相棒 シーズン8
(2009年度10月期・テレ朝)

チーフプロデューサー - 松本基弘
プロデューサー - 伊東仁、西平敦郎・土田真通
脚本:輿水泰弘(1)、太田愛(2)(3)(11)(14)、戸田山雅司(4)(10)(15)
徳永富彦(5)(8)(17)、福田健一(6)、櫻井武晴(7)(12)、(19)
玉田義正(16)ハセベバクシンオー(9)
ブラジリィー・アン・山田(13)、古沢良太(18)

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第19話 神の憂鬱

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神戸はある日オービスのカメラフラッシュに気がつき車を止める。
何故か二度のフラッシュが有ったような気がした。速度違反は
して居ないハズなのに何故そんな点滅が有ったのか

帝都物産で人が転落して亡くなる。
被害者は電子通信部設計課係長、早乙女幸次。すぐに捜査が入る
と8階の窓が開いていたことからそこから落ちたのではないかと
の事。帝都物産には産業スパイ事件が有って以来カメラがあち
こちに設置してあり、8階の窓にもカメラが設置してあった。

ビルの前に設置してある監視カメラ映像を見ると、21時35分に
落下しているのを見つける。その時車が急発進しているのを
カメラ映像の中から見つけ鑑識に回すと、車の所有者は首都
警備保障に勤める岩井裕也(45歳)のものであると分かる。
首都警備保障の勤務者リストを見ると警視庁・警備局長から
天下りして常勤顧問をしている宇田川次郎の名前があり、
内村・中園は予め捜査に行くことを知らせる。捜査に行く伊丹
たちにはくれぐれも警察OBの機嫌を損ねるなと告げる。
しかし岩井に会いに行くが、早乙女のことは知らないという。
しかも捜査に言った一課の刑事の前に、宇田川次郎が監視役と
して圧力を掛けてくる。

その頃、警視庁警備局警備企画課の伊達香は、岩井に電話し、
防犯カメラにテスト導入した顔認証システムにより異常が発生
した原因を聞く。上司の間瀬登からは今月中にシステムを完成
させろと圧力を掛けられており、法案が通るのにシステムが
完成していない様では責任問題になる事を告げる。

その頃神戸は、上司・渡辺真澄とタクシーの中で逢っていた。
右京は神戸の行動の目的に気づいており君の仕事がしづらく
なっているだろうとの事。神戸は思いきって自分が書いている
レポートに意味があるのかと尋ねる。特命係の可能性を調べて
居るようだが、自分が特命係に配属された理由は別にあるので
は無いかと疑う。

神戸は大河内と面会した後、オープンカフェで伊達と逢う。
本来何があっても接触するなと言われているという。伊達は
神戸がかつて勤務した部下であり、神戸が特命に出向した後
彼の仕事を引き継いだのである。顔認証システムに関する事を
話しに来たが必要以上に口にしようとはしない。それでも神戸は
事情を察して、このシステムは官僚の天下り先を増やすための
プロジェクトでは無いことを告げ、もしも未完成の状態ならば
今月中に無理に完成させるべき物ではないことを告げる。
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顔認証プログラムにより24時間機械的に特定の人物を監視する
夢の防犯システムFRSを巡り、利権を求めるものたちの間で
醜い争いごとが起こる。そしてついには2人の犠牲者を出して
しまう。

ドラマとしてのメインは上述する防犯システムを巡るものだが、
やはりシーズン8全体のテーマである、神戸が特命係に送り込ま
れた真の理由は何なのかという事に尽きるのかもしれない。
ドラマとして上手いのは、事件を解決していく過程で、そのテ
ーマ性も同時に浮かび上がらせるということだろうか。

一つ一つは単純な話ながらも、産業スパイの流れと、システム
開発に於ける無理強いから発生する悲劇が交錯していく。
また神戸周りの話しに於いては兼ねてからその存在が噂される
庁内エスの存在を絡め、色んな思惑を絡ませることで展開は
複雑な感じになった。

日本の未来、日本の防犯を画期的に変化させるシステム。
そのシステムは個人のプライベートを完全に侵害するもので、
それに取り憑かれる事への恐怖と警鐘も描いている。
ただ現実的には、このドラマで謳っていた様な全能感というのは
イマイチテレビで見ていただけでは実感する物は無かったかな。

国益を真っ先に考えるとする小野田の小狡さと、今回はそれに
付随して国益を損なう現実を右京が語ることで小野田に一撃を
食らわせる試みがあったし、日頃政治的圧力によって不可解な
事ばかり告げる内村・中園の命令に対して、伊丹の熱血漢が
キラリと光る所など、とても面白いものだった。

伊達香が上司・間瀬登の言い付けを無視して目の前の事実を追及
していこうとする事も含めて、今回は組織に於ける上下の関係
を随分意識した内容で、その締め付けを信念の元でふりほどいて
行く辺りは、右京イズムが随分浸透して居るんだなと思わせる
物があった。

内村・中園らが天下りの事を堂々と語るところとか、天下りの
警察OBが捜査を邪魔してデカイ顔をしているところとか、
今のご時世らしさが有るが、ふてぶてしさもここまで来ると
大した物だと感じる物があるな。

右京が着眼点を持つ葬式での万年筆の件は分かりやすい動きは
していたけど、何をしているのか全くの意味不明だったな。

また今回特命係に対する上層部の評価の具合が見てとれたところ
も興味深かった。組織としての価値と個人としての評価の違い
が面白い様に描かれているし、これだけ活躍している右京の
存在を何時までも見て見ぬ振りをしている事は出来無いものね。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
神戸尊 …… 及川光博 (警部補・特命係)
宮部たまき …… 益戸育江 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)

伊達香 …… 水野美紀 (警察庁・警備企画課)
間瀬登 …… 寺泉憲 (警備局・警備企画課・課長)
宇田川次郎 …… 清水章吾 (首都警備保障・常勤顧問、元警備局長)
早乙女幸次 …… 木川淳一 (帝都物産・電子通信部設計課係長)
岩井裕也 …… 永野典勝 (首都警備保障・技術開発部課長)
岩井はるか …… 大田沙也加 (妻)
渡辺真澄 …… 吉満涼太 (警察庁長官・官房首席監察官)
林正高 …… 井上康 (産業スパイ)

山崎進哉、影山英俊、浦崎宏、福田信昭、なかみつせいじ
木之内頼仁、猪狩賢二、朱源実、峯本千尋


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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