木下恵介生誕100年 木下恵介アワー 3人家族
1968/10/15〜1969/04/15 (火曜21時枠・TBS)

脚本:山田太一
監督:木下恵介、川頭義郎、中川晴之助
音楽:木下忠司
主題歌:「二人だけ」あおい輝彦、瀬間千恵
制作:木下恵介
ナレーション:矢島正明





第15話 監督:川頭義郎
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一月最後の日曜日。
雄一は明日の二次試験に向けて勉強する中、父親が何処から
ともなくかかってきた電話の対応に苦慮しているのを知る。
何処からかかってきたのかと尋ねると、相手は健の友達の母親
からのもので自分ばかりが一方的に話をして電話を切ってしま
ったのだという。突然今日の午後に来るとのこと。最近明子
が健と連日遊びに出かけている事を心配して、その話合いに
来るのだという。雄一は敬子の母だと知り、あまり粗相も出来
ず、かといって試験を明日に控えて困ってしまう。父はそうい
えば明子には綺麗な姉・敬子が居ると言っていた事を思いだし、
大方一度相手の家を見に来たいと思っているのではないかと
推察する。雄一は健は何処に行ったのか?と尋ねると、朝から
調べ物があるとして図書館に言ったという父。この時期に調べ
ものなど有るハズはないという雄一はまた明子に逢いに言った
のだろうとし、父にもう少し健に勉強するよう言った方が良い
のではないかと告げる。父・耕作は健だってバカではないので
やることはやっているとして静観する構えだった。

その頃キクは敬子に柴田家の父・耕作とこれから逢いに言って
娘の事を話してくるという。向こうの親がのんきすぎるとし、
両方の親がしっかりしていないとまた一年浪人する事になると
告げる。敬子はそんな事で心証を悪くしたくはないので逢わない
でと告げ、健の兄・雄一は明日大事な試験が有るのだと語る。

その頃いつもの港で健と明子は逢っていた。
明子は姉から父親に逢ったことを聞かされ、自分には一度も
逢わずにアラスカに帰国したのがどうしても腑に落ちなかった。
5歳の時に逢ったのが最後で顔も覚えていないのに、私だけ
逢わずに帰るとはどういうことだと健に不満をぶつけるが、
僕のせいではないと健。健はまたやってくるハズだとして、
慰めると、明子は貴方に突然親が現れた人の気持ちが分かるの
か?と告げる。明子は落ち込んでいる私と毎日逢って慰めて
欲しいと告げ、このままだと勉強に手が付かないという。
僕だって勉強しなければならないというと、自分の事ばかり
だと非難する。
そんな明子なこれから家に来ないかと健は誘う。

家政婦のハルが家にやってくる。
耕作はこれから客がやってくるので座敷を使うと告げる。
ハルは余ったお持ちを持って来た事を告げ、お雑煮でも作ろうか
とするが、ご飯を炊いてしまったと父。ハルは台所を借りると
男所帯故に洗い物が溜まっている事に呆れる。私が美味しい
ものを作るととして料理を開始する。
雄一は父にハルさんの調子に合わせていたら、その気になって
しまうと告げ、今でも妻気取りになっている事を指摘する。

そんな中、柴田家にはキクがやってくる。

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いよいよ翌日に二次試験を控える中で、突然稲葉家の母・キク
は娘の明子の件で相談が有るとして柴田家を訪れることになる。
雄一も敬子も互いに両親が相手の親の心象を悪くしないかと
思い肝を冷やす。敬子もそんな事で柴田家に行かないで欲しい
と母に告げるが・・・

あの温和な耕作さんを怒らせるのだからキクさんも大したもの
だ。俺をキレさせたら大したもんだよと長州(小)力が本当に言った
かどうかは謎だけど、どんな事でもニコニコとして対応する
父親の怒りがドラマを面白くも有り、ちょっぴり引き締めるよう
な展開が描かれた。

このドラマの中でも一番ドラマが盛り上がった話かもしれない。

ハルがキクに対してライバル意識を持ち嫉妬して色々と悪態を
付くのも面白いけれど、肝心の事が語られることもないままに
喧嘩別れしてしまったところはちょっぴりこの先を不安にさせる。

お宅の空気が気に入らない・嫌らしいとし、家政婦が入り浸って
いる現状を非難するも、表面的に見たら内縁の妻に見えるのだろうか。
妻が死んで以降私は純潔だとする耕作の主張がまた凄かったけど、
一番ショックを受けたのはやはり身を潜めて会話を聞いていた
兄なんだろうな。

ただ敬子が雄一の事を好きだという事が、言葉として表現された
辺りが今回の唯一の救いなのかも知れない。

展開を見ていると男女が逆転しているかのような感じだね。

そして最後に兄弟・姉妹して酒を飲もうと語る中で、一人涙
しながら酒を飲む菅井さんの姿が余りにも面白すぎてなんとも
言えないモノが有った。

柴田雄一 …… 竹脇無我 (長男、商社勤務)
柴田耕作 …… 三島雅夫 (父、サラリーマン)
柴田健 …… あおい輝彦 (次男、浪人)
稲葉敬子 …… 栗原小巻 (長女、航空会社勤務)
稲葉キク …… 賀原夏子 (母、ロシアレストラン)
稲葉明子 …… 沢田雅美 (次女、浪人)
春日ハル …… 菅井きん (お手伝い)
沢野敬 …… 中谷一郎 (写真家)
佐藤 …… 遠藤剛 (雄一の同僚の社員)

大久保俊男

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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