太陽にほえろ!
1972年7月21日から1986年11月14日・全718話
日本テレビ

プロデューサー(日本テレビ):津田昭、岡田晋吉、清水欣也、山
口剛、川口晴年、中村良男、酒井浩至、服部比佐夫
プロデューサー(東宝):梅浦洋一、梶山仗佑、新野悟
企画・原作:魔久平(共同ペンネーム)
原案:小川英
音楽:大野克夫

http://www.teletama.jp/drama/index.html





第77話 五十億円のゲーム

脚本/小川英、武末勝 監督/児玉進
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「そろそろ結論は出たか?もったいぶらずに早く結論を出してく
れ。」
4人の若者(3人の男性・1人の女性)はアパートの一室で語り会う。
俺たちだって資料を集めたりして随分働いたのだという。
成功率は90%・・・儲けは50億円だという。リーダーの森川三郎
以外は驚くが三郎はたかが1億円の50倍だと語る。

ジーパンはオフィスにやってくると、ゴリさんが早くもオフィス
に座り新聞を読んでいた。記事では水爆実験が強行されると書
かれており酷い話だと呟く。海も川も汚染され、そのウチ魚
も食べられなくなるだろうと。ジーパンはゴリにいつも食い物
のことばかり心配してると突っ込みを入れる。

日本原子力研究センターの輸送車。
2人の職員は"危険"と書かれたライトバンで濃縮ウラン235を
運ぶ。道路工事中で迂回することになる車は、袋小路で容疑者
たちによって薬で眠らされると、ライトバンごと奪われて
しまう。

一係にはすぐに日本原子力研究センターの所長から電話が鳴り
濃縮ウランが盗まれたと報告が入る。早く緊急手配をして欲しい
とのことだった。

その頃ライトバンはガソリンスタンドに止まると、突然保冷車
の中にライトバンを入れ保冷車ごと車を運ばれることになる。

連絡を受けた一係はすぐに捜査本部を設置し、恐らく犯人は通行
禁止で誘い込んでウランを盗んだとする計画的犯行だろうと
語る。所長は何故車種やナンバーが判明しているのに緊急手配
に引っかからないのかと問う。ボスは寧ろ濃縮ウランの輸送方法
に問題があり、無謀すぎることを指摘するが、所長はあくまで
法規通りの手順であり、濃縮ウランを盗むなど馬鹿げていると
いう。買い手など先ず居ないし、濃縮ウランというだけで原爆
だと思っているがそうではないという。

そんな中突然ボスの元に電話が鳴る。ウランを盗んだとする
のは俺たちだとするものからの電話だった。用件は50億円で
盗んだウランを売るというもの。支払うのは日本政府だと
告げ、もしも取引に応じなければ、酸性のある溶液に溶かして
水源地にぶち込むことになるのだという。金の支払い方法に
関してはまた連絡するとのことだった。所長によるとウランは
水には溶けないがある種の溶液には溶けると告げ、貯水池に
まかれたら水道水などに混入され大変なことになるという。
体内に入っても即死には至らないが、放射能障害が起きるとの
ことだった。濃縮ウランとは何なのかと尋ねると、天然ウラン
235の割合を人工的に増やしたもので、1kgでマッチ3袋程度の
大きさになるという。1kgで石炭3千トンを一度に燃やすだけの
熱量を持つもので、今回盗まれたのは4kg分に相当するもの
だという。これは警察への挑戦であり国家反逆罪だと言うと、
七曲署の署長や警視庁のものたちは公開捜査に踏み切って
早期解決を求めようと語る。しかしボスはその意見には反対で
ある事を告げる。ボスは日本原子力研究センターの所長に
対して尋ねたいことがあると告げ、貯水池に放り込めば犯人自身
が危険なのではないかという。確かに一番被爆に近いのは犯人
であることに違い無いという。恐らく公開捜査になれば社会的
にパニックになるとし、社会不安を引き起こすという。
実行することよりもそうした不安を引き出すことが犯人の狙い
なのではないかというものだった。公表すれば犯人の罠に引っかかる
ことになるという。署長たちはボスに対して何か捕まえる為の
公算があるのかと問うと、自信ありげに話す。
取りあえず一係が捜査を担当することになる。

