不毛地帯

原作……山崎豊子『不毛地帯』(新潮社刊)
脚本……橋部敦子
演出……澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英
プロデュース……長部聡介 / 清水一幸

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第1話 30年の時を超えあの伝説の名作が完全ドラマ化!!
戦争・家族・運命の恋…激動の物語

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昭和26年10月、零下41度のシベリア・ラゾの流刑地に壹岐正は
居た。参謀として作戦行動の立案に当たっていたが終戦間際に
日ソ中立条約を犯して侵攻してきたソ連軍によって満州で拘束。
ソ連の軍事裁判に於いて強制労働25年の刑に処せられたのであ
る。
ここでは列からはみ出て逃げ出そうとするものを容赦なく撃ち
殺された。正の事を支えていたのはたった一つの信念だけで
有り使命を果たすためのもの。日本の地を踏むその日まで倒れ
る訳にはいかなかった。

昭和32年12月。日本に帰還して2年の時が過ぎていた。生活は
妻・佳子が支えており、正は傷と栄養失調を癒しつつ、一緒に
帰還した部下の就職活動を支援していた。その間何度も防衛庁
から声が掛かるも断っていた。民間の近畿商事の社長である
大門一三からも何度も手紙をもらっている。
そんな彼の元に川又がやってくる。士官学校からの仲の彼。
陸軍大学を首席で卒業し最年少で大本営作戦参謀になった正の
事を防衛庁では必要としている事を告げる。国を守るためにも
一緒に働いて欲しいと言われるが、自分の作戦のせいで多数の
犠牲を出した彼にとって国防に関わる資格がないと感じていた。
娘の直子も戦争に関わる仕事にだけは就かないで欲しいと告げ、
シベリアに拘留されていた11年の間、母・佳子も相当苦労した
事を告げる。弟・誠に至っては、父親は立派な軍人だという
誇りを持っていたが、栄養不足によりやせ細った体で帰国した
父親に懐かずにいた。

昭和20年8月15日、天皇は大東亜戦争の無条件降伏を宣言する。
参謀総長の矢田は、正に満州の関東軍に降伏するよう説得の
為に新京に飛ぶよう命令を受ける。川又は満州に飛び立とうと
する正に、戦争は終わったが俺達はまだ国に対して責任が有る
事を告げる。
いざ満州では数日前に大本営から受けた対ソ連の命令を遂行
しようとしていた時だったが、突然の正の訪問に納得がいかな
い。軍人の中には降伏し生きて帰国するのは恥だとして自決
するのも後を絶たない。正は大隊長の渡瀬と電話で会話中、
彼は自決してしまう。天皇の命令だとして仕方なく従う人たち
も多かった。正はそんな現状にショックを受け自らも拳銃で
自殺しようとするが、そこに谷川正治が入ってくると正に対し
てお前の任務は何なのだと問いかけ、自害するのを阻止する。
見届けるのが責任であり、二度と過ちを犯さぬ為に歴史の証人
となる必要性を説く。生きて帰れと告げられる。

帰国しようとしていたときにソ連の戦闘機に撃たれて負傷した
兵士が飛び込んでくる。正は全てを見届け最後の一人が帰国
するまでこの地を離れない事にする。軍律違反だと言われよう
とここに残ると告げる。

彼はハバロフスクに送られる。ソ連は天皇に責任の全てが有る
事を軍事裁判で証言を得たいと考えていた。正らは証言を求め
られるがあくまで大本営は参謀総長の指揮下で動いていると
する。正は何処とも行き先の分からない列車に乗せられた。
そこで民間人の本田という人と出会う。彼は諜報活動を疑わ
れて連想されたという。親・家族を失ったのは全て軍人の責任
だとして正の事を激しく叱責する。

