ハンチョウ 〜神南署安積班〜
(シーズン3)

脚本/大川俊道(1)(3)(7)、いとう斗士八(2)(8)、安井国穂(4)
石原武龍(5)(6)、岡芳郎(9)、渡邊睦月(10)
演出/村田忍
プロデュース/橋本孝、遠藤正人

http://www.tbs.co.jp/hancho/


第10話 余命3カ月の容疑者
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須田は健康診断で要治療の通知をもらう。
中性脂肪とコレステロール値が通常の二倍との事。このまま
だと10年後には亡くなってしまうかもしれないと脅され、須田
自身は刑事として現場で死にたいことを告げる。するとみんな
からダイエットの必要性を唱えられ、ハンチョウ・安積は部下
たちに、飲みに行っても須田には何も喰わせるなと命令を下す。

そんな中、澄川秀雄(28歳)が包丁で刺されて死亡する。
村雨は容疑者の名前を聞いて一人思い出すモノがあった。
被害者は10年前に幼女殺害で逮捕されていたのである。犯行
当時澄川は未成年者だったので人権擁護の観点から、名前や
顔が公になる事はなかった。
鑑識の石倉によると、死亡推定時刻は午前0時から1時の間。
所持金は15万円が財布の中に入っていた為に物盗りの線は
薄いと考えられる。しかも刺し傷を見ると2度刺されている
事が判明する。2カ所の刺し傷が致命傷になっているという。

包丁に付着する指紋を調べるが前科者には該当がなかった。
澄川について調べると2週間前に出所していることが分かる。
出所2週間でどうやって金を手に入れたのか?

そんな中、村雨が聞き込みの末、現場近くのコンビニで0時
半過ぎに救急車で運ばれた人物が居るという。運ばれたのは
園田忍で、10年前殺害された園田百合(当時7歳)の兄である
事が判明する。

早速神南病院に入院する彼を訪ねる。
すると忍も刑事が来ることを予期しており、結構早かったで
すねと告げる。そしてあっさりと澄川殺しを自供し始めたの
である。
10年前に妹を殺害された為に殺害されたという。
犯人は18歳というだけで人権を守られながら逮捕され、たった
10年の服役で出所された事に憤りを感じていた。人一人の命
は人一人の命でしか釣り合わないという忍は、だから殺害した
のだと言う。自分は末期のすい臓ガンであり、余命3ヶ月で
有ることも告げ、やり残した事をしたまでだと語る。
自分は法律で裁かれる前に死ぬ事。これは完全な復讐であり
完全犯罪だという。殺害した証拠として、殺害当時に着ていた
服を見せる。ここには被害者の血痕がついているので調べる
と良いという。
そんな忍に対して、安積はどうやって彼の出所を知ったのかと
尋ねると、弁護士の野崎が教えてくれたのだという。なんと
野崎は10年前に被告・澄川の事を弁護していた弁護士である
事も判明する。

村雨達は野崎の事務所を訪ねると、彼は犯罪被害者の会の
顧問をしていた。裁判の後、園田里恵が入会してきた事を
聞く。

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包丁で刺されて発見された被害者は、10年前に幼女殺害事件
で捕まった澄川だと分かる。現場近くに倒れて病院に運ばれ
たとする人物は、澄川によって10年前に妹を殺害された兄
だと判明。すぐに病院に行き自供も取り付けるが・・・

人を殺害する殺人と犯罪者の年齢の関係、そして法律とは正当
に罪を犯したモノを裁けるものなのかという事を、今一度
視聴者にも問いかける様な話だった。

ドラマとしては忍が犯行を自供する中で、彼が母親の事を
庇って居るであろう事はすぐに想定できる。しかしその
先にある展開はなかなか思いつかないもので、結果として
サプライズとして演出された。

"ああいえば上祐"なんて言葉がかつてサリン事件の際に流行った
けれど、今回の容疑者である忍には、安積の唱える説得を
悉くはじき飛ばすだけの考えと信念、そして遺族としての
気持ちが乗り移っていたと思う。

必死に説得する安積に対して、人を殺害された遺族の気持ち
など分かる筈もないと告げる忍。それを言った時点で一連の
討論は終了って感じもするのだが、その辺は弁の立つ安積
らしさがにじみ出ていた。

遺族の前で澄川はきちんと刑を全うし罪を償ったとする安積
の台詞が今回、目の前で起きている現実に対して、実に空しさ
を覚えるものであった事は言うまでもない。

法とは生きていく人のために有るモノで、死んでいくモノには
関係ないとする忍の言葉にも何処か一理あるなと思うところも
有ったし、以前より問題になっている少年法とは、被害者の為
にあるのか、加害者の為にあるのかという問いかけには、
なかなか応える事の出来ない複雑なものがあったと思う。

ドラマとして上手くできていたのは、そんな忍の性格・人間性
というものを上手くすくい取っていく展開であること。
忍の言葉や態度だけで見ると法を無視した残忍で身勝手なもの
であると解釈も出来るが、そんな言葉とは裏腹に、病院での
態度は彼の潔白性を表すのに十分なモノがある。
涼子が、人は死を受け入れると優しくなれるものだという
そんな言葉も、上手く彼が犯人であると断定させないだけの
効力は存在していたかな。

しかし安積の態度には多少なりとも矛盾した行動が見て取れる。
彼自身法というモノを遵守するのであれば、逮捕状の請求を
遅らせる事などあり得ないもの。それだけ法に対する解釈、
白黒ハッキリと出来るモノではないという事なのかな。

今回、忍役を演じた中丸雄一くん。
以前見たドラマではそれほどの印象は無かったけど、今回の
ドラマでの彼を見て、KAT-TUNの中で役者として一番可能性を
感じるものが有った。


安積剛志 …… 佐々木蔵之介 (刑事課強行犯係・係長)
村雨秋彦 …… 中村俊介 (刑事課)
須田三郎 …… 塚地武雅 (刑事課)
水野真帆 …… 黒谷友香 (刑事課)
黒木和也 …… 賀集利樹 (刑事課)
桜井太一郎 …… 山口翔悟 (刑事課)
速水直樹 …… 細川茂樹 (交通課・係長)
金子禄朗 …… 田山涼成 (刑事課長)

安積涼子 …… 渋谷飛鳥 (看護師)
山口友紀子 …… 安めぐみ (東報新聞記者)
石倉晴夫 …… 唐十郎 (鑑識課)
天野 …… 稲荷卓央 (鑑識課)

園田忍 …… 中丸雄一
野崎 …… 伊藤正之 (弁護士)
園田里江 …… 真行寺君枝
澄川秀雄 …… 有山尚宏

畠山紬、有山尚宏、小野了、黒田浩二、渡辺魁士、宮野ここね


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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