不毛地帯

原作……山崎豊子『不毛地帯』(新潮社刊)
脚本……橋部敦子
演出……澤田鎌作 / 平野眞 / 水田成英
プロデュース……長部聡介 / 清水一幸

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第19話 約束の地

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近畿商事は、60億円の石油の掘削費、そして綿花相場で45億円
が泡と消えようとしていた。
最後の望みとばかりに5本目の五号井を掘り始めるも、ガス暴噴
により窮地に立たされる。
大門はそれでも綿花を買い続け、綿花部長の伊原は頭を抱える。
壹岐正はサルベスタン鉱区からの連絡を待っているとようやく
兵頭から泥水の調整に手間取っていた事を告げられ、ガス暴噴
したということは、逆に油が有るという兆候だとされる。

壹岐正の元に鮫島がやってきて、近畿商事が窮地に立たされて
居ることを知り嫌みを告げる。ウチのサハリンでの掘削作業は
順調だという。第三銀行の頭取に逢ったが大門の事を心配して
いたという。メーンバンクが融資を断ったら近畿商事は大変だと
いう。

翌日綿花部長の伊原は大門の元に進退伺を提出するも、大門は
それを受け取らず、壹岐正の仕業である事を悟り、彼を呼び出す。
壹岐正は大門に綿花からの撤退を願い出ると共に、受け入れられ
なければ役員会議で決議を取るという。一刻も早く決断を見せて
欲しいと言われた大門は、里井の元に行き、壹岐正を追い出す
ので近畿商事に戻ってきて欲しい事を告げる。

その頃、千代田自動車の提携先を探っていた海部要らから、
ユナイテッドとの提携に関して相手がテーブルにつくと約束し
てくれた事を報告に来る。

一方サルベスタンではリーガン会長もやってきて、未だに石油
の兆候が見られない事への苛立ちをぶつけ、思い切って水圧
破砕をすべきだと主張する。

役員会議が招集され、綿花の損失について報告される。
現在45億の損失の件が取り上げられると、大門は石油事業の
60億円の方が問題だとして、立て直すには商いの事をよく知っ
ている人間が必要だと告げる。そこで大門は里井を副社長として
戻ってきて貰うことを語る。
しかしそんな発表をしていると同時に塙が連絡を受けて、会議
室に飛び込んでくる。サルベスタンの五号井でついに石油が
出たというのである。壹岐正は感激の言葉と共に、尽力を尽く
した社員への労いの言葉も忘れず、社員に感謝を示すと、一同
はスタンディングオベーションで壹岐正の偉業を称えた。

マスコミの記者会見の場で、壹岐正はようやく背負ってきた
重い荷物を下ろすことが出来た事を告げ、全ては大門社長の
勇気と決断である事を語る。それが全ての牽引になった事を
告げると、大門は意外な表情を見せる。
しかし後日壹岐正は社長室へと赴き、大門社長に勇退を願い出
るのだった。
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近畿商事は石油開発に後が無く、社長は時代外れの綿花投資で
会社に多額の損害を与えていた。壹岐正が社長の座を奪おうと
していると思った大門は、里井を招集し、保身のための都合の
良い人材を集め始める。

最終回はとても面白い物語になった。

壹岐正が社長の座を求めていない事は明らかだし、この大型
プロジェクトが最後になる事はこれまでにも幾つかの場面で
語られていたので、どういう形でまとめていくのか。

言葉の中には、一時代を築いた男の功績と同時に、世代が変わ
る事への空しさが含まれていて、とても寂しくなるような話し
である。途中で海部要が千代田提携の話が順調に進んでいると
いう事を挿入する辺りも、次世代の人間が育ってきている事を
意識するものだろう。

一番の問題は壹岐正という人間に対して誤解している大門に
どういう説得力を持って勇退に導くのかという点だ。
最期こそ大門が暴走したけれど、壹岐正にとっては語り尽くせ
ない程の恩義が有ることは明らかで、同じ時代を見てきた戦友
としての扱いによって、上手く壹岐正の功績に乗っける形とな
り、大門の自尊心を決して崩すことなく処理した辺りは見事
なものである。その辺が軍人気質の有る壹岐正だからこその
性格と行動が垣間見られたのかも知れない。

