかけたことでより
イメージとしては膨らむ物が有るのかも。

菅井きんさんが憎めない世話焼きおばちゃんだね。
柴田理恵さんみたい。

柴田雄一 …… 竹脇無我 (長男、商社勤務)
柴田耕作 …… 三島雅夫 (父、サラリーマン)
柴田健 …… あおい輝彦 (次男、浪人)
稲葉敬子 …… 栗原小巻 (長女、航空会社勤務)
稲葉キク …… 賀原夏子 (母、ロシアレストラン)
稲葉明子 …… 沢田雅美 (次女、浪人)
春日ハル …… 菅井きん (お手伝い)
沢野敬 …… 中谷一郎 (写真家)
須藤兼一 …… 森幹太 (敬子の父)
小林 …… 近藤洋介 (雄一の先輩)
洋子 …… 川口恵子 (薬局)
のぼる …… 鶴田忍 (八百屋、祭囃子)

遠藤剛、永井智雄

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