タイセット捕虜収容所へと運ばれる。そこでは重労働により
健康が悪化していった。力尽きて倒れると車に乗せられる。
正は死を覚悟する。しかし実際には暖かい部屋で暖かい食事
が振る舞われる。そこには二人の将官である竹村参謀副長と
秋津対立鉄道司令官が居た。最初は鈴木参謀長も居たが健康悪
化により病院に運ばれたという。秋津によると恐らくソ連側
は都合の良い要求をするために手厚くもてなされているのだ
ろうという。事実極東軍事裁判に於いてソ連側の証人として
証言することを求められる。アメリカは戦争責任を天皇にする
事を回避しようとしているが、ソ連は全く逆の立場だったので
有る。一ヶ月間拒み続けた三人。しかし出廷しなければ鈴木を
つれていくと言われて仕方なく条件付きで証言台に立つと告げ
る。
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ドラマは戦後の復興期の日本の様子を描くようだ。

初回ということで主人公の中に如何に戦争の責任を感じている
のか。その責任の取り方をどう持って行くのかで苦悩する様子
が描かれた。
シベリア抑留者の過酷さは群を抜いている訳で、それに耐えて
きた者達のスピリッツさというものも加わり、主人公像として
は鋼のような強さと同時に戦争に関しては繊細な一面を持つと
いう複雑なモノを課している。

ドラマとしては戦争と過酷な状況下ばかりが描かれている事で
日本の現状というのがあまり見えてこないのが残念なところ。
商社を通してそれを実感させようにも、繊維部に於いては戦争
時代の跡形もないような現実が待ち受けており、主人公の中に
居場所のない状況が描かれただけ。
主人公は勤勉な人で11年のギャップを埋めるために努力してい
るが、その時同時に視聴者にも有る程度の日本経済の現状を
描くべきだったかも知れない。

ドラマでは戦争が終わったばかりという印象があるのに、
早くも国防の話で火がついている事で違和感を感じる。アメリ
カがそんなにも早く日本の政府に軍事力や戦闘機を持たせる
ことなど無いだろうし。

しかしまぁ皮肉にもTBSのドラマ「官僚たちの夏」のお陰で
戦後経済復興に関してはあのドラマが上手く補足的な内容になっ
ているな。

日本のドラマにしては珍しく2クールのドラマなので、まだまだ
結論を見出す事は難しく、今あることが全てではないという事で、
どう転んでいくのか楽しみである。

壹岐正  … 唐沢寿明 (参謀)
壹岐佳子 … 和久井映見 (妻、市役所で働く)
壹岐直子 … 多部未華子 (娘)
壹岐誠  … 高橋平 (息子)

川又伊佐雄… 柳葉敏郎 (防衛庁・正の同期)
貝塚道生 … 段田安則 (防衛庁・官房長)
芦田国雄 … 古田新太 (防衛庁)

久松清蔵 … 伊東四朗 (政財界)
田原秀雄 … 阿部サダヲ (毎朝新聞)
浜中紅子 … 天海祐希 (クラブ『ル・ボア』)
鮫島辰三 … 遠藤憲一 (東京商事)

谷川正治 … 橋爪功 (満州関東軍の幕僚 & 組織「朔風会」)
竹村勝  … 中丸新将 (参謀副長)

秋津紀武 … 中村敦夫 (中将、大陸鉄道司令官)
秋津清輝 … 佐々木蔵之介 (兄、戦争後僧侶に)
秋津千里 … 小雪 (娘、陶芸家)

大門一三 … 原田芳雄 (近畿商事社長)
里井達也 … 岸部一徳 (近畿商事・東京支社)
兵頭信一良… 竹野内豊 (近畿商事・東京支社)
松本晴彦 … 斉木しげる
小出宏 …  松重豊 (近畿商事東京支社航空機部)
海部要 …  梶原善 (近畿商事・NY支社)
塙四郎 …  袴田吉彦 (近畿商事・LA支社、航空機部)

ナレーション …… 二又一成

矢田 …… 小林勝也 (参謀総長)
本田 …… 柳家花緑 (満州電電公室)
堀敏夫 …… 新井浩丈 (拘留される兵士)
鈴木 …… 勝部演之 (参謀長)

岐部公好、白石タダシ、出口昇平、上世博友、島津健太郎
長谷川公彦、池田道枝、藤澤信泰、針原滋、堀越富三郎
加藤竜治、枝川吉範、加山到、日上浩二、外能人、上谷健一
森下サトシ、辻賢二、平井恵助、辰巳智久、三田村勝典
吉家章人、青木一、畠山紬、山岸治雄、金子太郎、大野慶太
當島未来

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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