官僚たちの夏

脚本 - 橋本裕志
演出 - 平野俊一、大岡進、松田礼人
プロデューサー - 伊佐野英樹、真木明

http://www.tbs.co.jp/kanryou09/


第6話 公害問題

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昭和36年(1961)夏。丸尾が事務次官に昇進し、風越は企業局長
になる。桜塚は外局である特許庁へと回され、その変わりに
玉木が通産局長に就任する。

国内産業が発展していく中で、90%に渡る貿易産業の自由化を
求められた日本に残された期限は残り一年半となる。
風越は牧順三の作った国内産業保護法成立に向け、最終案を
提出する。これまで数々の外圧に対してそれをツッパねて
国内産業を発展させてきた風越に現在は部があり、片山は玉木
にエネルギー問題を突破口にして国内産業保護法可決を回避
させて行くべきだと主張する。

局長会議の場で最終案を提出する風越に対して、玉木は役所
主導の合併統合案は民間業者の自由な企業活動を保証できない
のではないかと告げる。それよりもこれからの産業発展に必要
な為のエネルギー戦略に於いて、石油開発基金の重要性を
訴える。風越はそれをやるならば炭坑業者への生活保障が先
だとして互いに一歩も引かない。
玉木や片山は池内の元を訪れ、風越は国際世論など見向きも
せず法案にしか目が言っていない事を報告する。

そんな中、東京経済新聞が公害問題を取り上げる。
産業発展の影で市民生活を脅かす、工業廃水、コンビナート
から立ちこめる煙の公害。
法案成立一直線の風越は公害問題を軽視し、公害対策よりも
今は産業を強くならなければならないと告げる。産業の発展
こそ豊かさをもたらす物。海外勤務で公害問題を目にしてきた
ものたちと違って日本では公害問題に前例が無かった。
その事に御影大樹も心配し、片山は風越の姿勢を非難し、玉木
も公害対策法を次の局長会議の場で提出することになる。
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相変わらず熱いドラマですね。

最後に左遷される玉木が告げるセリフが、このドラマの本質を
見誤らない様に軌道の修正を図るところがまた良くできている。
玉木にしても風越にしても日本を一流の国にしたくてやって
いる事。

日本国民の豊かさや未来を得るためには果たして風越の唱える
産業の発展ばかりを見つめていけば良いのかを考えさせる
内容だった。

今回は国内産業保護法の制定の為に動き出した風越ら。
それを阻止するために玉木が動き出す中、公害問題という新た
な問題が発生する。主導権争いに於いて有利に立つために、二人
は自分たちに有利な公害対策を打ち出していく。

ドラマとして面白いのは、これまで日本国民の味方だと思って
いた風越が目の前の法案可決のために、国民の事を疎かにして
しようとしている現実を描いたことだ。

今回の展開だけを見ていると玉木の方がより国民の目線に近い
声を発している。しかしその影で玉木の脳裏の先には
エネルギー政策の予算を奪い、産業保護法に於いてのイニシア
チブを奪うことにあり、更にその先には次官の座を奪うことに
有るので、その辺の使い分けが官僚というよりも政治家
みたいな役回りで実に憎たらしい所である。

若手の官僚からも玉木の支持者が多いと片山から言われた後の
エレベーターの扉が閉まる直前の玉木の憎たらしい微笑みが
彼の腹の中を見せられたようで面白い部分。

明日は我が身というけれど、玉木が自由化を迫られるときに
味わった国民からの非難の声を今回は風越にぶつけたという
面ではとても良くできていたし、その時玉木が風越の元に
励ましに来るなど、この二人の関係性がよく描かれていて
感心させられる場面だった。

今回は公害問題を取り上げたわけだが、玉木の唱えた公害三法
案がいいのか、それとも過密工業地域を地域に移転させるべき
なのか、ぶっちゃけこの問題に於ける二人の法案の違いなどは
有る意味どうでも良かった。国内産業保護法の前哨戦として
描かれた公害問題に於いて、総理の一声の大きさを感じさせる
と共に、支持者確保のために政治家のような動きを見せない
事には勝てない事を上手く提示する。

玉木と風越が支持層から浮き沈みしていく様子が正弦曲線や
バイオリズムの様に綺麗な弧を描いているところが面白いね。

風越信吾 …… 佐藤浩市 (42歳・自動車課課長)
庭野貴久 …… 堺雅人 (36歳・鉱山局石油課課長補佐)
鮎川光太郎 …… 高橋克実 (39歳・中小企業振興課課長)
西丸賢治 …… 佐野史郎 (40歳・東京経済新聞記者)
丸尾要 …… 西村雅彦 (45歳・重工業局局長)
牧順三 …… 杉本哲太 (39歳・特許庁総務課課長)
山本真 …… 吹石一恵 (22歳・新人官僚)
御影大樹 …… 田中圭 (26歳・大臣官房秘書)
風越道子 …… 床嶋佳子 (37歳・妻)
風越貴子 …… 村川絵梨 (16歳・娘)
片山泰介 …… 高橋克典 (34歳・通商局為替課課長補佐)
玉木博文 …… 船越英一郎 (42歳・通商政策課課長)
池内信人 …… 北大路欣也 (55歳・民自党幹事長)

前園繁 …… 国広富之 (事務次官)
岡屋文平 …… 桂ざこば (岡屋織物株式会社)
柏原満 …… 春田純一 (新事務次官)
牧百合子 …… 奥貫薫 (妻)
池内瑞江 …… 柏木由紀子
須藤恵作 …… 長塚京三 (大蔵大臣)
山岡一郎 …… 中原丈雄 (帝都銀行頭取)
桜塚治 …… 矢島健一 (通商局長)
ナレーション …… 安住紳一郎(アナ)

舟木三郎 …… 山谷初男

大河内浩、芹沢礼多、渡辺航、中村祐樹

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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