相棒 シーズン7
(2008年度10月期・テレ朝)

チーフプロデューサー - 松本基弘
プロデューサー - 伊東仁、西平敦郎・土田真通
脚本:輿水泰弘(1)(2)(8)(9)(19)、徳永富彦(3)(10)(16)、岩下悠子(4)
渡辺雄介(5)、櫻井武晴(6)(7)(12)(13)(18)、ハセベバクシンオー(11)
佐伯俊道(14)、古沢良太(15)、波多野都(17)

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_07/


第15話 密愛

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右京はかつての恩師・宇佐美悦子から手紙をもらい、長野県に
有る彼女の別荘へと足を運ぶ。庭にフランス語で"悦子ブレン
ド"と書かれたハーブのビンが捨てられているのを目撃した右京
は一握り掴んで懐にしまう。
いよいよ悦子との対面。学生時代彼女は男性からの憧れであり
マドンナ先生でも有った。授業方針を巡って教授と対立し、
辞職届を出したこと。右京も聡明で冷静な女性だと彼女を表現
する。悦子は右京のことをよく覚えていた。試験のたびに右京
は採点を巡って抗議していたという。右京が唯一学生時代に
赤点を取ったのは彼女のフランス文学の授業だった。フランス
文学は知性や理論が通用しない情愛がテーマのものが多く、
右京には相性が合わないモノだと悦子は語る。

彼女は使用人・榊敏郎が亡くなった現場を見せる。
うつ伏せで亡くなっており、遺体の近くに茶色の小瓶が置かれて
いたこと。その中に猛毒の"シアルリン"が含まれておりそれを
飲んだ事が死の原因だという。書庫にしていた離れの部屋は
完全に密室状態であり、この件を担当した長野県警は自殺で
処理したという。

敏郎との出会いを語って聞かせる。
彼はホームレスの様な状態で有るとき繁みの中に倒れていたと
いう。奥さんと二人で宝石店を営んでおり、知人の保証金に
なって借金を背負い、妻は心労で一年前に亡くなり、彼は夜逃
げしたが、リンチに有ったりして命からがらここまで逃げてき
たという。別荘には男手も必要だと思い雇ったとの事。
遺骨をどうすべきかで迷い、右京には近親者を捜して欲しくて
呼び出した事を告げる。

右京は彼の免許書を片手に近親者を捜す。
そして二日後、再び別荘を訪れる。悦子が不在のために空いて
いた遺体の現場を見て回る。背広のポケットに入っている
万年筆に目を留める。そしてベッドの枕の下から悦子が翻訳した
フランス文学の小説が出てくる。
戻ってきた悦子に右京は語りかける。敏郎は本当に自殺なのか?
彼の経営していた宝石店の前の布団屋の女性の証言では、
自殺するような男性ではなく、彼はペテン師だという。
湯飲みに毒が混入されていることから、人見知りの犯行で彼の
目を盗んで毒を混入したのではないかという。しかし悦子は
毒の入った小瓶には敏郎の指紋しか見つからなかったこと。
部屋は中側からしか鍵がかからない構造の密室状態であり、
それは考えられないという。必ず犯人は痕跡を残しており、
これは挑戦状を受け取ったと思っているとして悦子の方を覗く。
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今回は右京の弱点でもある恋愛絡みの事件を担当する。
大学時代には赤点だったフランス文学に、再度挑戦するという
話だった。

殺人事件としては物証が少なく、かなりの部分を推論によって
構成された話と言うことで、証拠絡みで事件の真相に近づくと
いう意味ではかなりの心細い展開だった。
ただ要所要所に配置されるアイテムや事実が効果的に使われ、
上手く説得力を引き出した話でもある。

人の行動の意図を読み解くなどとても難解な作業だと思うが、
それも右京の苦手な男女の恋路を読み取っていくという意味では
とても興味深いものだ。

正直悦子先生の過去に於ける恋愛事情を推察していく部分には
あまりに情報量が少ない。
ただフランス文学に残されているメッセージ性を上手く読み解き
その大部分が恋愛表現の一節にふりがなふられているという所か
ら、二人の間に恋愛感情が生まれていた事を推察する辺りは
良くできていた。

ただドラマとしての問題点は、密室トリックを推察した辺りには
まさに推察の息を超えておらず、劇薬にもかかわらずに飲んだ
後に随分行動を起こしている辺りはちょっと解釈の難しい点だ。

結局一番大事な悦子の気持ちを読み違えていたという点で、
右京にもまだまだ不足する点が有るというところは面白かったと
思う。
敏郎が作ったハーブに込められていた思いを悦子もまた読み違え
ていたという点で、やっぱり他人の気持ちなど分かる訳がなく、
男女に於ける永遠の課題である点などなかなか奥深いモノが有っ
た。

結構好みの分かれる内容かも知れないね。

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (警視庁・特命係)
奥寺美和子 …… 鈴木砂羽 (帝都新聞社会部記者)
宮部たまき …… 益戸育江 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)

大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)

宇佐美悦子 …… 岸惠子
榊敏郎 …… 国広富之

河野景子、大濱琥太郎、池田貴美子、片桐千里、奈良坂篤
長谷川勝彦、中山久美子、中島まりな

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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