不毛地帯

原作……山崎豊子『不毛地帯』(新潮社刊)
脚本……橋部敦子
演出……澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英
プロデュース……長部聡介 / 清水一幸

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第15話 邪魔者は消えろ!

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石油開発に於いてイランの鉱区に入札することを決めた近畿
商事は壹岐正の元、投資のリスクを軽減するために日本石油公
社に支援を仰いで国際入札に挑もうとする。しかし石油公社の
責任者はかつて防衛庁・官房長の貝塚道生が就任していた。
川又を目の敵にして自殺に追い込んだ男。最初は上手く行くか
に思えたが寸前になって鮫島らと手を組み、近畿商事の投資比
率は僅か10%に抑えられてしまう。
近畿商事の単独入札を阻むのだけが目的のもの。

壹岐正と兵頭は協議の末、石油公社を通さずに入札する方法を
模索する。その結果、オリオン・オイルというアメリカのイン
ディペンデント系の石油開発会社と手を組むべきではないかと
いう結論が出る。しかしオリオンはリーガン会長の方針で、
未だかつて他社と結託した事のない会社だった。

壹岐正は竹中の元に相談に行くと、既に石油公社との顛末は
彼の耳に届いていた。壹岐正はズバリ、リーガン会長を紹介
してほしいとするが、石油公社には巌元総理と佐橋総理の後ろ
盾がある組織であり、総理に楯突くことだとして、石油は君が
考えているほど甘くはないと言われる。

壹岐正は頭を抱えながら紅子の店を訪れる。すると彼女から
イラン王妃から近畿商事について尋ねられた事を知る。改めて
紅子の顔の広さに驚く。パートナーを探しており、オリオン・
オイルとの協議を考えていることを告げると、紅子はリーガン
会長のことも熟知していた。壹岐正は頭を下げて逢える手筈を
整えて欲しいと頼む。すると来月ジャカルタの黄の元に会いに
くるはずだから、その時会いに来てと言われる。

そんな中、里井が現場復帰し大門と石油事業に関して話し合う。
壹岐正は情報の収集や分析能力には長けるが、外交力がイマイ
チだという。この一件も石油公社を通さずにやろうとしている
事は正気の沙汰ではないと告げる。

壹岐正と兵頭はジャカルタの黄の元へ行く。すると快く歓迎して
くれる黄。リーガンと面会の機会を与えて貰う。
壹岐正と兵頭は、リーガンから何故ウチの会社を選んだのか
尋ねられると、オリオンは石油開発に於いては真摯な会社である
事を説く。熱意が通じて両社は組むことを快諾する。

問題は100億円の資金確保だった。次回の経営者会議の場で大門
は必ず討議する事になるとして、それまでに根回ししておかねば
ならないという。そこで石油に関係のある財務部の武蔵と鉄鋼部
の堂本には話を付けておき、社内の反対勢力を圧さなければ
ならない事を告げる。
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今回は石油公社を相手に本気でぶつかり合う為に道筋を立てる
話だった。

前回イランの鉱区に対してイニシアチブを握っていると思って
いた壹岐正だったが、その辺のイニシアチブ性というのが全く
の無意味で有ったことで、少々ドラマとしては都合良く鮫島の
存在を台頭させた感じばかりがしていたが、今回は面白く出来て
いたと思う。

殆ど人脈便りの展開ではあるけれど、少なくとも里井よりは根
回しが上手だったという事で、戦略家らしい一面が見て取れた。
またかつて参謀本部時代に犯したミスを引き合いに出して、
この計画を潰そうとしている里井に対して、今度は平和的な方法
で国家の求めているものを手にするという決意の程が興味深く
描かれたと思う。

こういっては何だが紅子を近畿商事に引き抜けば、相当展開と
しては楽に進みそうな感じ。彼女の人脈は一商社を上回るほどの
貴重な戦力で有り、要所で展開の窮地を救ってくれる。

