モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑因の物語
(2010年10月期テレ東・月22時枠)

脚本 - 羽原大介(1)(2)(4)(6)、旺季志ずか(3)(5)
音楽 - 渡辺俊幸
チーフプロデューサー - 岡部紳二
プロデューサー - 中川順平・森田昇、黒沢淳
監督 - 佐々木章光、古厩智之、村上牧人、山内宗信

http://www.tv-tokyo.co.jp/moriasa/


第6話 冤罪33年の白髪男
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直樹は小春と会ってメッセージを託された事を死刑囚・満に告
げる。彼女はショックで声が出なくなったこと。何故そんな
彼女にあってあげないのかとすると、殺人犯の妹が幸せになれる
と思うのかという。もしもまた妹を見かけたらこれを渡してく
れないかとし、壊れた時計を直樹に託す。

直樹は加奈に対して、兄妹について尋ねると加奈には5つ上の兄
が居るとするが、行方不明の兄が突然無人島で見つかったら
すぐに会いに行くか?と尋ねると、行かないという。とても口う
るさい兄だからと言うが、それは今の状況をそのまま置き換えた
だけだった。

そんな中、若林は直樹を呼び出すと、
赤石英一郎の部屋の整理
を手伝って欲しいという。無実の罪で33年間確定房にいた人物
でいよいよ明日、無罪判決が出るのだという。

英一郎は若林の姿を見るとご恩は忘れず人生を精一杯生きていく
という。直樹は自分が同じ立場ならば30年間も耐えられないとし
よく平常心で居られましたねという。しかし本当に平常心で
居られたと思うのか?と尋ねられ、首を吊られる夢で目覚め、
朝に刑務官の足音が聞こえれば怯える日々だった事を語る。

英一郎は小6の頃、パチンコ店を経営していた親が借金を背負った
まま失踪して、担任の東條松之助の家で育てられたという。
しかしそのまま居座るのは悪いと感じ、中学を卒業すると同時
に家を出るも、仕事が見つからずパチプロで生計を立てていた
という。その頃はやけになって盗みや喧嘩をしたが、ある時
バッグが落ちているのを見つけて拾うと、それが警察署長
の夫婦が結婚式の帰り道に殺された妻のものだと分かり、警察に
捕まった英一郎は、犯人に疑われたという。凶器の包丁に付着
していた血痕はB型のもので、英一郎と同じ。彼は腕に切り傷
が有り、それはゴミ箱でガラスの破片で切った事を告げ、
目撃者もいるとするが、不運にも目撃者が見つからず、捕まった
のである。一度捕まれば後は強引な取り調べによって、ついに
自供へと追い込まれてしまった。再審の請求もなかなか通らず
4度目の再審請求が却下された時には、諦めていたという。
しかし逮捕から28年経ってようやく当時の目撃者が現れたことで
再審請求が認められ、現代の科学捜査であるDNA検査によって
無実が証明されたのだった。

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確定房に33年間服役した死刑囚の一人・赤石英一郎は、冤罪に
よって無罪になる。毎日死刑に怯えながら暮らしていた事実
とは裏腹に、生活スペースの中の壁には"死刑囚になって良かっ
た"との落書きが書かれていた。果たして皮肉として書いたもの
なのか、それとも他の意図が存在するのか。

正直なところ石橋凌さんの演技は上手いけれど、アプローチの
仕方としては相当間違っている部分がある。食事が喉を通さな
いとするセリフの裏に丸々と肉付いた俳優を前にして説得力に
欠けている。逆にストレスで太ったとも考えられなくも無いが
疲れた表情に見えないのは、やはり肉付きだと思う。

ドラマとしては死刑囚の物語に於ける新たなパターンとして
描かれているために面白さ・新鮮さは有った。

特にあの落書きの真相は何処にあるのか興味深いものがあるし
国と個人の対決に於いて、勝利することの困難な状況が描かれ
警察としての体制を守るが為に一人の人生が犠牲になったとする
辺りは、ちょっぴり空しさを覚えるものだった。
ただどんな人物でも一つ間違えば33年間の服役の可能性が有る
という訳ではなく、やっぱり普段の素行の問題に繋がっていく
のだろうなと思う。

真実を曲げることは誰にも出来ないとする辺りで、渡瀬満との
共通性を見出す所は上手い方法だが、今回赤石と満を絡ませる
辺りはちょっと強引なもので、赤石がわざわざ満の事など
気に掛けるものだろうかという展開だった。

そして深堀圭造が最後に言った言葉も気になるところ。
人をそんなに簡単に信用しても良いのかどうか。
現代人はとかく警戒心が強すぎて、他人との距離感を取りすぎる
所があるけど、まだ見ぬ囚人に対して、心の交流を求めていく
大胆な切り口は興味深いものがあった。

死刑囚という殺伐としたものの中で、人の繋がりがとても暖かく
浮かび上がってくるドラマだと思う。


及川直樹 …… 伊藤淳史 (東京西拘置所、新人刑務官)
渡瀬満 …… ARATA (死刑囚)
沢崎麻美 …… 香椎由宇 (直樹の恋人、東陽新聞記者)
吉岡小春 …… 谷村美月 (犯罪被害者、口がきけない)
望月加奈 …… 木南晴夏 (直樹の同僚、好意を持つ)
藤間貴子 …… 相築あきこ (パパゲーナのママ)
里中和明 …… 戸田昌宏 (刑務官)
後藤了 …… 前川泰之 (刑務官)
谷崎俊幸 …… ベンガル (刑務官)
若林勇三 …… 塩見三省 (刑務官)
星山克博 …… 大倉孝二 (死刑囚)
世古利一 …… 温水洋一 (死刑囚)
深堀圭造 …… 柄本明 (死刑囚)
石峰明 …… 六平直政 (死刑囚)
香西忠伸 …… 中村獅童 (死刑囚、少年3人をリンチ殺人)
笹野武 …… 平田満 (死刑囚)
赤石英一郎 …… 石橋凌 (死刑囚、冤罪)
及川正道 …… 大杉漣 (直樹の父、元拘置所所長)
及川佐和子 …… 市毛良枝 (直樹の母)


田尻勝男 …… 斎藤歩 (渡瀬の両親を殺害)
鈴木刑務官 …… 須田邦裕
前園有歌 …… 内村つぐみ (田尻の娘)
楠見佳子 …… 根岸季衣 (児童養護施設「竹の花園」の園長)

東條隆 …… 田中実 (小学の教師)
裁判長 …… 志賀廣太郎

清水昭博、 市原清彦、加門良、鳴海剛、中平良夫、三島ゆたか、白須慶子
浦島三太朗、ヤブキレン、長谷川遼、北藤遼、小西風優、内村つぐみ
黒瀬龍也、山下征彦、鈴木広海


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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