不毛地帯

原作……山崎豊子『不毛地帯』(新潮社刊)
脚本……橋部敦子
演出……澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英
プロデュース……長部聡介 / 清水一幸

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第9話 哀しい女

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千代田自動車の戦略を巡り、里井と対立を深めていた頃、
壹岐正は目の前で妻の佳子が交通事故に合い亡くなってしまう。
千代田自動車の社運を賭けた115タイガーは売れずに、富国自
動車も千代田との合併協議を白紙に戻してきた。これで千代田
の自主独立も合併も立ちゆかなくなってしまう。社内では千代
田との取引から手を引くべきだと話が出てくる。

壹岐正は千代田の小牧に逢うと、小出からデータは買い取った
が、他にも情報を漏らしていたのだろうという。

壹岐正はその二年後の昭和44年12月、大門社長からのかねて
からの薦めで有ったニューヨーク(以降NY)支社へと飛ぶことに
なる。しかしNYに行く際、壹岐正は大門にやりたい仕事が有る
事を告げ、フォーク自動車と千代田の提携話を進めたいという。
フォークの販売網と近畿商事の販売網を使えば、千代田に勝機
は有るという。大門は里井とは秘密裏に動くことを約束する。

壹岐正はアメリカに行くことを娘の直子に告げる。家を一人
にしてしまう事を詫びると、彼女は結婚したい事を告げる。
相手は鮫島の息子・倫敦。向こうの親も絶対に許さないとして
いるが、どんなに反対されても互いの気持ちは変わらないとい
う。母親も一緒になりたい人と結婚するのが幸せだと言って
くれたとして、正を説得。

2ヶ月後、海部と不破は、フォードとの提携を秘密裏に動き出す
ことに。兵頭は石油部長に、そして正の抜けた業務部本部長に
は里井の配下にいる角田保が就任する。

明日は直子の結婚式。父親らしい事をしてあげられなかったと
正は後悔する。おんぶさせてくれと正は直子に告げる。そうい
えば父親からおんぶしてもらったことがなかったという彼女は
始めて父親の背中を感じるのだった。

壹岐正がN.Yに渡り一年半が過ぎる。ベトナム戦争参戦でアメリ
カ経済は疲弊していたが、近畿商事NYは前年度を上回る利益を
得ていた。L.A支店にいた塙四郎や新たに八束功が壹岐正の元で
働くようになる。しかし未だにフォークとは面会すらさせて
もらえない状態だった。

昭和45年2月。正の元に直子から手紙が届く。
息子・太が10ヶ月となり、家族で撮った写真が添えられていた。
塙はデトロイトに有るフォーク社に挨拶に行くが、相変わらず
門前払いされる。それを受けて大門社長も諦めた方が良いので
は無いかという。千代田とフォークでは明かな規模の違いが
有りすぎると。
そうしている間にもフォークは韓国の光星物産の会長・イ・
ソングォン(李錫源)と業務提携を結んでいた。正はその調印式
のニュースをテレビで見ていたが、李錫源は陸軍士官学校の
同期だった。

兵頭がNYにやってくる。正にそろそろ東京に戻って欲しい事を
告げる。現在石油は中東に依存しているが、不安定供給であり
安定させたいと考えていた。30年前日本は東南アジアに燃料を
依存していたためにそれを封鎖された事で戦争に突入した事を
口にする。同じ過ちは犯したくないというが・・・
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千代田自動車を再建させるために、舞台を日本からアメリカへ
と変えて再起を図るという展開だった。

国内シェアの高い大きな会社ほど外資の受け入れを拒む傾向に
有ることを利用して、上手く説得力を持たせるような内容だ
った。

なんといっても今回のドラマのキーポイントは、これまでにも
何度か描かれたように壹岐正の陸軍士官学校時代の人脈を利用
したという点だ。
これまで軍人時代のツテは頼りたくないとしていた所ではあるが
それを利用する事に何の罪悪感も感じなかった自分に、自ら
"身も心も汚れている"と自虐した事にも繋がるのかも知れない。