総理候補の田淵を後ろ盾に使うところとか、とても上手い政治
家の利用の仕方だったし、里井の失脚への道筋のために、角田
を利用する所などソツのない作りだった。

千里の絡ませ方に於いては、壹岐正が千里のことをどう思って
いるのかが描かれた。彼女の事を本当に大切に思っているのか。
壹岐正は仕事を優先するのに、千里に対しては自分とのことを
優先しろと言う。時代性というものも勘案すると間違った描写
ではないが、壹岐正に失望感を覚える展開が今後どう発展して
いくのか。
ハル江さんの絡ませ方はイマイチ良く解らない。
ニューヨーク時代は壹岐正と千里の関係を快く思っていなかった
様なのにここにきて突然容認するような構えだった。

そして今回はなんといっても里井に対する処遇だ。
壹岐正が人事について圧力を掛けたことで、会社の中に於ける
彼の存在感を描くと同時に、今後会社の中では彼の存在が脅威
として映っていくのか。

壹岐正 …… 唐沢寿明 (参謀)
壹岐佳子 …… 和久井映見 (妻、市役所で働く)
壹岐直子 …… 多部未華子 (娘)
壹岐誠 …… 高橋平 (息子)
壹岐誠(青年期) …… 斎籐工

川又伊佐雄… 柳葉敏郎 (防衛庁・正の同期)
貝塚道生 … 段田安則 (防衛庁・官房長 ->石油公社)
芦田国雄 … 古田新太 (防衛庁)

久松清蔵 …… 伊東四朗 (政財界)
田原秀雄 …… 阿部サダヲ (毎朝新聞)
浜中紅子 …… 天海祐希 (クラブ『ル・ボア』)
鮫島辰三 …… 遠藤憲一 (東京商事)

谷川正治 …… 橋爪功 (満州関東軍の幕僚 & 組織「朔風会」)
竹村勝 …… 中丸新将 (参謀副長)

秋津紀武 …… 中村敦夫 (中将、大陸鉄道司令官)
秋津清輝 …… 佐々木蔵之介 (兄、戦争後僧侶に)
秋津千里 …… 小雪 (娘、陶芸家)

大門一三 …… 原田芳雄 (近畿商事社長)
里井達也 …… 岸部一徳 (近畿商事・東京支社)
兵頭信一良 …… 竹野内豊 (近畿商事・東京支社)
松本晴彦 …… 斉木しげる (近畿商事・東京支社)
小出宏 …… 松重豊 (近畿商事東京支社航空機部)
海部要 …… 梶原善 (近畿商事・NY支社)
塙四郎 …… 袴田吉彦 (近畿商事・LA支社、航空機部)
八束功 …… 山崎樹範 (N.Y支社)
角田保 …… 篠井英介 (新業務本部長)
一丸松次郎 …… 山田明郷 (副社長)
スザンヌ …… エマ・ハワード (近畿商事・N.Y支社)
武藤 …… 中原丈雄 (鉄鋼部)

ナレーション …… 二又一成

叶 …… 品川徹 (陶芸家)
大川一郎 …… 佐々木敏 (政治家)(2話)
鮫島倫敦 …… 石田卓也 (息子)
丹阿弥泰夫 …… 加藤虎ノ介 (千里の見合い相手)

正岡 …… 森下哲夫 (近畿商事・繊維部)
一丸 …… 山田明郷 (近畿商事・総務部)
安蒜公一 …… 団時朗 (日東貿易)
黄乾臣 …… 石橋蓮司 (インドネシア・四大財閥)
竹中莞爾 …… 清水紘治 (国際ロビイスト)
タイピスト …… 高田聖子 (日東貿易)
大門藤子 …… 赤座美代子
里井勝枝 …… 江波杏子 (妻)
李錫源 …… 榎木孝明 (韓国・光星物産の会長)
ハル江 …… 吉行和子 (N.Yの正の部屋の家政婦)
玉井 …… 浜田晃 (第三銀行・頭取)
崔大統領 …… 鶴田忍 (韓国大統領)
大田 …… 佐渡稔
ジョージ岡 …… 下條アトム
田淵 …… 江守徹 (自由党議員、次期総理と呼び声高し)
鮫島玲子 …… キムラ緑子 (様)

東山 …… 小市慢太郎 (近畿商事・テヘラン支社)
早乙女 …… 池田鉄洋 (近畿商事・パリ支社)
神尾 …… 名高達男 (五菱物産)
有田 …… 大門正明 (五井物産)
永井 …… 潮哲也 (関東電力)

チャールズ・グラバー、島津健太郎、森下哲夫、浅沼晋平
アベディン、川口圭子

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