仁 -JIN-

脚本/森下佳子
演出/平川雄一朗、山室大輔、川嶋龍太郎
プロデュース/石丸彰彦、津留正明

http://www.tbs.co.jp/jin2009/


第5話 神に背く薬の誕生

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野風は仁に姉さんを治して欲しいとして、病床に伏せる夕霧の
事を見せる。末期の梅毒の患者。現在の世の中ならばペニシリ
ンが有れば治るが、残念ながら手の施しようがなかった。

西洋医学所に戻り緒方に尋ねると現在では水銀を用いる方法で
症状を食い止めているのだという。梅毒とは一体何なのか。
梅毒菌という病原微生物によって汚染されるものだという。
話しを聞いていた緒方はまるでいずれは治る世界が来ると思っ
ている口ぶりだと指摘され、咄嗟に医療の進歩を口にする。

目の前で苦しむ患者のために何かできることはないかと尋ねら
れ、仁は予防が一番だとして吉原に診療に行くが、花魁たちは
誰一人として協力的ではなかった。花魁たちの間では鳥屋が
つくと言われ、梅毒にかかって回復すれば一人前だと言われる
という。
花魁たちも治せると聞けば耳を貸すだろうが、仕事から外され
れば生活に困るのだろうとの事だった。

梅毒の特効薬のペニシリンは1928年フレミングによって開発
される。青カビの中に存在している抗生物質。仁はこの薬を
世に出せば医学の歴史の針を進めることが出来るかも知れない
という。その為にここに送り届けられたのではないかと。

青カビと向き合う仁は、どのようにして青カビの中から必要な
物質を取り出すかで頭を悩ませる。かつて友永未来から自然の
物質の中から薬を作るレポートを見せて貰ったことが有ったが
どうしても思い出すことが出来なかった。
そんな中、咲が油拭きをしているという言葉に閃きを覚える。
すぐに西洋医学所にいき、薬を作るために協力を求める。
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今回は梅毒について描かれたものだった。
梅毒が何なのか、そしてペニシリンがどんな物から生まれた
ものなのか。

先人が開発して既に効用の知らされる薬を、患者に投与するだけ
の医療現場から、イチから開発して患者のために努力する。
製造工程の中に人々の汗と努力と期待や希望の全て含まれていて、
手を合わせて成功する事を夢に見る。
現代人には忘れてしまった物作りの現場が上手くドラマの中に
加味された内容だった。

最近のバラエティ番組では、オートメーション化された工場で
何が作られているのかを、完成品から逆回転させたり、原材料
から完成品までを早回しして解答者に答えさせるというものが
流行していると聞くが、まさに製造の工程だったり
開発の努力が見えるドラマの内容にとても興味を覚えるものだ。

単なる治療の為の医療だけでなく、開発のための医療の知識も
求められると言うことで、何の先進的機材もない現場からどれ
だけ現在の世の中と寸分違わぬものを作り上げていくのかという
点でも実に好奇心の擽られる内容だと思う。

当然ドラマの中でメインとなるべきヒロイズムも忘れておらず、
仁に対して学ぼうとする様や仁が達成した後に訪れる英雄視され
る視線を通して快感を覚えることも面白い点だ。

一番懸念となるべき事は、仁という出所不明の人物にいい顔を
される事での嫉妬ややっかみなど、人間の持つ醜い感情の一つ
一つが顔を覗かせるかどうかという点だ。
幸い緒方先生がとても出来た人なので、仁から学び取ろうとする
姿の中にそんな感情が一切含まれていないことに安堵感を覚える
ところだが、西洋医学所内でも人事に関してゴタゴタが起こり
そうな気配だし、やはり良く思っていない勢力というのが存在
するので、今後の不安材料として存在している。

当時の女性医療従事者がどの程度の色眼鏡を見られるのかは
分からないが、咲が必死になって医療を志そうとしている中には
仁への尊敬の気持ちとか熱い愛情の心が芽生えているようで、
その辺の要素も興味深く写ることは確かだと思う。

南方仁 …… 大沢たかお (脳外科医)
野風・友永 未来 (2役) …… 中谷美紀 (植物状態)
橘咲 ……綾瀬はるか (橘家の長女)

橘恭太郎 …… 小出恵介 (咲の兄)
佐分利祐輔 …… 桐谷健太 (関西出身の若く優秀な医師)
山田純庵 …… 田口浩正 (西洋医学所の医師)
タエ …… 戸田菜穂 (枝豆や卵を売り)
喜市 …… 伊澤柾樹 (タエのひとり息子)
初音 …… 水沢エレナ (吉原・玉屋の若い花魁)
茜 …… 橋本真実 (茶屋の看板娘。)

緒方洪庵 …… 武田 鉄矢 (最高峰の蘭方医であり、西洋医学所の頭取)
新門辰五郎 …… 藤田まこと (火消し「を組」の親分)
夕霧 …… 高岡早紀 (野風の姐さん女郎、梅毒)
鈴屋彦三郎 …… 六平直政 (吉原の大見世・鈴屋の廓主)
橘栄 …… 麻生祐未 (咲と恭太郎の母で未亡人)
勝海舟 …… 小日向文世 (坂本龍馬の師)
坂本龍馬 …… 内野聖陽 (豪快で女好きな土佐出身の脱藩浪人)

女将 …… 水沢アキ

小林勝也、戸次重幸、奥田達士

島邑みか、谷桃子、長谷川かずき、もたい陽子、池永亜美

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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