モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑因の物語
(2010年10月期テレ東・月22時枠)

脚本 - 羽原大介(1)(2)(4)、旺季志ずか(3)(5)
音楽 - 渡辺俊幸
チーフプロデューサー - 岡部紳二
プロデューサー - 中川順平・森田昇、黒沢淳
監督 - 佐々木章光、古厩智之、村上牧人、山内宗信

http://www.tv-tokyo.co.jp/moriasa/


第5話 極刑反対の遺族!?
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東京都町田市の都立・栗林中学校の野球部の生徒8人
(中村拓、高野肇、菅田尚人、福田将吾、近藤崇生、中西聡、
尾沢和孝、大谷彰宏)
を焼死させて死刑判決が出た迫仁志。
そんな彼に獄中結婚を求めた
西田夕子。自分の犯した罪への
贖罪の為に夕子が決断した物だった。
満宛に女の子・
吉岡小春は手紙を持ってくる中、それを刑務官
の直樹に手渡している所に、少年・
福田真也がやってくる。
そして小春を見て、兄を殺した男と結婚をしている夕子だと
勘違いした真也は小春めがけてナイフを突き刺そうとするが、
それを止めた直樹の腹部に突き刺さってしまう。

直樹は病院に入院することになったが傷は浅く、命に別状は
無かった。真也の両親である
福田健吾美紗子夫婦は直樹の
前に来ると、息子が大変なことをしたと土下座し、不祥事に
関して内密にして欲しいと頼む。公にすることだけは勘弁して
欲しいという健吾は直樹に示談金とばかりに封筒に入れた金を
手渡す。

そんな中病室には麻美がやってくる。怪我は大したことは無か
ったと告げると、心臓が止まるかと思ったとして麻美は直樹に
寄り添う。そんな彼女の寄り添う体温を感じ、生を実感する
直樹。麻美に仕事の電話が入り、また現場に戻ろうとすると
そこに東京西拘置所で一緒に働いている加奈も見舞いに来る。
直樹は麻美と加奈にそれぞれどんな人物なのか話す。
直樹はすぐに退院して仕事に戻る事を告げる。

その頃、死刑房の深掘は満に対してどうしてわざと死刑に
しようとしたのか尋ねる。そして新人・直樹が刺されたこと。
夕子を庇って刺されたことを告げる。

退院する直樹は、真也の実家へ足を運ぶ。トンカツ店を営む
両親。彼は入り口の所で一人佇んでいた。父・健吾は常連客の
市川に対して、息子の事を話し合う。その中で兄の将吾は
殺されたのではなく交通事故で亡くなった事を口にする。

直樹は健吾の前に行くと、手渡された金入の封筒を返す。
決して公にはしないという直樹。

翌日東京西拘置所で直樹は若林から、福田家は変わっている事
を告げる。被害者遺族の会に入っていないこと。他の被害者
家族は国に賠償を求めたり、風化させないように講演をして
いるが、彼らはそんな活動を一切していないのだという。
直樹は今回の一件で怖くなったと口にする。それは刺される恐怖
というよりも、命と向き合っているのは死刑囚だけでなく、その
周りでかかわっている人もまた同様に向き合っているとし、
そんな大それた場所に自分のような人物が居ても良いのかと
呟くのだった。



親子でキャッチボールする構図
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迫仁志によって殺された被害者家族の一人・福田家は、過去を
払拭するためにも腫れ物を触らないように生活してきた。
しかしそんな態度が尊敬する兄を失った次男・真也の心を蝕み
ついには噴火してしまう。

全く反省していない死刑囚にどうすると反省を促すことが出来
るのかという点で、ドラマとしては興味深いものが有るし、
あれこれ模索し、ついには被害者家族が死刑囚に謝罪するとい
う、大胆な発想の展開を用意した感じがする。

人々の感情は容易に制御できるはずもなく、無理にそれを抑えた
が為に事件・事故を起こしてしまうという不幸が描かれた。
現在の中国で起こっている中国政府に依る国民感情の封じ込め
政策を見ても、必ず歪な形で社会に跳ね返ってくるものが有る
だろうしね。

人の命を扱う事で徐々にその重みに耐えられなくなるという
直樹と若林の生真面目さがドラマとして複雑な立場、葛藤を
物語っている。

死刑囚には家族しか会えないと言われてきたが、そこには法的
根拠はなく、所長の権限で逢える辺りは、意外といえば意外。

直樹を巡って、麻美と加奈の静かなる火花が見える辺りも
面白いし、麻美や加奈に心配される直樹という男性の中に、
嫉妬心を抱くと共に、世の中顔ではなく心だという所に説得力
が有る話だった。

それにしても大杉漣さんがクレジットされているのに、こんな
に彼が目立たないドラマというのも珍しい。
なべおさみさんがが刑務所長役で出演。オスカープロモーション
に所属して以来、俳優の道を模索しているようだ。僅かなセリフ
のやりとりだったが、違和感は全く無かった。


及川直樹 …… 伊藤淳史 (東京西拘置所、新人刑務官)
渡瀬満 …… ARATA (死刑囚)
沢崎麻美 …… 香椎由宇 (直樹の恋人、東陽新聞記者)
吉岡小春 …… 谷村美月 (犯罪被害者、口がきけない)
望月加奈 …… 木南晴夏 (直樹の同僚、好意を持つ)
藤間貴子 …… 相築あきこ (パパゲーナのママ)
里中和明 …… 戸田昌宏 (刑務官)
後藤了 …… 前川泰之 (刑務官)
谷崎俊幸 …… ベンガル (刑務官)
若林勇三 …… 塩見三省 (刑務官)
星山克博 …… 大倉孝二 (死刑囚)
世古利一 …… 温水洋一 (死刑囚)
深堀圭造 …… 柄本明 (死刑囚)
石峰明 …… 六平直政 (死刑囚)
香西忠伸 …… 中村獅童 (死刑囚、少年3人をリンチ殺人)
笹野武 …… 平田満 (死刑囚)
赤石英一郎 …… 石橋凌 (死刑囚)
及川正道 …… 大杉漣 (直樹の父、元拘置所所長)
及川佐和子 …… 市毛良枝 (直樹の母)

田尻勝男 …… 斎藤歩 (渡瀬の両親を殺害)
鈴木刑務官 …… 須田邦裕
前園有歌 …… 内村つぐみ (田尻の娘)
迫仁志 …… 津田寛治 (8人の少年を焼死させる)
西田夕子 …… 釈由美子 (自分の家の工場を放火)
楠見佳子 …… 根岸季衣 (児童養護施設「竹の花園」の園長)


福田健吾 …… 田口浩正 (父、トンカツ店。過去の事件を封印する)
福田美紗子 …… 岩橋道子 (母、密かに風呂場で涙する)
福田真也 …… 今井悠貴 (次男、長男を迫に殺される)
刑務所・所長 …… なべおさみ (死刑囚を被害者遺族に合わせる許可を出す)

潟山セイキ、三島ゆたか、浦島三太朗、岡田卓也、池口十兵衛
山下征彦、吉浦正一、内村つぐみ、若松拓来 


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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