太陽にほえろ!
1972年7月21日から1986年11月14日・全718話
日本テレビ

プロデューサー(日本テレビ):津田昭、岡田晋吉、清水欣也、山
口剛、川口晴年、中村良男、酒井浩至、服部比佐夫
プロデューサー(東宝):梅浦洋一、梶山仗佑、新野悟
企画・原作:魔久平(共同ペンネーム)
原案:小川英
音楽:大野克夫

http://www.teletama.jp/drama/index.html





第97話 その子に罪はない

脚本/播磨幸治 監督/斉藤光正
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警察と救急車は事件現場に車を走らせる。
一家四人の家族皆殺し事件が発生したのである。
リビングにいたところを全員が殺害されて発見されたもので、
現場でば生々しくリンゴを剥いていた形跡が有る。包丁を
調べるが、刺殺痕からして短刀か刺身包丁だろうというボス。
長さんは現場の家屋の庭から煙草の吸い殻を発見する。

一係は署に戻ると事件に関して分かっていることを語り合う。
死亡推定時刻は昨夜の22時前後、夫婦に息子、そしてお手伝い
の女性が居間にいたところを殺害したもの。部屋からは土地を
売ったばかりの4千万円が有ったハズが無くなっているという。
単独犯なのか組織的犯行なのはまだ分かっていないとのこと。
そんな中、ボスの元に本庁から電話が鳴る。
長さんが拾った煙草の吸い殻の指紋から、容疑者は市川勝(26歳)
だと判明したというもの。重要指名手配犯として全国に顔写真
が配られている人物。3ヶ月前に千葉で質屋を営む老夫婦の家
に盗みに入り重傷を負わせているということだった。
彼は13歳の時に人を殺しているという山村。育ててくれた叔父
を殺害しているのだという。東京に戻ってきたのかと呟く中、
ジーパンは犯人はどうかしているとして猟奇的殺人事件である
事を語る。ボスは捜査本部は本庁に設置されることになった
為に一係としての捜査は無くなったことを語る。

部下たちは不満を述べる中、一係には突然男がやってくる。
ボスに対して突然活きのいい人物を一人貸してくれという男
は、捜査官たちの顔を一人ずつ品定めするように覗いていく。
そしてジーパンの前に立つと彼に決めたという。一体誰なのか
というと、ボスは警視庁の島田警部だという。島田は壁に
貼られている指名手配犯の市川の写真を取ると、そこに突然
落書きのようにしてマジックペンで書き始める。そして書き終
わったものを突き出すとこの写真の顔を覚えておけと告げる。

ゴリと長さん、デンカはドブさらいをさせられ凶器の発見を
させられる。
一方山村とシンコは保育園である女性のことを監視していた。
シンコは前科5犯の殺人犯が保育士の今寺良子と繋がりがある
なんて考えられないというと、山村は幼なじみなのだという。
恐喝の罪で市川が服役中に唯一彼女からの見舞いの葉書が届いて
いるのだという。市川には身寄りがなく、幼少期からアダナは
"ムショ生まれ"と呼ばれてきたのだという。母親が常習のスリ
で服役中に生まれた子であり、父親のことは誰だか分かっておらず
その母親も市川を生んだ時に亡くなっているという。その後叔父
に引き取られて育てられたとのことだった。

ジーパンと島田警部は市川が潜伏していると思われるアパート
前で張り込みしていた。ジーパンの前に可愛い女の子がやって
くるとジーパンはガムを差し出す。すると島田は市川が来た
ことを告げると、市川はそれに気が付き逃げる。島田が追いかけた
末、逮捕するのだった。

本庁から迎いが来るまで七曲署で市川の身柄を確保しておく
ことになる。大物犯罪者の逮捕に七曲署の周りではマスコミ
で溢れていた。
市川から事情を聞くと千葉の事件は自分がやったと自供するが
夕べの殺しはオレではないとして否定する。オレにはアリバイが
あるのだというと、島田は何処にいたのか言ってみろと問う。
すると市川は意見を取り消し、そんなものはないとして自ら
否定し始める。山村は改めてアリバイが有るならば言ってみろと
尋ねるが・・・
そんな中本庁から迎えの警察官がやってきた為に護送される。
山村は市川が立ち去った後の取調室に"子安神社"のお守りが
落ちていることを知り市川に手渡そうとするが俺の物ではない
と否定する。

山村はみんなが集まる前で、普通犯人は無理にでもアリバイを
デッチ上げようとするのに打ち消すというのは今までに聞いた
ことがないという。お守りもヤツのものに違い無い事を告げる。
長さんによるとそのお守りは安産のお守りだという。一体どういう
ことなのか。
山村はかつて妻が妊娠した時のことを思い出していた。
山村の妻・高子は元々心臓が弱く妊娠中に心臓発作を起こし、
母胎優先で赤ちゃんを流産していたことが有ったのである。

