木下恵介生誕100年 木下恵介アワー 3人家族
1968/10/15〜1969/04/15 (火曜21時枠・TBS)

脚本:山田太一
監督:木下恵介、川頭義郎、中川晴之助
音楽:木下忠司
主題歌:「二人だけ」あおい輝彦、瀬間千恵
制作:木下恵介
ナレーション:矢島正明





第16話 監督:川頭義郎
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明子の件で柴田家まで乗り込んで来たキクに対して家政婦のハル
が出過ぎたマネをした事で、耕作からは二度と家には来ないで
欲しいと言われたハル。日中耕作が居ない中、健の居る家にや
ってくる。健は父が珍しく怒っていた事を指摘しつつも、別に
父親の事は気にせずにこれからも家に来てくれれば良いと告げる。
しかしハルはそんなにずうずうしくは出来ないという。ただ
縁を切ると言われて寂しくなったと告げる。
健はこれから明子に逢って来るので、2、3時間の間、電話番を
していて欲しいと頼む。父親から電話がかかってくるかもしれない
事を告げ、電話で父と会話して仲直りしたらどうかと告げる。
面と向き合って会話するよりも仲直りしやすいだろうとの事だ
った。

健は明子に電話すると、いつものように港のみえる公園で逢う。
先日父がキクに対して珍しく激怒したこと。そしてキクもまた
二度と逢うなと言って居た事を語り合う。両親達があまりに
感情的になったことに対して驚くべき事だが、逆に親の目を盗んで
逢うのはロマンチックなシチュエーションだと語る。健もまた
急に君と会えないと思うと君の姿が美人に思えてきたという。
明子は健に対して私の事を好きになったのか?と尋ねるが、君は
良い友達だと語る。
先日明子は敬子の口から雄一が好きだと聞いた事を健に語り、
健もまた伝聞の形で雄一にその事を話していた。しかし兄は
そんな余計な事はするなとして勉強をしろと言われた事を明子
に語る。でもその後兄はずっと考え込み、ラブソングを口ずさみ
ながら散歩に出かけていったと語る。互いに愛し合っている事
は明らかだが、問題は兄が仕事本位であり、好きという気持ち
を抑えてしまうところにあると語る。それを聞いていた明子
は健こそ目の前にこんな美人が居るのにトウモロコシばかり
食べて居ないでと告げると、健はいつも明子が怒っていると
呟く。

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柴田家・稲葉家の家長が互いに喧嘩する中で、子供達はそれぞれ
の相手に逢って互いの存在を意識し合っている事を確認する。
雄一は二次試験の面接をなんとか受けるが・・・

互いに会えないとされる事で相手に対する気持ちを再燃させたと
いう話だっただろうか。

明子が何故最近健と逢っているのか。
父の件で相談に乗ってもらっていたことを母親にも素直に話したら
良いのになと思いながら見ていた。

雄一と敬子が変わらずに喫茶店でお茶する。
互いに好きだと分かりつつも気軽な友達になろうと話した事で
少し距離が近づきつつも、目の前には高い壁が出来てしまった
感じにも思える。
年を取って互いの家庭同士お酒が飲めたら良いとする敬子のセリフ
は逆に雄一に対する当てつけのような感じもするしね。

ちょうど現在見ている 体操の代表選手を目指すという内容の
海外ドラマ跳べ!ロックガールズ 〜メダルへの誓いs3 7話
の中で、ペイソンとマックスという二人がオリンピックを目指す
が為に全く同様のシチュエーションになっており、日本でもアメ
リカでも目標を達成する為に、犠牲にするものが有るという描き方
をされている所は興味深い。

凄いのは沢野の図々しさ・図太さなのかも。
喫茶店で会話するで二人の中に同席して、一方的に関係をかき
乱していく辺りあまりに凄かったけど、逆に彼の様なカンフル剤
がないとこの二人は結ばれないような感じがするしね。
沢野自身の行動は、雄一を単に牽制してのことなのか、それとも
敬子の幸せのために一役買って出ているのか分からないけれど、
その辺が明らかになるのはまだまだ先か。

再び耕作とキクが衝突。
キクの行動力もある意味凄い。雄一が語る様に男性社会の中で
一家の主として家計を支えてきたであろう事を考えると気が強く
なるのは仕方が無いのかも知れない。
アメリカのドラマならばもの凄い喧嘩した後に劇的にキスして
結ばれるみたいなドラマチックな展開を用意しそうだけど、
この二人の可能性はどうなのかな。

耕作が鬼伍長だと言われた際の戦時中のネタも飛び出した。
まだこの時代、戦争の名残が有る時代なんだね。
30分のドラマの中にもそんな影を持ち込んでいる辺りが流石。
人間の信念ほどいい加減なモノは無い。敗戦後に自分の気持ちを
押し通そうと思う気持ちを失ったとする耕作が、何故子供たちに
対して寛容な姿を見せているのかが語られた。

キクが居て怒っても良い場面の中でも常に笑顔を見せているし、
私のいう事などいつも通らないとして、ハルさんにも寛容な
姿を見せるところは、三島雅夫さんの暖かさが見られて良い
役柄だね。

柴田雄一 …… 竹脇無我 (長男、商社勤務)
柴田耕作 …… 三島雅夫 (父、サラリーマン)
柴田健 …… あおい輝彦 (次男、浪人)
稲葉敬子 …… 栗原小巻 (長女、航空会社勤務)
稲葉キク …… 賀原夏子 (母、ロシアレストラン)
稲葉明子 …… 沢田雅美 (次女、浪人)
春日ハル …… 菅井きん (お手伝い)
沢野敬 …… 中谷一郎 (写真家)
佐藤 …… 遠藤剛 (雄一の同僚の社員)

城戸卓

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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