仁 -JIN-

脚本/森下佳子
演出/平川雄一朗、山室大輔、川嶋龍太郎
プロデュース/石丸彰彦、津留正明

http://www.tbs.co.jp/jin2009/


第9話 残酷な神の裁定

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仁は未来との写真に変化が訪れていることに気がつく。今にも
存在が抹消されるかのように消えていく未来の写真に驚愕する。

彦三郎から身請けの話しを聞かされる野風。女郎が身請けを
断る事など出来無いというが、彼女は仁への思いが依然として
強くなっていた。

一方仁友堂で診察をしていた仁は聴診器であるトラウベが使い
づらい事を口にする。その話を咲は真剣に聞いていた。
仁の要求を聞き入れ、次々と医療器具を改良していく西洋医学
所の仲間達。横松や八木はは細工物が得意と言うことで、色々
とイノシシの膀胱を使って器具を作る。

そんな中、茶屋で一服する仁たちに言いがかりを付ける老人
たちの姿があった。仁を医者だと知り、人助けだと偉いことを
言うが火事場で人助けに来たことがあるのかという。老人の
名は新門辰五郎、配下3千人をくだらないという町火消し十番
組"を組"頭で、その影響力は老中さえも凌ぐという。彼の右腕
の千吉は仁達に突っかかってくるが、辰五郎はそれを止める。
火消しの度胸と心意気で火災の際には人を助けている事を告げ
医師にはそれがないというと、仁は流行病から江戸を救ったの
は医者だと告げる。それを受けて辰五郎は火事になったときは
呼びに来ると告げる。

橘家に龍馬がやってくる。仁に用事があるといい、ペニシリン
を売ってみてはどうかという提案だった。瘡毒に掛かる者達が
命を投げ出すこと、攘夷派開国派が無用な戦いをしなくて済む
という。
そんな中仁に野風から一通の手紙が届く。内密で相談したいこ
とが有るというと龍馬は早速吉原・鈴屋に行こうと仁を誘う。

いざ野風の元を訪れると、彼女は相談ではなく、かつて協力
を申し出たときに仁は金を受け取らなかったので、自分で自分
を50両出して買ったのだという。龍馬が一人はしゃぐ姿を見て
野風は彼の酒に睡眠薬を仕込み、早々に退出させる。
野風は仁と二人っきりになると、仁の事をこの世の人ではない
のにこの世の人のフリをしているという。現世で生きているの
に生きていない様だと告げ、私も全く同様だという。
咲と結ばれるのか?と尋ねられるが、仁は父ほどの年齢が離れて
いると告げる。仁の好きな人の事を少しだけでも聞かせて欲し
いと言われると、彼は未来を思い浮かべながら答える。すると
その言葉はそっくりそのまま野風に当てはまることに気がつく。
姿形だけでなく心も似ている。今宵はその好きな人の名を呼ん
でくれとして、野風は仁に抱いて欲しいと近づいてくる。

そんな中、江戸の町に半鐘が鳴り響く。外では大火事。
仁は辰五郎との約束を思い出し、野風にそれを告げて出て行く。
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仁の持つ写真に異変が起こる。
医療は確実に前進しているはずなのに、未来の命の灯火は消え
ようとしている現実に頭を悩ませる。

今回はエピソードを通して、未来の命は何を天秤の秤にして
いるのかを探っていくモノだった。
医療の向上がそれに当たると考えていた仁にとっては意外な
方向性を持ち始め、今度は目の前の花魁の命や運命と直結して
いるのではないかと考える。

なんとなく写真を巡る一連の話は映画「バック・トゥ・ザ・
フューチャー」のPART2を思い出させる。
マーティが過去にタイムスリップした先で、母親から惚れら
れてしまい、自分の存在が消えようとしていく。その修正を
果たすというものだ。

今回は先進的医学を見せつける以上に、命を賭けて人を助ける
職人同士の共通する部分を抜き出し、それをきっかけとして
心を通わせていく物語を描いた。
異文化交流とばかりに、医師の存在、火消しの存在が互いに
取ってどんな存在なのかイマイチ実感するモノがない中で、
胡散臭さを払拭し、がっちり心を掴んでいく物語で、見終わった
後には自分の仕事に誇りを持って生きている者達がとても輝いて
見えるモノだった。

相変わらず色んな要素が満載のドラマで、仁という人物を巡っ
て、野風と咲の綱引きは面白い要素として存在しているし、
その中で野風の心寂しい境遇が浮かび上がってくるモノ。

映像表現も素晴らしく、江戸の街並みがあっと言う間に火に
包まれるところの迫力。カメラの引きの絵が出たとき地獄絵図
の様に火災が広がっている所など、なかなか映像としても見応え
が有った。

南方仁 …… 大沢たかお (脳外科医)
野風・友永 未来 (2役) …… 中谷美紀 (植物状態)
橘咲 ……綾瀬はるか (橘家の長女)

橘恭太郎 …… 小出恵介 (咲の兄)
佐分利祐輔 …… 桐谷健太 (関西出身の若く優秀な医師)
山田純庵 …… 田口浩正 (西洋医学所の医師)
タエ …… 戸田菜穂 (枝豆や卵を売り)
喜市 …… 伊澤柾樹 (タエのひとり息子)
初音 …… 水沢エレナ (吉原・玉屋の若い花魁)
茜 …… 橋本真実 (茶屋の看板娘。)

緒方洪庵 …… 武田 鉄矢 (最高峰の蘭方医であり、西洋医学所の頭

取)
新門辰五郎 …… 藤田まこと (火消し「を組」の親分)->変更
夕霧 …… 高岡早紀 (野風の姐さん女郎、梅毒)
鈴屋彦三郎 …… 六平直政 (吉原の大見世・鈴屋の廓主)
橘栄 …… 麻生祐未 (咲と恭太郎の母で未亡人)
勝海舟 …… 小日向文世 (坂本龍馬の師)
坂本龍馬 …… 内野聖陽 (豪快で女好きな土佐出身の脱藩浪人)

松本良順 …… 奥田達士 (西洋医学所)
伊東玄朴 …… 小林勝也 (西洋医学所)
福田玄孝 …… 佐藤二朗 (漢方治療館)
濱口儀兵衛 …… 石丸謙二郎 (ヤマサ醤油)
澤村田之助 …… 吉沢悠 (歌舞伎役者・女形)

久坂玄端 …… 林泰文
新門辰五郎 …… 中村敦夫

川村陽介、浜田学、八木瑛天莉、大方斐紗子、高瀬岬、山口龍人
松本実、ユキリョウイチ、小林裕之、森園麻衣子

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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