相棒 シーズン6
(2007年度10月期・テレ朝)

脚本:櫻井武晴(1)(9)(14)(19)、戸田山雅司(2)(3)(10)(16)
西村康昭(4)、吉本昌弘(5)(15)、入江信吾(6)
岩下悠子(7)(8)(13)(18)、古沢良太(11)(12)、輿水泰弘(17)

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_06/


第19話 黙示録

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東京拘置所で死刑因の錦貴文が突然病死する。事件性がないこ
とを確認するために特命係の二人は死亡鑑定書を立ち会いの上
貰ってくることを命じられる。
右京は19年前に死刑が確定されている囚人が何故今でも執行さ
れていないのか疑問に思う。

錦貴文は25年前(1983年)に品川母子放火殺人で捕まる。
被害者は富山万里子と娘の富山聡美。犯人の錦貴文はこの家の
主・富山幸三から解雇された事を腹いせに家に押し入り、
強盗に見せかけるために部屋を物色し財布や封筒から100万円
以上の現金を盗んだという。
裁判では無罪を主張するが、警察署で事情徴収した際に自白
している事から主張は通らず、当時現場から指紋こそ検出され
なかったが掌紋と靴跡が見つかっている事から有罪、そして
死刑が確定する。
当時貴文を弁護する国選弁護人の茂手木は彼の無罪を信じ、
何度も再審請求をしたが却下。彼は私選弁護人としてその後も
ずっと無罪を訴え戦い続けたが、全て棄却されたという。

貴文が亡くなったことで再びマスコミがこの事件を取り上げる
事になる。美和子は殺された聡美の恋人・飯田正志とようやく
コンタクトを取ることが出来たといい、この日取材する予定に
なっていたが美和子の後輩のライター・粕谷圭が一般論として
冤罪になる可能性が有ること語ったために飯田の機嫌を損ねて
インタビューが出来なくなってしまう。

右京らはマスコミ対策を教えるという名目で飯田の自宅を
訪れる。部屋ではガスコンロではなく電磁調理器が使われてい
るのを目にする。未だに結婚していないという飯田。
聡美の父は昨年亡くなったといい、25年経った今でも傷が
癒えていないことを感じさせた。

そんな中渋谷東生活安全課の刑事・黒木勝が殺害される。

右京らは19年前の一審で死刑判決を言い渡した判事を調べると
かつて裁判員制度の時にお世話になった三雲判事が担当して
いた事を知り会いに行く。当時左陪席だったという三雲。
何故19年間死刑が執行されなかったのか尋ねるも、一介の
判事ではそれは分かりかねると告げられる。

黒木殺害に関して捜査本部が開かれ、鑑識の一人が殺された日
に黒木から指紋の照合を頼まれた事を告げる。殺された日、
黒木は一体誰のを調べていたのか。

小野田は右京を呼び出す。三雲から恐らく抗議が有ったのだろ
うと推察する右京。右京は小野田にこの一件の疑問点をぶつけ
ると、小野田は当時法務大臣だった橘ゆり江の事を紹介される。
ゆり江は現在では法務省を辞めてシスターに転身するという
奇抜な経歴を持っていた。彼女から19年間何故死刑を執行され
なかったのか尋ねる。すると尊敬していた教誨師の話を持ち出
し、彼が貴文に対して死を受け入れさせようとした際に、思わ
ずキリストが無罪でも刑を受けたことを語ってしまったことに
懺悔の念を抱いていた事を語る。それ以来貴文も死を受け入れ
たが、逆にゆり江もその日以来死刑執行のサインをすることを
辞めたと語る。
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まさかシーズン6の冒頭で登場した三雲判事が再度登場するとは
思わなかった。彼があの時裏で手を引いていたことだったり、
裁判員制度に対する見解の意味がこの事件の中に有ったという
点で、シーズン冒頭から見ている人にとってはドラマとして
厚みのある内容に感じたと思う。

ドラマでは警察・検察、そして法務省を巻き込んだ冤罪事件。
不自然な程に刑の執行が行われない理由は何なのか。
そして冒頭で刑事がわざわざ鑑定書で事件性がない事を証明する
ために動くという不可思議な行動は一体どんな理由があるのか。

事件としてはなかなか難しいモノがあった。
25年前の事件と、事件が発覚しそうな現代に於いても当時の関係
者が次々と殺害されるという顛末。

この事件に関わった人の殆どが人生を狂わされているという点で
殺害するだけの動機が色んな所で発生している感じもするし、
ドラマとしては25年前の事件の犯人と今回の事件の接点を探って
いく過程は、とても興味深い内容になっていたと思う。

25年間の苦しみ、後悔が上手い形で執念として現れ、一人の
殺人課刑事が生活安全課に転身していたという理由も、その一つ
として面白い形で浮かび上がってきたと思う。

こういうドラマを見るとどうしても隠蔽のために動いているので
は無いかと思わせるが、今回この事件に関わっている人はどの
人物も心に傷を背負って、上手い形でその心の重荷から解き放た
れたいと思う息苦しさが伝わってくるような内容だった。

そして事件解決の決定打に旧札に目を向ける辺りはとても上手い
部分ではないか。

ただ疑わしきは罰せずという司法制度の根幹を揺るがすような
死刑因に対する判決だったね。

結局判事は引退することになった。プロの判事さえもこれだけ
ダメージ性の有る判決の問題を今後は市民が背負っていかねば
ならない事。また右京は違法捜査だと知りつつも、それを三雲
に求める辺りは、かつて1話の中で違法な事をやられた事に対す
る皮肉なやり口で解決させるというのも悪くなかった。

それにしても法務省の役人はホント悪い奴だなぁ。
小野田も良心が有るのか無いのか良く解らないところが有る。
そんな彼の口から、杉下の正義は時に暴走するという言葉が
発せられるのだからホント面白いな。

いつもは内村の陰に隠れている中園に上手い形で役どころを与えた
ところなども面白い部分だね。

それにしても犯人役がひかる一平!凄い懐かしい人物の登場に
驚くと共に宮川一朗太とかまた色々と懐かしい人を引っ張ってくる
なぁと思った。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (警視庁・特命係)
奥寺美和子 …… 鈴木砂羽 (帝都新聞社会部記者)
宮部たまき …… 高樹沙耶 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)

大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)

錦文忠 …… 林隆三 (死刑因・貴文の父。妻は自殺)
錦貴文 …… 久松信美 (死刑因、1984年一審で死刑判決)
黒木勝 …… 成瀬正孝 (渋谷東生活安全課・古物担当)
緑川達明 …… 遠藤たつお (検事)
富山幸三 …… 野元学二 (品川母子放火殺人の生き残りの父)
富山万里子 …… 阿部朋子 (妻、背中を刺され、一酸化炭素で死)
富山聡美 …… 桜川博子 (25年前・万里子と一緒に亡くなる)
飯田正志 …… ひかる一平 (聡美の彼氏。実は犯人)
茂手木進 …… ベンガル (貴文の弁護士)
犬井芳郎 …… 宮川一朗太 (貴文の高校時代の友人。弁護助手)
粕谷圭 …… 伊藤高史 (記者。美和子の後輩)
橘ゆり江 …… かとうかず子 (聖エレナ修道院、元法務大臣)
常盤克信 …… 伏見哲夫 (法務省)
三雲法男 …… 石橋凌 (判事)

桜井聖、竹内和彦、樋浦勉、西沢仁太、長棟嘉道、上山克彦
児玉頼信、中西台次、佐藤智美

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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