太陽にほえろ!
1972年7月21日から1986年11月14日・全718話
日本テレビ

プロデューサー(日本テレビ):津田昭、岡田晋吉、清水欣也、山
口剛、川口晴年、中村良男、酒井浩至、服部比佐夫
プロデューサー(東宝):梅浦洋一、梶山仗佑、新野悟
企画・原作:魔久平(共同ペンネーム)
原案:小川英
音楽:大野克夫

http://www.teletama.jp/drama/index.html





第84話 人質

脚本/永原秀一、峯尾基三 監督/竹林進
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白石のぼるは糸鋸を使ってライフル銃の銃身・銃床を切り取る。

東名信用金庫では9時開店の為に準備していた。
行員の2人の女性たちは、また今日も同じ事の繰り返しであり、
互いに早く旦那を捜したいわねと語り合う。
9時になると同時に警備員が信用金庫のシャッターを開けて客
が入ってくるのを静かに待つ。すると三人の男性がライフル銃
を手にして信用金庫に押し入ってくるのだった。すぐに警備員
に対してシャッターを閉める様要求すると、行員たちを全員
窓際に集める。支店長に対して金庫の扉を開けるよう要求する
主犯格の男・霧島。支店長は私が死ねば扉を開けることは出来
なくなるとして強気に出るが、自分達は爆弾を持っているので
殺した後に爆弾で扉を開けることも可能なのだと語る。

支店長は観念し、厳重にロックされた扉を開けていく。
金庫に到着した霧島は支店長に用意してきたバッグの中に金を
入れろと要求する。
そんな中一人の行員が犯人の一人・白石が持ち場から離れたの
を知るとその隙を突いて非常ボタンを押そうとする。それに
気が付いた中野が行員に向けて発砲したことで大騒ぎになる。
非常ボタンも押されて銀行内では大きな音が鳴り響く中、
急いで外に逃げ出す三人の犯人。
駆けつけた2人の警察官に対して発砲すると、警察官は更に
増員され激しい銃撃戦になる。中野が警察の銃弾で足を痛めた
ことも有って三人は再び今入って来た信用金庫に戻ると、
女子行員2名を人質に取り金庫内へと入り込んでしまう。

そんな中一係のボスにも館内で銀行強盗事件が有り、行員を
人質に立て籠もっているとの知らせを受けて現場に行く事になる。

金庫の扉は閉めると自動的に鍵のかかる仕組みだった。
自分達も容易に外には出られなくなったが、逆に相手側もノコノコ
入ってくることは出来ないという霧島。

現場に着いた一係は現状を聞く。
金庫内に閉じ込められたのは2人の女子行員と3名の犯人である
こと。金庫内は30cmから40cmの分厚い壁があるのでワイヤレス
マイクが音を拾うことは不可能であること。室内とは電話で
会話が出来ること。
先ずは犯人が誰なのか、外に居る行員たちの証言からモンター
ジュを作成し割り出し作業をしようという。

ボスは金庫内の電話に内線で電話を入れる。
電話に出たのは主犯格の霧島だった。用事があるときはこちらか
ら電話するとして、下手なマネをすれば人質は殺害すると脅して
くる。ボスは自分が交渉係になるので何かあれば内線に知らせる
様告げる。
ゴリは通話の音声を聞いて何処かで聴いた事がある声だとする
が思い出せずにいた。

使用された凶器は銃ではなくライフル銃だったとし、22口径
のライフル用のもので銃身と銃床を切ったものだという。命中率は
下がるが殺傷力は高いものだという。
するとボスはあとどのくらいで持つかが問題だと呟く。
ボスはみんなに彼らは換気口の中密室の中に居るのだとし、
その狭い部屋に5人も居れば酸素が無くなるのも時間の問題だと
いう。しかも一人は足を負傷しているのであり、そのウチ向こう
から連絡をしてくるハズだと見ていた。

女子行員の二人は犯人たちに対して自首すべきだとして、どうにも
ならないことは自分達も分かっているハズだと語る。しかし白石
は行員たちに黙るよう告げると銃を向ける。

タバコを吸っていた犯人たちもようやく自分達が密閉された空間
にいることを認識し、空気が薄くなってきていることを自覚する。
ボスの元に犯人から電話が鳴るがボスは電話には出なかった。
電話が切れた後、再度改めてボスの方から電話すると、犯人たち
は電話に出ないことに苛立ちを覚える。
犯人は壁に風通し用の穴を開け、そして医者を呼べと要求する。
ボスは少し虫が良すぎる話ではないかとして俺が壁に穴を開けない
と言ったらどうするのかと問う。窒息死するのであればお前達
も死ぬのだぞと問うと、人質を解放するよう求める。
医者と一緒に俺が人質になると語る。
そんな会話を聞いていたゴリは、城南署時代に逮捕した霧島の声
である事を知る。
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信用金庫にライフルを持った3人組の強盗が入り、いち早く知らせ
を受けた警察が銀行を取り囲む。犯人は2人の人質を取り信用金庫
内の厳重な金庫の中に籠城してしまう。しかし金庫内は換気ダクト
もなく、室内の空気が無くなることは明らかだった。
ボスは電話を通して内部の犯罪者と連絡を取り、空気穴や医者を
派遣する変わりに、人質の交換を申し出る。

今回はゴリさんがメインのエピソード。

内容的には人質立て籠もり事件にありがちな内部と外部の連絡
をどのようにしていくのかという、通信の問題が有り、時代性を
考えると、その意思疎通の方法には相当手を焼いている感じだった。