一係のメンバーたちは今回の事件について語り会う。
確かにボスのいう通りで、公表すればパニックとなり、そして
英雄視する人物も出るという。公算があるというのはハッタリ
だったことをボスは語るが、スタンドプレイに出る知能犯は
盲点があるとし、地味なところでボロを出すものだという。
それを見逃さずに捕まえるのだと語る。

そんな中、犯人からの電話が鳴る。
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濃縮ウランを輸送中の日本原子力研究センターのライトバンが
犯人によって車ごと盗まれ、犯人が要求したのは、日本政府
に対して50億円という莫大な金だった。要求に応じなければ
貯水池に放出すると言われ、警視庁としては対応に苦慮する。
藤堂率いる一係が濃縮ウラン回収と犯人捜しを担当することに
なる。

意外とドラマとしては40年も前のドラマなのに巡り巡ってタイム
リーのネタって感じで、現在の日本の原子力政策を皮肉っている
感じにも思えるエピソード。
一歩間違えれば、このドラマの内容も「太陽にほえろ!」が抱えて
いる、封印エピソードと同様の、禁断のシナリオになりそうな
素材のものが含まれているけど、放送されて良かったと思う。

流石に当時、濃縮ウランとかウラン235とか言われても国民的
にはピンと来なかったのかも。
東日本大震災が起きるまでは、多分多くの人も原子力政策に関して
は無関心だったと思うし、濃縮ウランと原子爆弾の区別なんかも
よく分からなかったものだと思う。今見るからこそある意味斬新
に響いてくるものがあった。

今回の犯人は福島県出身の町医者の息子だということで、
なんだか恐いくらいに東日本大震災が起きた後のことを想定
して描かれたものなのかと思ったけど、よく見ると福島の
第一原発が稼働し始めたのは1971年とあるので、当時の社会的に
もこの手の問題は議論として上がっていたのかな。
ゴリさんが新聞を目にして、水爆実験に関して懸念を表明して
いた。

やはりなんといってもインパクトがあるのは、輸送車が護衛も
なく濃縮ウランを一般車両で運んでいること。
車両にはご大層に「危険・日本原子力研究センター」の文字が
真っ赤なペイントで描かれていて、濃縮ウランを求める武器商人
が入れば格好のターゲットにさえなり得るものだった。

国家存亡の危機とまではいかないものの、この案件を一刑事
チームだけが捜査にあたるという設定自体は相当無理が有った
と思う。
ボスが犯人の心理を読んでの行動を取ったけど、こういう事件
を一か八かの勘で処理してしまうというのもかなり心細いもの
が有るぞ。

犯人は50億円を口座の中に入れて、時効が訪れる7年間は
口座に寝かしつけておくのだという。そんな口座が有れば
即効で凍結されるだろうと小一時間な感じがしたけど、当時
はそういう権限が無かったのかな。
また時代は銀行のATMの全国のラインシステムが構築された
頃の話なのか、支店でも金が引き出されることが問題だと
されていた。

相手が仕掛けたゲームならば、こっちもそのゲームに乗る
とばかりに、上手いこと相手に揺さぶりをかけ、相手に
ウランの場所に案内させる辺りは上手く出来ていたね。
しかしあんなずさんな場所に捨てて置くなって感じだった。


藤堂俊介 …… 石原裕次郎 (七曲署・一係のボス、係長)
山村精一 …… 露口茂 (山さん)
石塚誠 …… 竜雷太 (ゴリさん)
島公之 …… 小野寺昭 (殿下)
野崎太郎 …… 下川辰平 (長さん)
早見淳 …… 萩原健一 (マカロニ)
内田伸子 …… 関根恵子 (シンコ)
柴田純 …… 松田優作 (ジーパン)

永井久美 …… 青木英美 (七曲署の庶務係)
柴田たき …… 菅井きん (ジーパンの母、夫は殉職)
西山隆行 …… 平田昭彦 (署長)

藤田進、草薙幸二郎、入江正徳、高原駿雄、奥野匡、重松収、
田村勝彦、前田哲朗、片山滉、山本武、関口真砂子、斉藤英雄



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