NYに舞台が移ると言うことでどうなることかと思ったが、東京
に居た頃と殆ど変わり映えはしないし、距離感も殆ど感じること
が無かった。

今回フォードとの契約と同じくらいの比重として、壹岐正の
新たな恋バナを臭わせる展開を用意した。
紅子は彼を手にするために怪しくも、策略的に攻めて来るかと
思いきや、案外彼の前では純粋な姿があり、キャラクターとして
も愛着が湧いてくる。商社間の争いの中でも紅子の存在は正に
とって無くてはならないモノで、正に強引に関係を迫ろうとす
れば出来無くもないんだけどね。恋愛要素に於いて容易にくっつい
たり離れたりしない方がドラマとしては色んな感情が生まれて
くるものだと思う。

いよいよ直子も結婚。
結構あっさりとした流れだった事には驚いたが、結婚前に
親子らしいコミュニケーションが取れたところはホっとさせ
られるところだった。
それにしても息子の方は殆ど放置状態だね。後半には関わって
来るんじゃないかと思うけど、それがどのタイミングなのか。

鮫島がNYにまで来た理由もちょっと気になる。
イニシアチブは紅子が持っていて、鮫島を無視する辺りがなか
なか心地良い展開だった。

壹岐正 …… 唐沢寿明 (参謀)
壹岐佳子 …… 和久井映見 (妻、市役所で働く)
壹岐直子 …… 多部未華子 (娘)
壹岐誠 …… 高橋平 (息子)
壹岐誠(青年期) …… 斎籐工

川又伊佐雄… 柳葉敏郎 (防衛庁・正の同期)
貝塚道生 … 段田安則 (防衛庁・官房長)
芦田国雄 … 古田新太 (防衛庁)

久松清蔵 …… 伊東四朗 (政財界)
田原秀雄 …… 阿部サダヲ (毎朝新聞)
浜中紅子 …… 天海祐希 (クラブ『ル・ボア』)
鮫島辰三 …… 遠藤憲一 (東京商事)

谷川正治 …… 橋爪功 (満州関東軍の幕僚 & 組織「朔風会」)
竹村勝 …… 中丸新将 (参謀副長)

秋津紀武 …… 中村敦夫 (中将、大陸鉄道司令官)
秋津清輝 …… 佐々木蔵之介 (兄、戦争後僧侶に)
秋津千里 …… 小雪 (娘、陶芸家)

大門一三 …… 原田芳雄 (近畿商事社長)
里井達也 …… 岸部一徳 (近畿商事・東京支社)
兵頭信一良 …… 竹野内豊 (近畿商事・東京支社)
松本晴彦 …… 斉木しげる (近畿商事・東京支社)
小出宏 …… 松重豊 (近畿商事東京支社航空機部)
海部要 …… 梶原善 (近畿商事・NY支社)
塙四郎 …… 袴田吉彦 (近畿商事・LA支社、航空機部)(1話)
八束功 …… 山崎樹範 (N.Y支社)
角田保 …… 篠井英介 (新業務本部長)

ナレーション …… 二又一成

叶 …… 品川徹 (陶芸家)
大川一郎 …… 佐々木敏 (政治家)(2話)
鮫島倫敦 …… 石田卓也 (息子)
丹阿弥泰夫 …… 加藤虎ノ介 (千里の見合い相手)

正岡 …… 森下哲夫 (近畿商事・繊維部)
一丸 …… 山田明郷 (近畿商事・総務部)
安蒜公一 …… 団時朗 (日東貿易)
黄乾臣 …… 石橋蓮司 (インドネシア・四大財閥)
竹中莞爾 …… 清水紘治 (国際ロビイスト)
タイピスト …… 高田聖子 (日東貿易)
小牧常務 …… 小野武彦 (千代田自動車)
村山専務 …… 田村亮 (千代田自動車・営業)
大門藤子 …… 赤座美代子
里井勝枝 …… 江波杏子
プラット …… ニコラス・ペタス (フォード・アジア渉外担当)
李錫源 …… 榎木孝明 (韓国・光星物産の会長)
ヘイリー・フォーク …… アレキサンダー・バリ (フォード会長)
ハル江 …… 吉行和子 (N.Yの正の部屋の家政婦)
スザンヌ …… エマ・ハワード

アーシャ・ヤコヴェンコ、ミッシェル・タケ
丸山裕征、吉家章人、加治木均、上田勝臣、伊藤晃一
陣慶昭、藤重幸佑

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