ただ冷静に考えれば、実質的に2人しか銃を持っている人は居なかった
し、最初の人質交換の時に強引に押し入れば、殆ど無傷のまま
検挙できたようなシチュエーションが有り、その辺の構成の仕方には
もう少し気を使って欲しかったところ。

銃身の長いライフル銃だと、白兵戦・近接戦には弱点にもなり得る
ことも有るので、銃身を切ってしまうという辺りは大胆な発想では
有ったけど、あんなことをしたら相当危険だよな。
心理学的には、銀行強盗というと基本的には殺傷能力の有る銃は必要
ないと思われ、恐怖心を行員たちに与えて、従わせるという役割り
だけ果たせれば良いので、ライフル銃に拘る必要もなかったと思う
んだけどね。22口径のライフルだと言っていたので、多分競技用の
ものだろうけど、殺傷力としては口径が小さいし、意外と武器だけを
見ると矛盾が有る。
ただ犯人が最後に派手にセスナ機を使ってパフォーマンスしようと
していたところを見ると、ライフル銃とかそういう派手な銃を
持ちたい心理とか有るんだろうけどね。

なんといっても驚くのは、クレジットとしては普通の俳優レベル
の場所で登場した中村雅俊さんが登場したところか。
wikipediaなんかの情報を見ると、このドラマがテレビ初出演になっ
ているので、その辺は納得なのだけど、もうこのドラマに出た次の
年には「われら青春!」とか「俺たちの勲章」「俺たちの旅」に
出演しているので、ある意味ではもの凄く短期間でスターダムに
上り詰めた人なんだね。

太陽に吠えろを見ていると、刑事ドラマに於ける成長物語だけでなく、
日本のテクノロジーの当時の進化の度合いなんかも見て取れて
興味深いなと思う。
現代でこそ携帯電話で用意に遠隔地と連絡が取れるけど、当時は
携帯など当然無い訳で、その代替的役割を担っていたのが、

当初、太陽にほえろというと、本部との連絡の手段にはポケベル
が使われていたけど、そこから無線を使うようになり、今回も
室内の音声を拾うためにワイヤレスのマイクを金庫の中に投げ込む
ことになったけど、如何にもコードが出ていて不自然過ぎる
ものがゴロンと内部に落ちていたことも有るし、わざわざワイヤレス
を使わなくても、壁に穴を開けた時点で、内部の会話は筒抜けになっ
ていたよなと思うとやや不可解ではある。

ゴリさんが過去に捕まえ、そして取り調べ室で激しくやりあった
人物が再び犯行を犯したということで、人質役にゴリが立候補する
けど、そういう情報を何故話していかないのかに関して、隠す
べき程のことではないと思うんだけどね。自分で決着を付けるべき
過去の因縁という訳でもないし。

署長が久しぶりに出てきたかと思えば、相変わらず場違いな発言を
してはボスに要求していく。犯人の父親が国会議員だと知って
態度を翻す辺り、当時は議員の権力が強かったことが伺える。
最近のようにマスコミや世論の力がない時代なんだろうね。

地味だけどボスが犯人との交渉で優位に立とうとする流れを演出
したところは見事だったかな。
わざと電話に出なかったりして、如何に心理的にイニシアチブを
握るのかは現代の捜査心理では色々と分析されていると思うけど、
当時にしては斬新だっただろうね。

ラジオを使って急遽内部と連絡を取ろうとしたり、ゴリの側からは
突然歌を歌い始めるところなど面白い駆け引きが有った。
ラジオDJからボスからゴリへの葉書が読まれる形で、
「受験生だが12時になると親に電気が消されてしまう。涙が出る」
ということで、作戦は12時に電気を消して催涙ガスを流すという
合図だった。

美味いビフテキを食わして下さいよというゴリさん。
やっぱり憎めないね。

そういえば、ドラマではボスとゴリが自分が人質になると言い張り
合う時に、自分は「チャンガー」だからという台詞が有ったので、何の
ことかと思ったけど、wikiによると、

>日本におけるモダン語の一つで、未成年者や独身男を意味する。
>朝鮮語 からの借用語。大韓帝国においては、未婚者はチョンガーと
>呼ばれ、非常に軽蔑され ていた。

だそうだ。


藤堂俊介 …… 石原裕次郎 (七曲署・一係のボス、係長)
山村精一 …… 露口茂 (山さん)
石塚誠 …… 竜雷太 (ゴリさん)
島公之 …… 小野寺昭 (殿下)
野崎太郎 …… 下川辰平 (長さん)
早見淳 …… 萩原健一 (マカロニ)
内田伸子 …… 関根恵子 (シンコ)
柴田純 …… 松田優作 (ジーパン)

永井久美 …… 青木英美 (七曲署の庶務係)
柴田たき …… 菅井きん (ジーパンの母、夫は殉職)
署長 …… 平田昭彦

白石のぼる …… 高峰圭二 (議員・白石こうじろうの息子、犯人)
霧島修司 …… 原口剛 (34歳、昭和15年2月24日生まれ、主犯)
中野英夫 …… 中山克巳 31歳、昭和17年8月14日、足を撃たれる犯人)
長谷川 …… 中村雅俊 (医者)
東名信用金庫支店長 …… 森山周一郎
信用金庫職員・人質 …… 伊藤めぐみ
信用金庫職員・人質 …… 佐藤耀子

志賀正浩、村山憲三、菊地正孝、松下昌司、中村文孝



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