監査法人

作者/矢島正雄
脚本/矢島正雄、小林雄次

http://www.nhk.or.jp/dodra/kansahoujin/


第6話 会社、救えますか?
不正発覚激動の結末


プレシャスドーナツの井上が襲われ病院に運ばれる。
五十嵐・青山刑事によると、犯人はドーナツ会社の加盟者の
一人であることが分かる。経理を担当する山岸の元を訪れるが
彼は全く知らないとする。その間にも会社には、上場したにも
関わらず出店もさせず返金もしないという苦情が相次いでいた。
資金は一体どこに消えたのか。加盟者の不安を取り除くのが
今のエスペランサに出来ることだとして若杉は動き出そうと
するが、それを止めるのは小野寺だった。今動くとエスペランサ
も共倒れの危険性が有るという。その言葉に若杉は失望する。
井上の元を尋ねる若杉。彼も資金の流れについては知らない
という。そんな中井上の秘書が山岸の企みを証明する不明金
の流れを証明する裏帳簿を持ってくる。M&Bコーポレーション
に全ての資金が流れていること。その企業の社長は山岸だと
いう。更に彼について調べていくと、彼は幾つもの企業で
コンサルティングを行い、闇社会に精通している焦臭い噂
まで出てくる。その事を含めて若杉は山岸の元を訪れるが、
自分だって上場を見逃した共犯者だとして、深く首を突っ込ま
ない方が良いと警告を受ける。
若杉は再び小野寺の元を訪れるが、若杉の知らないところで
山岸とエスペランサの間で経営計画が話し合われ、全ての責任
は井上に押しつけられることで協議されていた。翌日にはその
事がマスコミにも流れ、井上は会社から全ての責任を背負わさ
れた上で追い出されることになる。
それを知った井上は、山岸を襲撃しようと病院を抜け出す。
寸前で若杉が止める。山岸に開業資金の事を相談したことが
発端で、彼が何処からともなくその金を借りてきて、その後も
頼みもしないのに金を注ぎ込んでいたという。井上は改めて
山岸を襲おうとするが、それを制したのは警察だった。

厳格監査が全てではない事を示した最終回だった。

仕事柄厳格を求める若杉は私生活でもその厳格さを求める余り
妻を追い込んでしまったことが描かれ、その中に人間の信頼
関係が鵜呑みにされていた事が明らかになる。

ドラマでは、厳格の善し悪しが描かれたわけだが、
なれあい側の代表である篠原にはペナルティが与えられたのに、
厳格側の代表である小野寺には何の音沙汰もないというのは
ちょっと都合が良すぎるか。

結局今の日本の社会では厳密な意味での厳格を貫き通す人が居ない
事が描かれ、自らの利益の前には、そんな信念さえもねじ曲げて
しまうような人たちが、厳格をうたって調査をしているという
なんとも寂しいオチ。

人間の信念が如何にいい加減なものなのか。
他人に厳しく自分に甘い人間の本性を描ききった話しであり、
そんな人間が厳格をうたう事など笑止な限りである。

人が人を裁くことの難しさを描く法廷モノのドラマのように、
人は機械ではなく血の通った人間であること。
人と人とが接する限り、信頼関係の上で社会が成り立つことの
現実と矛盾点をドラマでは指摘しているのだと思う。

とても面白いドラマでNHKらしさの残る内容だった。

若杉健司 - 塚本高史 (入社4年目。公認会計士)
山中茜 - 松下奈緒 (入社6年目。)
小野寺直人 - 豊原功補 (健司の上司。)
吉野晴喜 - 勝村政信 (小野寺と同期。)
宮島局長 - 利重剛 (財政監督庁検査局長。)
マスター(桑原)- 清水章吾 (バーのマスター)
井上涼 - 阿部サダヲ (企業家を目指す夢想家。)
篠原勇蔵 - 橋爪功 (ジャパン監査法人理事長。)
国友豊 - 竜雷太 (大手都市銀行・東都銀行頭取。)
中村英夫 - 綿引勝彦 (大手食品メーカー飛鳥屋社長。)
五味栄太郎 - 長門裕之 (北陸建設社長。)

guest
桑原美子 - 立石涼子
若杉知香 - 広田思帆 / 奥山志紀

武田勝次 - 大滝秀治 (尾張部品会長)
田上敬司 - 津川雅彦 (あすなろ)
柴田恵子 - 多岐川裕美 (義母)
山岸弘文 - 山本龍二 (ドーナツの経理担当)
若杉朋美 - 占部房子 (妻)
律山悟 - うじきつよし (尾張部品社員)
近藤滋之 - 若松武史 (エスペランサ)
-------- - 石橋奈美 (井上の秘書)
-------- - 樋浦勉 (尾張部品社長)
-------- - 中丸新将 (尾張部品副社長)

真夏竜、野川光雄、伊藤幸純、森富士夫、渡辺火山、山本哲也
児玉頼信、杉浦文紀、清水やすひろ

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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