相棒 シーズン3

脚本/東多江子

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_03/


第10話 ゴースト〜殺意のワイン
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沢村映子の新刊"愛の果てに女神が微笑む"のサイン会。
右京はサイン会に並びサインを貰う。男性の中年のファンに
映子自身も喜ぶも、サインを杉下左京と書かれてしまう。
右京はサインを貰った余韻に浸っていると、担当編集者の肥田
育恵と映子の夫・三原健夫が会話しているのを耳にする。
HPの文章がどうにかならないか? サイン会には仕込みが必要だ
などなど・・・
右京は早速新刊を読むと、文学性、エンターテイメント性共に
問題のない上質な作品だと感じる。
そんな中、薫が沢村の夫・健夫が自宅のマンションから飛び降り
自殺したとの報告を持ってくる。
右京は新刊の内容が恋人に自殺された女性の話であり、偶然に
しては気味が悪いと感じていた。

三日後、映子の手記が特別に雑誌に掲載される。4ページに渡る
長い手記。夫が死んで3日なのにこんな長い文章を作成したのか
と違和感を感じる薫たち。
右京は有ることに気がつく。

一般的に"であう"という漢字は"出会う"と書くが、夫の遺書には
"出逢う"と書かれおり、映子は小説の中では"出合う"と記して
いる事。右京が呼んだ映子の作品の中で、最新刊の前に書かれた
"第三の女"だけ別の人物が書いたのではないかというくらい
レベルが低くなっていること。実際に映子の作品は常に10万部を
越える売り上げを果たしているのに対して、この作品だけが
2万部に満たない売り上げである事。しかもこの作品だけが
"出逢う"の漢字が使われていたのである。
ちょっとこの辺の事情を揺さぶってみようという事になり、
右京たちは自分たちが刑事という事を隠して、映子たちに逢う
事になる。

たまたまマスコミ達を上手く処理したことで一緒にお茶をする
事になる。右京は自分なりに自殺の原因を考えたとして仮説を
話し始める。結婚して始めた書いた作品"第三の女"だけ、他の
作品とは毛色が違うことを理由に、この作品は夫が書いたもの
ではないかという。売り上げが伸びず名声に傷を付けたとして
自殺に至ったのではないかという。すると単なる偶然だという
担当編集者の肥田。映子は動揺したのか、右京達に"紅茶をいた
だいて"とする誤った日本語を語る。それは第三の女でも使われて
いるミスだった事から、第三の女が彼女が書いた作品で、それ
以外はゴーストライターが書いたモノではないかと疑う。

薫はデビュー前の作品を探しだしてくる。
彼女は1995年にシリウス文芸新人賞の佳作に入選しており、
その時の作品である「青春の小径」では"出逢う"が使われていた。
これで上述した仮説が成り立ち、偽装自殺の可能性が有ること
が分かる。

夫婦関係を調べるために出版社の社長・高木勉の元を訪ねる。
2年前に結婚した二人。夫も普段からものを書く人だった事。
デビューの時から担当は肥田であること。第三の女の出版の時
だけ編集担当は夫の三原で有ったことを知る。
10年間でこの出版社が自社ビルを持つまでに至ったのは、映子
の功績が高いのだろうと想像できた。

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着眼点は漢字変換

漢字の変換の癖というものが面白く描かれた話だった。
日本の漢字には代用出来る別の漢字が結構有るので、そういう
所に性格が表れたり、書いた人を識別するような癖となって
現れるのだよな。

担当編集者・肥田と人気作家・沢村映子の関係

今回のメインはこの二人の関係性だった。
小説家の担当編集者ならば、自身も文筆家を目指していた過去
が有りそうだものね。
今回は肥田と同列に映子の夫・三原の存在もあったので、
誰が本を執筆したのかで面白い推理が展開される。

本の内容ではなく、小説も筆者のビジュアルが左右するという
時代性と共に、本当に自分が書いた小説は売り上げが不振な
点がなんとも皮肉な感じ。

ゴーストライター肥田の心情は?

肥田は映子自身の姿・スター性に憧れていたのか。それとも
自分の文章が公になるのに対して、執筆者の名前など気にせず
評価が得られることに陶酔していたのか。

ドラマではこの二つが伴っていないと成立しない話で、女性同士
の関係性が複雑で分かりづらいものが有ったのも確かだ。

ツメとしてはやや甘い内容

最終的な詰めとしては、ワインを着眼点にした訳だけど、
ワインがクーラーの中に入っていたからと言って、それが自殺
と関連が有ると結びつけるのは少々厳しい物がある。

ボタンの件にしても、右京が当日のあの現場に落ちていたと口に
する事は推論の域を出ておらず、やや説得力は無かった感じが
する。
ワインに睡眠薬が入っていたとか、ボタン自体が現場に落ちて
いたりすればもう少し分かりやすい展開にはなったのだけどね。

ドル箱である沢村映子

高木社長が映子と肥田の関係を話してしまうけれど、社長は
肥田がゴーストライターである事実を知らなかったのかな。
知っていたとするならば、それを知られないように行動すると
思うしね。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁の特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (警視庁の特命係)
奥寺美和子 …… 鈴木砂羽 (帝都新聞社会部記者)
宮部たまき …… 高樹沙耶 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦 信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢 守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田 六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策部)
内村 完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田 公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)

大木長十郎 …… 志水正義
小松真琴 …… 久保田龍吉

沢村映子 …… 筒井真理子 (小説家)
肥田育恵 …… 春木みさよ (担当編集者)
三原健夫 …… 西ノ園達大 (映子の夫)
高木勉 …… 片岡弘貢 (未明出版社長)

中村文平、内藤トモヤ、藤崎桐子、荒井眞理子、柿丸美智恵
上下宜之


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