山村は帰宅すると、妻が隣の赤ちゃんを預かっている姿を目に
する。
深夜山さんはボスの元に電話すると、黄色いパジャマを着て
寝ていたボスは眠たい目をこすり山さんからの話を聞く。
「ケダモノになりきった男に人間らしい心が残っているものか」
と。
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一家惨殺事件が発生し、警察は被害者宅の敷地内の庭に落ちて
いた煙草の吸い殻から、容疑者を3ヶ月前の事件で逃走して
いる市川勝ではないかとして行方を追う。
所轄が担当するのではなく、本庁に捜査本部が設置された為に
一係としてはなかなか事件捜査に関与出来ない中、連行されて
来た市川の事情聴取が行われた際に、それに立ち会った山村は
市川が一度アリバイがあることを口にした後に取り消したこと
に疑問を感じて改めて捜査をしていく。マスコミも注目する中、
警視庁としては市川が犯人だということで容疑を固めていくが・・

ドラマとしては面白かったけど、肝心のドラマの中で起きた事件を
見ると、一人で一家四人を殺害したという管理人の流れの中に
イマイチ整合性を見いだせないところも有る内容だった。
盗聴しているくらいの管理人なので、犯罪の予備軍みたいな
人物だったのだろうか。
犯罪の中でも人を殺すか殺さないかの境界線は相当大きな隔たり
が有ると思うので、罪を擦り付ける為の材料を盗聴の中で
見つけ出したとしても、実際に犯罪を行うことが出来るのかと
いうことに関しては、少々心理的には無理がありそうな感じ。
無くなった4千万円を見つけ出す流れを通して犯人が管理人では
ないかとする流れを作って欲しかった気もする。

先週に続いてシンコさんがまた捜査に登場。
しかも結構重要な役割として、女性の共謀者・逃亡幇助の容疑
がかかる女性を尾行する役割。
化粧法の関係なのかシンコさんの顔が微妙に変わった印象も有った。
久美ちゃんなんて完全に垢抜けてしまってモデルさんばりの
存在感が有るので、この辺は時代を象徴しているのかも。

シンコと山さんが今回の犯人にある程度の感情移入をしていく
流れを通して、ドラマを牽引していく。

冒頭のやりとりの中で、フィルムが変に途切れているのは
何らかの放送上のトラブルなのか、それとも当時の編集さんの
ミスなのか。「太陽にほえろ」を見ていると、現在の価値観
とは違う表現が使われている為に、台詞が削除されていること
も多いし、今ではあんまり使われていないドヤ(宿)などの表現が
使われているところも有る。

ここの所、山さんが疑問に感じる流れをゴリさんが否定しよう
とする一連のパターンが出来ている感じ。

若かりし頃の石橋蓮司さんが容疑者役として登場。
島田警部が何気に容疑者の顔写真にイタズラ描きする中で
犯人憎しでお茶目な一面を発揮したのかと思わせたけど、
実際には本当にそんな容姿をしていたという辺りが面白かった。

このドラマの定番でも有る、犯人との追いかけっこに関しては
あんまり尺を取らずに逮捕したという辺りもまた島田という
警部の優秀さを示すところが有ったのかも知れないけど、
最後に山さんに対して組織のメンツの件でポロっと愚痴るところ
はちょっと情けなさを感じる。

幼少期の自分と同じ思いをさせたくないということで、市川は
自分の子ということを否定する。
実は良い人なのではないかと思わせつつ、あの押し入れの中の
落書きを見ると精神的にちょっとヤバそうな感じがするところは
何とも言えない(笑)

そういえば言葉は少なかったけど、山村家の事情がポロりと
描かれ、山さんが感情移入する理由付けの一つとして妻が
流産した時の流れが描かれた。


藤堂俊介 …… 石原裕次郎 (七曲署・一係のボス、係長)
山村精一 …… 露口茂 (山さん)
石塚誠 …… 竜雷太 (ゴリさん)
島公之 …… 小野寺昭 (殿下)
野崎太郎 …… 下川辰平 (長さん)
内田伸子 …… 関根恵子 (シンコ)
柴田純 …… 松田優作 (ジーパン)
永井久美 …… 青木英美 (七曲署の庶務係)

山村高子 …… 町田祥子 (山さんの奥さん)

市川勝 …… 石橋蓮司 (26歳、前科5犯、全国指名手配)
島田 …… 伊藤孝雄 (本庁の警部)
今寺良子 …… 服部妙子 (保育士、富士アパート住民)
高田 …… 平田守 (富士アパートの管理人)

平田守、小高まさる、清水吾郎、山田禅二



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