モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑因の物語
(2010年10月期テレ東・月22時枠)

脚本 - 羽原大介(1)(2)、旺季志ずか(3)
音楽 - 渡辺俊幸
チーフプロデューサー - 岡部紳二
プロデューサー - 中川順平・森田昇、黒沢淳
監督 - 佐々木章光、古厩智之、村上牧人、山内宗信

http://www.tv-tokyo.co.jp/moriasa/


第3話 死刑囚へ贈る花
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直樹が勤め始めた東京西拘置所は、まるで閉ざされた森の奥の
ようだった。直樹自身が方向を見失いさまよい始めていると
感じる。

直樹は先日刑を執行された星山克博の房を整理する。
昨日までここに居た人間が今日は何処にも居ないこと。それも
人間の手で世界から消した事に違和感を覚えていた。

世古は今日も神に祈り、まだ死ななくても良いんだよね?と
直樹に尋ねる。
深堀圭造の房の前を通りかかると、直樹は彼から人殺しだと
言われる。死にたくないと叫んでいた死刑囚・星山を刑務官
が無理矢理連れて行き殺したのだという。今でも彼の悲鳴が
耳にこびりついて離れないという彼は、突然歌を歌い始める。
房の囚人はみなそれに共感するように歌い始める。直樹は
それを止めようとするが全く収まる気配がない。若林が来て
なんとか囚人の行動を止める。今日のような日は些細なことで
も刺激になるものだと直樹に告げる。

そんな中、囚人の一人・
笹野武は他の死刑囚とは違っていた。
彼は集団で息子をいじめて自殺に追い込んだ中学生3人を殺害
したという。9年間命日に生ける花瓶を磨くのだという。

東京西拘置所の外では渡瀬満を返せと市民たちが騒ぐ中、
平成の仇討ち殺人の審理が開始されようとしていた。

平成21年12月15日、大田区の路上で自分の両親を殺害した
田尻勝男を待ち伏せして殺害したこと。その際に彼が抱いて
いた彼の娘・
前園有歌(11歳)も同時に殺害した事を検事が起訴状
を読み上げる。裁判官は事実と違うところはあるか?と被告人
である渡瀬満に尋ねると、田尻の殺害に関しては認めるが、
有歌殺害に関しては認めないという。彼が有歌を抱いている
のに気がつかなかったという。被告側弁護士は・
村雨だった。

あの日、田尻は妻の実家である
前園徳子(66歳)の元を訪れ、
子供をもらっていくとして大きな黒のコートに包まれてもち
去ったという。

裁判所から出てくる村雨に対して、麻美はマイクを向ける。
村雨が弁護を引き受けたのは、渡瀬に対する罪滅ぼしのため
なのか?というもの。11年前に田尻が渡瀬の両親を殺害した際に
村雨は被告側の弁護士として、極刑ではなく懲役刑を得ていた
のである。彼を救うことが私の使命だという。

刑務官たちもこの一件について話し合っていた。
死刑と有期刑ではかなりの開きがあるという。徳子がマスコミ
の前で、渡瀬に同情的なコメントとも取れる発言をしたこと。
田尻のような男は殺されて当然だとした事で、世間も同情的に
捉えていた。そんな最中で、突然笹野が死刑判決に対して、
再審請求を求め出す。再審請求中には死刑の執行が無いという
事を知って狙ったのか?という。
里中刑務官は、笹野の房に行くと彼が大事そうに磨いていた
花瓶を取り上げて壊してしまう。それを止めた直樹は、別の
花瓶を探しに行く。
加奈は直樹に笹野が再審を要求したのか?と問うと、仇をとった
事で話題になった渡瀬と同じだと告げる。

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仇討ち殺人について、直樹は囚人たちに感情移入するあまり、
死刑判決に対する違和感を覚え始める。果たして単純に死刑
という結論をもって罪を償わせるという事に繋がるのか。

