君たちに明日はない
(NHK/2010年1月期・土21)

脚本:宅間孝行
演出:岡田健
音楽:松本晃彦
原作:垣根涼介

http://www.nhk.or.jp/dodra/kimiasu/


第4話 旧友〜絶対辞めろ!合併大銀行左遷人事に怒りの宣告

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村上は偶然街中で出会った平山によって胸ぐらを掴まれる。
人のことを騙して絶対に許さないという。警察署に連れて行か
れ事情を聞かれることに。村上は告訴はしないという。刑事も
平山の事情を察し同情すべき所は有るようだという。
平山はリストラ以来妻とも離婚し再就職に於いても難航してい
た。その事を陽子に語ると、彼女もまた辞表を出したという。
一度会社への不信を感じるとなかなかぬぐいきれるものでは
無いという。しかし平山の現状を見たら恐くなったという彼女。
この事は特別なものではなく一つの現実だと告げる。

上司の高橋から今度の仕事の事を話される。
今度は念願のクライアントであるメガバンクのわかば銀行から
の依頼。帝都銀行とあかつき銀行が合併して今のわかば銀行が
誕生したという。3万人に渡る行員の中から、合併であぶれた人
たちが流れ着く為替電信部がその対象だとの事。
しかし村上はこれだけの企業ならば自分の所でリストラできる
のではないかという。すると合併した事で派閥争いが激しいと
の事だった。村上は居酒屋で出来るバンカーを見極めて貰う。
そんな出来る人材をリストラにするという村上。

池田昌男を面接することになる。あかつき出身というだけで
冷や飯を食っていた。

その頃陽子は石綿に辞めたことを報告しに行く。来週から就職
活動して、自分を活かせる環境で仕事出来る場所を探すと告げ
る。

村上は陽子とエスニック料理を食べに行く。再就職の件で協力
出来ることが有ればするという村上。首切りの会社が再就職まで
斡旋したら面白いわねという陽子。
村上は昔の彼女の話をして陽子の反応を確かめようとする。
その上で自分と付き合うよう告げるが、陽子は村上は仕事の話
をするときは格好良いのに、口説いている時の彼は薄っぺらい
事を指摘する。

5年前、前の会社からリストラされて再就職先を探していた頃
を思い出す村上。順子は自分の働く店"Mignon"の商品について
彼に尋ねる。ウチの商品はリサイクルもので最初の持ち主から
はリストラされたもの。手を掛けて変身させれば新品と遜色無い
ものに仕上がるという。リストラ会社に就職しようとしている
彼を元気づけるためにかけた言葉だった。村上は、仕事について
もしも今度の会社を順子が嫌ならば辞めるという。その上で
付き合いたい旨を語るが、彼女は年齢を理由に素直にその気持ち
を受け入れられずにいた。

池田は彼女の彰子に指輪を渡してプロポーズする。
とても嬉しいという返事を受けるが、今はまだダメだという。
彼に今の仕事に納得しているか問い、納得している人でないと
ずっとやってはいけない事を示唆する。それを聞いて池田は
本当にやりたい仕事が出来るまで頑張ることを宣言する。
その上で池田はエリート出世コースの本社の企業調査部に配属
されるが、上司とのトラブルで左遷されてしまうのだった。
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今回対象となるのは、能力は高いが人間関係に於いてトラブル
が有り左遷されてしまった男性。そんな男性の事をどのように
調理し生まれ返すことが出来るのか。

村上自身がリストラ請負会社に対して懐疑的な視線を持つ事や
過去に彼自身もリストラを受け、そのリストラされる側の気持
ちを知っている上で今の職業に立っているという事で、随分と
物語に厚みが出た話だった。

過去のシーンの挿入はピンポイントで描かれ、彼がどうすべき
なのか迷っている際に、彼女によって後押しされた事が描かれ
とてもよく出来ているし、今回は対象者である池田自身にも
不遇を極める職場に於いて、それに固執しなければならない事情
なども上手く描かれ、複雑な葛藤を生んでいる。

言葉の持つ重みというのが相変わらずドラマに於いて効力を発揮
し、その人の人生を左右するほどのものとして描かれている所
が実に良く出来ている。

彰子にしてみれば、当然人生を任せるべき相手に求めるものを
言葉として表しただけなのに、その言葉によって前進できずに
いる昌男の気持ちが上手く描かれている。
家庭・家族を背負うという重圧感と自分のやりたい事の本質との
間で葛藤する男性陣の苦悩と、女性の求めるもののぶつかり合い
は、どちらもリアルなものがあり、何処にでも有る人生の問題
点である。

今回の池田に関してはリスクと同時に逃げ道が用意されているし、
現実的には逃げ道など用意されていない事が殆どで、そういう
意味では平山の事例は上手くその差を表しているものだと思う。

村上が仕事に飲め込むほどに、冷徹さが要求される仕事に
感情を持ち込んでしまう所など、人間としては避けられないもの
で、この手の感情論は新人の医療現場などではよく対峙される
べき要素だと思う。

ただ今回陽子が言った言葉が的を射ていて良かった。
村上は口説いている時は薄っぺらい男であること。
順子と全く同様のアプローチの仕方で、年上の女性を見ている
所など確かに村上の愛し方に何処か薄っぺらいものを感じるのは
確かだ。

ようやく山下の存在感も描かれた。
今回はある意味影の主役だったかも知れないね。

村上真介 …… 坂口憲二 (33歳・日本ヒューマンリアクト)
芹沢陽子 …… 田中美佐子 (46歳・建材メーカー"森松ハウス")
芹沢泰子 …… 須藤理彩 (ミュージシャン、陽子の妹)
山下隆志 …… 北村有起哉 (不動産投資家)
川田美代子 …… 吉田桂子 (22歳・真介のアシスタント)
順子 …… 麻生祐未 (2年前真介の彼女だった。失踪)
高橋栄一郎 …… 堺正章 (日本ヒューマンリアクト代表取締り)
平山和明 …… 村田雄浩 (森松ハウス、営業推進部課長)

池田昌男 …… 青木崇高 (メガバンク・わかば銀行・為替電信部)
池田彰子 …… 遠藤久美子 (昌男の妻、娘ははるな)
刑事 …… 野元学二
警察官 …… 吉見幸洋
調査部課長 …… 中根徹
調査部部長 …… 永田耕一
電信部部長 …… 並樹史朗
ラーメン店 …… 福井博章

佐久間哲、ミョンジュ、高橋玄太

山村真也、六本木康弘、河野仁美


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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