七瀬ふたたび

原作/筒井康隆
脚本/伴一彦、真柴あずさ
演出/笠浦友愛(1・2・3回)・吉川邦夫(5・7・10回)
松浦善之助(4・6・8回)・陸田元一(9回)

http://www.nhk.or.jp/drama8/nanase/


第10話 祈り


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七瀬は藤子の祖母が生活していたという実家に身を隠す。
朗やヘンリーも同行し彼女を守ることになる。恒介は
パクス・シエンティア(以後P・S)に居ると藤子はみんなに告げ
る。目的は同じで七瀬を守るため。
恒介はP・Sに戻り、藤子たちを取り逃がしたことを佐倉に報告
する。恒介の心の中を百合子が読んでいたがガードしていた為
に読まれることを避けることが出来た。

その頃藤子達は朗が包丁で怪我をしたのを機会に人間の治癒力
について考察する。昔お腹が痛いときに母親にさすってもらっ
た時の事を例に挙げ、信頼できる相手に触れられることで精神
的に満たされ治癒力が高まるという説があることを告げる。
相手に治りたいという思いに働きかけて治すという事。

瑠璃の元に店長が訪れる。瑠璃は昨日七瀬との間にあったこと
を話し涙する。心を読まれたことで恐怖を感じたという瑠璃に
対して、店長は七瀬も知りたくもない相手の心が分かってしま
う事で恐怖を感じているかも知れないと彼女を擁護する。
七瀬がずっと瑠璃の為に祈っていたことを聞かされ、そういえ
ば生死を彷徨っている時に七瀬の声が聞こえたと瑠璃は告げる。

その頃、警察では七瀬とヘンリーに対して殺人未遂により
指名手配が言い渡されていた。しかしそれは警察内部だけの事
で、公にされないものだと知り、高村はP・Sの手が警察にも
及んでいることを実感する。藤子に電話でその事を告げる。
一方藤子は同じ研究員の神崎からの電話で、藤子が大学側から
研究費の不正流用により処分を受けた事を知る。大学にも
P・Sの魔の手が届いていることを悟る。

そんな中、藤子はジャーナリストの大野幹夫と接触する。
大野はP・Sの告発に喜んで協力してくれるという。過去にも
P・Sの記事には圧力が掛かったことも有り慎重に物事を運ばね
ばならないという。フリージャーナリストの為の国際的ネット
ワークに情報を流すと共にインターネットで記事を流せば、
複製されて容易にはもみ消せないだろうとのこと。取りあえず
この記事を流すためには情報のインパクト性が必要だとして
七瀬本人からのインタビューを載せたいと告げられる。

一方七瀬は一人・P・Sの佐倉の元を訪れるのだった。
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果たしてパクス・シエンティアの悪事を暴露し、自分たちの
無実を証明することが出来るのか。

残り一話なのに課題多きドラマなのでどう処理するのか気に
なっていたのだが、パクス・シエンティアの事については
バッサリと解決を放棄してしまった感じの展開だった。

ドラマとしては何故能力者がここに来て復活し始めたのか、
そして何故本来人間が持つ能力で有るはずなのに消えてしまう
のかについて言及する内容だった。
端的に言えば人間が必要とする時にはその能力が現れ、必要と
されなくなるときその能力を失うといった感じなのだろうか。

ドラマの脚本自体は良くできていたと思う。
ただこのドラマで上手く描ききれなかったのは、能力者を眺め
る普通の人間の視線だと思う。

能力者とは一体どんな存在なのか。
ドラマでは、未知のものイコール恐い存在という単純な図式に
集約されており、その辺の流れに全くの説得力がない。
能力というものが人間を構成する全ての要素なのかどうかで
本来複雑な葛藤があり、能力の有無だけで人を恐れるものに
単純に結びつくべきものではないことは明らかで、人格という
ものを無視して、みんなが恐れおののく所ばかりが抽出される。
瑠璃にしても警察にしても、恐いというセリフが何処か突拍子
もないセリフにしか感じない所が、このドラマに於ける難点。

最後に多くの能力者を失わせるという悲しい展開ではあるが、
バツが悪いのは、まだまだ能力者はこの世の中に生きている
という現実だ。全滅させてしまうオチというのも、ドラマと
しては有りなのかなと思ったが、P・Sネタが完全に無視された
以上、どの程度の能力を持つ人間が生きているのか、全くの
不明という事でややきまりの悪い終わり方だった。

火田七瀬 ……… 蓮佛美沙子 (19) テレパス
岩淵恒介 ……… 塩谷瞬 (23) 予知能力者
高村健一 ……… 市川亀治郎 (38)
漁藤子 ……… 水野美紀 (35)
火田精一郎 ……… 小日向文世
増田店長 ……… 北村総一郎 (66)
真弓瑠璃 ……… 柳原可奈子 (19)

ヘンリー ……… 郭智博 (22)
広瀬朗 ……… 宮坂健太 (10) テレパス
江藤亮太 ……… 載寧龍二 (26)

西尾正人 ……… 今井朋彦
バーテン・田口 ……… 平林弘太朗
神崎助手 ……… 阿部翔平
火田七瀬・少女期役 ……… 高瀬岬

佐倉尚吾 ……… 光石研
五味百合子 ……… 桜田聖子
警察官 ……… 徳井優

浜田道彦、安田ひろみ、伊藤正之、鹿渡道之

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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