木下恵介生誕100年 木下恵介アワー 3人家族
1968/10/15〜1969/04/15 (火曜21時枠・TBS)

脚本:山田太一
監督:木下恵介、川頭義郎、中川晴之助
音楽:木下忠司
主題歌:「二人だけ」あおい輝彦、瀬間千恵
制作:木下恵介
ナレーション:矢島正明





第21話 監督:川頭義郎
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昭和44年度入学試験合格者発表。
大学ではいよいよ試験が終わり合格者発表になる。
健と明子も大学をそれぞれ4校受けたが見に行くことに。
雄一と耕作は朝出社しようとして玄関に向かう。父は暫く靴を
磨いていなかったとしてその場で磨く。雄一は靴を買ったらど
うかとするが、父はもう定年だからその必要は無いという。
雄一は海外赴任だから沢山買った方が良いと語る。
父は一度家を出るが忘れ物をしたとして家に戻る。
父は健に対して渡すものが合ったとして、入学金の13万5千円
を健に渡す。健の受かった大学の入学手続きの締め切りが今日
までだったのである。しかし明日が健にとっての本命の大学だ
った。その大学に受かっていたら、また入学金を払わねばならず
二度払うハメになるのである。しかしもしもここで入学金を
払っておかねば、明日の本命校に落ちた場合にまた浪人になっ
てしまうという無情な状況だった。耕作は決して無駄な金では
無いとし、兄さんに言うと五月蠅く言うからとして金を渡す。
健はその心遣いに感謝を示す。

雄一は耕作が来るのを踏切の所で待っていた。
雄一は耕作が何故家に戻ったのか薄々その理由が分かっていた。
健の合格のことでしょ?と告げると、耕作はこんな酷い話は無い
とし、片方の合格を待つ間に片方は入学願書を締め切るのだと
いう。大学も所詮は商売だという。それでも13万5千円は痛い
出費だと語る。

明子は朝から受験に使っていた参考書などを処分し、部屋の掃除
をする。本を投げ散らかす娘を見て母・キクは、そんなに本を
乱暴に扱うモノでは無いと怒る。しかし明子は受験生の気持ちを
分かっていないと母に反論し、合格したら川に本を投げ捨てる
人も多いのだという。本を片付けるのも余韻に浸って楽しんで
いるとし、ゆっくりと片付けるという。第四志望の家政科の
大学に受かってあんまり良い気分にならないで欲しいという母
は大学に入ったから遊ぶ権利が得られたと思わないでと告げる。
しかし明子は合格したばかりなのだから少しはその気分に
浸らせてと訴えるのだった。

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いよいよ健と明子の大学入試の合格発表が行われる。
健は本命以外の大学に合格するが、本命の大学の合格発表がある
前に入学願書の受付が終了する事になり、確実に浪人しないため
には、この大学への入学金を支払うしかない状況になる。

昔は大学もこういう阿漕な商売をしていたって事なのか。
入学手付け金を一部納めるのならばまだしも入学金そのものを
支払わねばならないなんてどうだけ酷い時代なんでしょうかっ
て感じ。もちろん大学にしてみれば人を獲得したいのは分かる
のだけどね。

一か八かの賭けによって健は13万5千円を無駄に使うことなく、
翌日の試験結果に賭けるという事で、展開としてもハラハラ
ドキドキの状況が生まれた。
大学に落ちたら別の道を探るとしていたので、落ちる可能性も
十分に考えられたけど、努力が報われないとするドラマを作らな
い分けはないのかなと。

ハルさんが久しぶりに登場。自宅で勉強をしていた健が一番
ハルさんと接している時間が長かったわけで、母親の居ない
柴田家の良い母親だね。

また今回は合格という事で洋子が祝いに来たり、初回の頃に
出て来ていた地元商店街の仲間たちが祝いに来ていた。
父親が二人の子の旅立ちを寂しがるのと共に、商店街の人たちも
健が大学に入る事で、地元との付き合いが無くなるものだと
感じて寂しさを唱えている所が印象的。
そして何よりも洋子に対して明子が手厳しく追い返した所が
凄かった。振ったモノの礼儀として、忘れようとしている人の
前に近づくなという。ただ彼女薬屋さん勤務だし、嫌でも会う事
にはなるのだろうけどね。

一方雄一と敬子は随分ザックバランに逢う様になり、冗談も
言い合える関係になりつつある。完全に吹っ切ったのかどうか
は分からないけど、二人が理想としていた付き合いが合格の
発表の後に訪れるというのが切ないかな。
ただ敬子も雄一もまだまだ探りながらの関係が続いているし、
誰か適当な人と結婚しようかみたいな敬子の発言を聞いている
とナチュラルに雄一に示唆している事が多い。
見て見ぬふりをしていると明子と洋子の関係の中でも指摘され
ていたけど、雄一もまた相当見て見ぬフリをしている人物の
一人なのかな。

柴田雄一 …… 竹脇無我 (長男、商社勤務)
柴田耕作 …… 三島雅夫 (父、サラリーマン)
柴田健 …… あおい輝彦 (次男、浪人)
稲葉敬子 …… 栗原小巻 (長女、航空会社勤務)
稲葉キク …… 賀原夏子 (母、ロシアレストラン)
稲葉明子 …… 沢田雅美 (次女、浪人)
春日ハル …… 菅井きん (お手伝い)
沢野敬 …… 中谷一郎 (写真家)
佐藤 …… 遠藤剛 (雄一の同僚の社員)

洋子 …… 川口恵子 (薬局)
のぼる …… 鶴田忍 (八百屋、祭囃子)

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