不毛地帯

原作……山崎豊子『不毛地帯』(新潮社刊)
脚本……橋部敦子
演出……澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英
プロデュース……長部聡介 / 清水一幸

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第5話 戦争と三人の女…

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二次防の勝利と引き替えに川又を亡くした。
壹岐正は大門社長に退社させて欲しい事を告げるが、兵士が
無くなったときにも退職届など書いたのか?と尋ねられ、自分
を責めるのは分かるが、これは企業の戦いである事。国の発展
が使命と言っていた壹岐正にとって川又の為にも続けるのも
また使命ではないかと諭される。

昭和42年4月。グラント戦から7年が経過する。

昭和34年12月。退社を申し入れた正は説得されて、鉄鋼部の
部長のポストへ。大手問屋を傘下に入れる戦略を展開し、
繊維部門から非繊維部門である鉄鋼部門へとシフトチャンジ
させる様提言していく。
更に経営戦略を立案し実行させるための直属の部門が必要だと
訴えると大門は、正の好きにすれば良いと全権を与えてくれる。
ロンドン支社の兵頭、N.Y支社の海部、香港支社の不破を呼び
寄せ、業務本部に編入させる。
すぐに会社の100名の繊維部門の人間を非繊維部門へと異動させ
る。

発足から3年、繊維の正岡と総務の一丸は正の戦略を快く思って
いなかった。更にここに来て正は、非繊維部門へ200名を異動
させようとしていた。社長からは7300名居る従業員の和を考え
ないと反発を喰らうことになるとして、改革に難色を示す。
その頃社内では正の急速な昇進と改革への実行力に反対する
強い嫉妬と憎悪が起こっていた。

そんな中、スエズ運河の工事の入札が突然中止されるという
事態が起きる。第三次中東戦争が疑われる様相だった。
中東側の戦力が圧倒されている状況では戦争は起こらないとさ
れているが、イスラエル側の情報も精査しないことには分から
ないとして正は、情報収集のために奔走することになる。
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会社を辞める決意をした壹岐正だが、結局大門社長の説得で
留まることになる。
得意の戦略術を駆使して、会社を見事軌道に乗せていくが、
急激な出世故に敵は外だけでなく会社内にも出来はじめるとい
った展開だった。

壹岐正という人物を活かすためには、軍事的な臭いのする職場
或いは状況でないと説得力が生まれてこない。
今回は中東という地で起こる軍事的緊張を背景にして、貿易に
必要な輸送経路・輸送方法の確保合戦に奔走する。

情報戦というのも壹岐正にとっては得意な物なのかも知れないが、
分析力が求められる展開にはまだまだなっていないような気が
する。

イスラエルの軍隊が強いのか、それとも中東側の兵力が強いのか。
壹岐正は軍事力で劣るとされるイスラエルが勝つことを予期して
おり、この辺の分析力で東京商事との違いを見せて欲しいところ
だ。

中東の緊張が報じられる13時間も前に壹岐正は動いていた。
安蒜公一の情報が正しいのかどうか、その辺の選り分けも
壹岐正の手腕の光るところなのかも知れない。

また怪しい紅子の夫・黄乾臣などというキャラクターが登場。
都合良く差し込まれたキャラクターの様にも感じるね。

展開としてはかつては東京商事が常に主導していた情報戦に於
いて、随分と近畿商事の躍進が目立つ。
紅子に取り入るのも元々は近畿商事の息の掛かった人物であるしね。

それよりも今回は内部の軋轢なんかを描きたかったのだろう。

小出宏の存在も気になるし、娘が鮫島の息子と恋仲にあるという
展開も期待させる物がある。
秋津千里周りの話ではどんな物語の膨らませ方をするのか。
反抗期だった息子の壹岐誠なんかは一切情報が描かれなかった。

壹岐正の存在が、シベリア抑留の会の期待を背負っている。
律儀に会報誌の手伝いをしている辺り、まだまだ彼にはそうした
軍人魂が残っているのかも知れないね。

それにしても今回7年間も時計の針を進めたのは驚きだったな。

壹岐正  … 唐沢寿明 (参謀)
壹岐佳子 … 和久井映見 (妻、市役所で働く)
壹岐直子 … 多部未華子 (娘)
壹岐誠  … 高橋平 (息子)

川又伊佐雄… 柳葉敏郎 (防衛庁・正の同期)
貝塚道生 … 段田安則 (防衛庁・官房長)
芦田国雄 … 古田新太 (防衛庁)

久松清蔵 … 伊東四朗 (政財界)
田原秀雄 … 阿部サダヲ (毎朝新聞)
浜中紅子 … 天海祐希 (クラブ『ル・ボア』)
鮫島辰三 … 遠藤憲一 (東京商事)

谷川正治 … 橋爪功 (満州関東軍の幕僚 & 組織「朔風会」)
竹村勝  … 中丸新将 (参謀副長)

秋津紀武 … 中村敦夫 (中将、大陸鉄道司令官)
秋津清輝 … 佐々木蔵之介 (兄、戦争後僧侶に)
秋津千里 … 小雪 (娘、陶芸家)

大門一三 … 原田芳雄 (近畿商事社長)
里井達也 … 岸部一徳 (近畿商事・東京支社)
兵頭信一良… 竹野内豊 (近畿商事・東京支社)
松本晴彦 … 斉木しげる (近畿商事・東京支社)
小出宏 …  松重豊 (近畿商事東京支社航空機部)
海部要 …  梶原善 (近畿商事・NY支社)
塙四郎 …  袴田吉彦 (近畿商事・LA支社、航空機部)(1話)

ナレーション …… 二又一成

叶 …… 品川徹 (陶芸家)
大川一郎 …… 佐々木敏 (政治家)(2話)
鮫島倫敦 …… 石田卓也 (息子)
丹阿弥泰夫 …… 加藤虎ノ介 (千里の見合い相手)

正岡 …… 森下哲夫 (近畿商事・繊維部)
一丸 …… 山田明郷 (近畿商事・総務部)
安蒜公一 …… 団時朗 (日東貿易)
黄乾臣 …… 石橋蓮司 (インドネシア・四大財閥)

岸博之、信太昌之、池田道枝、外川貴博、マイケル・メルセデス
グレゴリー・ベカー、川渕良和、川崎賢一、高野晃一、前川正行
ゲァリー・ゴールドステイン、山崎哲史、大谷英子、丸山裕征
岡安泰樹、吉家章人、加治木均、竹井亮介、青木一、上ノ茗真二
横塚真之介、堤匡孝、上田勝臣、伊藤晃一、塚越孝(アナ)
土屋史子

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