仁 -JIN-

脚本/森下佳子
演出/平川雄一朗、山室大輔、川嶋龍太郎
プロデュース/石丸彰彦、津留正明

http://www.tbs.co.jp/jin2009/


第6話 生きてこそ…

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この世にはないペニシリンを生み出した仁は、本当に許される
行為だったのか自問自答する中、仁の意思とは関係なく、世間
では彼を神聖視する動きも見られた。

そんな中、西洋医学所と敵対する漢方治療の総本山"本道"と
言われる医学所の奥医師・福田玄孝が仁を尋ねてやってくる。
医学館督事の多紀元えんが彼に一度お目に掛かりたいというの
で有る。元々は"本道"が御上に認められた医師だったが、近年
では後発した西洋医学所が次々と御上から任命を受けている事
も有って良く思っていないのは確かだという。
仁はそれでも行きたいと言うと、それを心配した者達から護衛
を付けるべきだとして、橘恭太郎と坂本龍馬を一緒に連れて
行くことになる。

一方仁はこの世界に来て半年が過ぎるが、未だにここに来たと
いう実感が沸かずにいた。何処かリアルに感じない為に夢では
無いかと思うほど。もしも斬られたりしたら血が流れるのか
どうかも分からなかった。

仁が本道に行くことになったために、吉原の遊女たちの梅毒の
検査には咲らが行くことになる。野風からは仁が来ないと聞い
て残念がり、折角拝ませてやろうと思ったのにと股を開く。
咲はそんな野風を見て羨ましいと声を掛ける。

仁は医学館督事の多紀元えんと面会する。
身元不明のものが居るのはふとときだとして、素性を教えてい
ただきたいという。幕府の医術のことで私の耳に入らないこと
は無いとする多紀元えん。仁が答え倦ねていると、龍馬や恭太
郎は記憶が無いことを告げる。それでも医術の記憶は正しいこ
とを訴える。
そんな中、近くでやりとりを見ていた玄孝が突然腹痛を訴えて
倒れてしまう。すぐに仁が診察すると、胃潰瘍穿孔だという。
胃に穴が空いており、内容物が外に出ている状態で、放って
置くと腹膜炎になると言う。触診だけでそこまで分かる仁に
多紀元えんは驚くと共に、仁が腹を切って胃に穴を開けると
言ったことで更に驚く。玄孝はメスを見て腹を切られて生きて
いる訳が無いとして、辞めてくれるよう多紀元えんに訴える
が、お主が死んだら私もここで腹を切るとした事でなんとか
納得。しかし彼の門下生たちは多紀元えんにもしものことが
有ればと敵対心を持って睨み付ける。

みんなが注目している中、手術が行われる。
始めて内臓を見た咲は手術中に固まってしまう。そこで佐分利
と交代して貰う。穴は胃の近くにあった大網を使って塞ぐ事で
なんとか無事手術は終わる。
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過去の時代にタイムトリップしてきたせいか、イマイチこの
世界に対して執着するものが無い仁。生きているのか死んでいる
のか分からない状況の中で、医学所同士の対立やら、同門の中
でのいざこざに巻き込まれていく話を描いたものだった。

人間だとしたら死人、まるで仏のような人だという仁の中に、
人間が本来持つような欲が存在しない。
仁さえ望めばそれこそ医学界の天下を収められるような功績を
次々と打ち立てているにもかかわらず、それを一切求めようとは
しない仁の姿に違和感を覚える龍馬。人一番ムーブメントを起こ
したいと思っている龍馬だけに、口惜しくて仕方がないのかも
しれない。

その点緒方の行動は、この世界を素直によくしたいという思い
が存在している。その場凌ぎに治療を行おうとしている仁とは
違いハートを感じるほどに医療に対して貪欲で、その技術を
広めようと精力を傾けている。

前半部では敵対する漢方医に、仁の実力を見せつけられるだけの
要素を用意する。ロンよりツモならぬ、論よりも実際に医学の
レベルを見せる事で一気に彼の存在感を植え付けてしまった。

突出した技術の持ち主によって、闇の部分が浮かび上がり、
これまで日向にいた漢方医の存在が、一気に土俵から追いやられ
る事での恐怖心や屈辱感が、上手く仁に対する殺意として現れる
所も、今回の刺客騒ぎに於いてとても盛り上がるものとなった。

佐分利の件は完全に犯人として仕立て上げられるものとばかり
思っていたけど、全く関係が無いという訳ではないところ
に意外性が有った。
医学の腕を上げる為に仕方がなかった事。国の為、道のためだと
言う佐分利に対して、緒方の反論も見事なものがあった。

このドラマ、どの要素にも興味深い点が存在している。
今回上述するドラマに隠れてサブの扱いではあるけれど、咲と野風
の立場の違いや、互いの境遇に羨望の視線で眺め合う所などとても
面白かったし、大門から出て自由に生きたいとする野風の主張も
痛いほど伝わるものがあった。

仁も死を目の前にしてようやく自分の中にもある種の感情やら
生に対する執着心が見て取れたのか。

最後に出てきた10円玉の件も色々と先の展開を期待させるものだ
し、恭太郎が気に入り始めた遊女の初音の視力が弱い点について
この辺も仁が治してしまったりするのかなと思うと、期待する
ものがあるな。

南方仁 …… 大沢たかお (脳外科医)
野風・友永 未来 (2役) …… 中谷美紀 (植物状態)
橘咲 ……綾瀬はるか (橘家の長女)

橘恭太郎 …… 小出恵介 (咲の兄)
佐分利祐輔 …… 桐谷健太 (関西出身の若く優秀な医師)
山田純庵 …… 田口浩正 (西洋医学所の医師)
タエ …… 戸田菜穂 (枝豆や卵を売り)
喜市 …… 伊澤柾樹 (タエのひとり息子)
初音 …… 水沢エレナ (吉原・玉屋の若い花魁)
茜 …… 橋本真実 (茶屋の看板娘。)

緒方洪庵 …… 武田 鉄矢 (最高峰の蘭方医であり、西洋医学所の頭

取)
新門辰五郎 …… 藤田まこと (火消し「を組」の親分)
夕霧 …… 高岡早紀 (野風の姐さん女郎、梅毒)
鈴屋彦三郎 …… 六平直政 (吉原の大見世・鈴屋の廓主)
橘栄 …… 麻生祐未 (咲と恭太郎の母で未亡人)
勝海舟 …… 小日向文世 (坂本龍馬の師)
坂本龍馬 …… 内野聖陽 (豪快で女好きな土佐出身の脱藩浪人)

松本良順 …… 奥田達士 (西洋医学所)
伊東玄朴 …… 小林勝也 (西洋医学所)
福田玄孝 …… 佐藤二朗 (漢方治療館)
多紀元えん …… 相島一之 (漢方治療館)

九十九一、井上浩、俵木藤汰、木村靖司、大西信満、松下哲
小須田康人、累央、石川裕司、島邑みか、来栖聖樹、柳田努
於保佐代子、八木瑛美莉、高瀬岬

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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