今回、有る意味タイムリーな事件が世の中で審理されている。
「耳かき店員殺人事件」に於いて、2人の人間を殺害した犯人
に対して、裁判員はどんな判決を示すのか。

結果として2人を殺害したにもかかわらず、市民の判決は
死刑を回避する無期懲役刑を導き出した。実はこのドラマの中の
渡瀬満も2人の人間を殺したことになっており、しかも一人は
過失致死が該当するのではないか?という点や、仇討ち殺人と
いう性格上、耳かき店員殺人事件よりは遙かに、心情的には
死刑回避に向かうべき案件である。そんな彼が何故死刑になって
しまうのかが、今後のドラマとしての興味深い点なのかも知れ
ない。

死刑にしなければならない理由としては、ドラマの中では
恨みの連鎖を絶つためのもので有ったり、仇討ち殺人が
情状酌量の余地があるとされるとなると、類似する事件が有る
意味免罪符を与えたとされる悪例となりうるというリスク性が
あることを説いたものだった。

それでも心情的にはやはり笹野武に同情的な視線で見ている
自分が居るし、被害者の苦しみという点で、笹野といじめっ子
の両親に共通性を見いだしていたけど、やはり悪いのはいじめ
っ子側だと感じてしまう。

死刑に関しては前例を考慮しすぎず、その都度判断すべきもので
有ると感じるし、犯行に及ぶ理由についても、人それぞれの
ドラマが存在しているなと思う。

今回はこれまで以上に考えさせるべき要素が沢山存在していた。
死刑執行を行う刑務官もまた人殺しだと告げる、深堀圭造の
セリフは、死刑制度に対して今一度考えるのに値する様な
インパクトの有るシーンだった。


及川直樹 …… 伊藤淳史 (東京西拘置所、新人刑務官)
渡瀬満 …… ARATA (死刑囚)
沢崎麻美 …… 香椎由宇 (直樹の恋人、東陽新聞記者)
吉岡小春 …… 谷村美月 (犯罪被害者、口がきけない)
望月加奈 …… 木南晴夏 (直樹の同僚、好意を持つ)
藤間貴子 …… 相築あきこ (パパゲーナのママ)
里中和明 …… 戸田昌宏 (刑務官)
後藤了 …… 前川泰之 (刑務官)
谷崎俊幸 …… ベンガル (刑務官)
若林勇三 …… 塩見三省 (刑務官)
星山克博 …… 大倉孝二 (死刑囚)
世古利一 …… 温水洋一 (死刑囚)
深堀圭造 …… 柄本明 (死刑囚)
石峰明 …… 六平直政 (死刑囚)
香西忠伸 …… 中村獅童 (死刑囚、少年3人をリンチ殺人)
笹野武 …… 平田満 (死刑囚)
赤石英一郎 …… 石橋凌 (死刑囚)
及川正道 …… 大杉漣 (直樹の父、元拘置所所長)
及川佐和子 …… 市毛良枝 (直樹の母)


田尻勝男 …… 斎藤歩 (渡瀬の両親を殺害)
鈴木刑務官 …… 須田邦裕
よしみ …… 濱田マリ (友也の母)
浩二 …… おかやまはじめ (友也の父)
校長 …… 須永慶
勇気 …… 寺坂尚呂己 (いじめられて自殺)
前園徳子 …… 今井和子 (田尻勝男の妻の母)
前園有歌 …… 内村つぐみ (田尻の娘)

村松利史、谷川昭一郎、植木夏十、須黒清連、ト字たかお
野元学二、高川裕也、

三島ゆたか、浦島三太郎、中平良夫、池口十兵衛、岡田卓也
磯石真吾、サワー沢口、斎藤勉、椿鮒子、宮咲久美子
内藤トモヤ、長谷川遼、山下征彦、泉大智、佐藤匠
山賀教弘、小川真育、大石悠馬、沖田了


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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