本来長いスパンで描かれていれば、壹岐正と大門の確執を
じっくり描いていくとまた感動も違った物になったのだろうね。

壹岐正と鮫島との戦いも面白く、国益というものを常に念頭
に置いた壹岐正と、そんな彼に勝つことだけを目指していた
鮫島の器の違いが描かれていた。この要素、もっとそれを実感
させるだけのシナリオが用意できていれば良かったのだけどね。

家族回りの早しや千里との関係など、かなり物足りなさが残っ
たのも事実だった。

壹岐正 …… 唐沢寿明 (参謀)
壹岐佳子 …… 和久井映見 (妻、市役所で働く)
壹岐直子 …… 多部未華子 (娘)
壹岐誠 …… 高橋平 (息子)
壹岐誠(青年期) …… 斎籐工

川又伊佐雄… 柳葉敏郎 (防衛庁・正の同期)
貝塚道生 … 段田安則 (防衛庁・官房長 ->石油公社)
芦田国雄 … 古田新太 (防衛庁)

久松清蔵 …… 伊東四朗 (政財界)
田原秀雄 …… 阿部サダヲ (毎朝新聞)
浜中紅子 …… 天海祐希 (クラブ『ル・ボア』)
鮫島辰三 …… 遠藤憲一 (東京商事)

谷川正治 …… 橋爪功 (満州関東軍の幕僚 & 組織「朔風会」)
竹村勝 …… 中丸新将 (参謀副長)

秋津紀武 …… 中村敦夫 (中将、大陸鉄道司令官)
秋津清輝 …… 佐々木蔵之介 (兄、戦争後僧侶に)
秋津千里 …… 小雪 (娘、陶芸家)

大門一三 …… 原田芳雄 (近畿商事社長)
里井達也 …… 岸部一徳 (近畿商事・東京支社)
兵頭信一良 …… 竹野内豊 (近畿商事・東京支社)
松本晴彦 …… 斉木しげる (近畿商事・東京支社)
小出宏 …… 松重豊 (近畿商事東京支社航空機部)
海部要 …… 梶原善 (近畿商事・NY支社)
塙四郎 …… 袴田吉彦 (近畿商事・LA支社、航空機部)
八束功 …… 山崎樹範 (N.Y支社)
角田保 …… 篠井英介 (新業務本部長)
一丸松次郎 …… 山田明郷 (副社長)
スザンヌ …… エマ・ハワード (近畿商事・N.Y支社)
武藤 …… 中原丈雄 (鉄鋼部)

ナレーション …… 二又一成

叶 …… 品川徹 (陶芸家)
大川一郎 …… 佐々木敏 (政治家)(2話)
鮫島倫敦 …… 石田卓也 (息子)
丹阿弥泰夫 …… 加藤虎ノ介 (千里の見合い相手)

正岡 …… 森下哲夫 (近畿商事・繊維部)
一丸 …… 山田明郷 (近畿商事・総務部)
安蒜公一 …… 団時朗 (日東貿易)
黄乾臣 …… 石橋蓮司 (インドネシア・四大財閥)
竹中莞爾 …… 清水紘治 (国際ロビイスト)
タイピスト …… 高田聖子 (日東貿易)
大門藤子 …… 赤座美代子
里井勝枝 …… 江波杏子 (妻)
李錫源 …… 榎木孝明 (韓国・光星物産の会長)
ハル江 …… 吉行和子 (N.Yの正の部屋の家政婦)
玉井 …… 浜田晃 (第三銀行・頭取)
崔大統領 …… 鶴田忍 (韓国大統領)
大田 …… 佐渡稔
ジョージ岡 …… 下條アトム
田淵 …… 江守徹 (自由党議員、次期総理と呼び声高し)
鮫島玲子 …… キムラ緑子 (妻)

東山 …… 小市慢太郎 (近畿商事・テヘラン支社)
早乙女 …… 池田鉄洋 (近畿商事・パリ支社)
神尾 …… 名高達男 (五菱物産)
有田 …… 大門正明 (五井物産)
永井 …… 潮哲也 (関東電力)
林田正道 …… 梅野泰靖 (総会屋)
ドクター・フォルシ …… アルフレッド・ベナベント
山下 …… 矢島健一 (石油公社)

岐部公好、古家章、シェリアールカーン、上ノ茗真二
大野慶太、川又シュウキ、外園大、川端健嗣(アナ)
水月優希


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