八日目の蝉
(2010年4月期・NHK火22時枠)

脚本/浅野妙子
演出/佐々木章光 藤尾隆
原作/角田光代
音楽/渡辺俊幸
制作統括/大加章雅 黒沢淳

http://www.nhk.or.jp/drama/semi/


第6話 奇跡〜母性という罪…この愛は許されますか
--------------------------------------------------------
希和子と薫は小豆島を出ようとしていた所、フェリー乗り場で
警察官によって捕まる。大声で希和子は何かを叫んでいた。

恵理菜は当時彼女が何を叫んでいたのか思い出せずにいた。
希和子と別れてからのことはハッキリと覚えていた。
本当の両親に引き渡されるが、恵理菜は母に抱かれた際に緊張
からか失禁してしまう。
それ以来クラスマスや家族旅行に連れて行かれたが、何処か
関係に溝がある。母親は私のことを怖がって居るみたいだと
恵理菜は千草に語る。
この子は本当に私が生んだ子なのか・・そんな顔をして見てい
たという。
ある日帰宅した恵理菜が、希和子譲りの方言を語ったときには
母親から殴られる。母親は怒り続け、父親は逃げ続ける家に
居心地の悪さを感じていた。
逃げようとして家を飛び出したこともあるが、目的の海は走って
も走っても見つからなかったという。
母親はそこでも親に心配をかけるなとして殴った。
うちに帰りたいという恵理菜に対して、家はここである事を
説得する。幼い頃に誘拐された事実を伝え、その女性を世界一
悪い女だと刷り込む。

恵理菜は帰宅すると、母に妊娠した事実を伝える。産むつもり
は無いことを語り、不倫の子を堕ろすなんてあの人と同じだ
と告げる。親子でもないのになんで似てしまうのかと言うと、
恵津子は激怒し、どうしてそこまでして母さんを苦しめるのと
告げる。

希和子は関東北刑務所の刑期を終え出所する。
獄中で書いた手紙を届けに秋山家を訪れると、恵理菜のちょうど
13歳の誕生日で、家ではパーティーを行っていた。そんな姿を
見て手紙を出すのを辞める希和子。

恵理菜と千草はフェリーに乗って、かつて過ごした小豆島を
目指す。千草は恵理菜に今頃、希和子は何処にいると思うかと
尋ねる。千草は出所後暫くは東京に居たらしい事を告げる。
良い思い出は小豆島だけだろうが、平気な顔して島には戻れない
だろうと告げる。話しを聞いていく内に恵理菜は千草に、やっ
ぱり本には書かないで欲しいと頼む。どうせ面白がっている
だけだと告げると、千草は自分にとってもこれは自分の歩んで
きた過去である事を告げ、過去を憎んでも仕方がないことを
告げる。

--------------------------------------------------------

いよいよ逃亡生活が終わり希和子は掴まる。
しかし幼い時を一緒に過ごした希和子に母性を求め、恵津子
たちとの生活に違和感を感じる日々の恵理菜。
同じ過去を知る千草と共に、欠けていた過去のピースをハメに
いく。

よくよく考えると微妙な心情ばかりが駆けめぐるドラマといった
感じ。
このドラマの最も悪人は、アックマーこと秋山丈博だし、
一人の男性の安易な行動が二人の母親と一人の娘の人生を
台無しにしかける悲しい物語ではある。

これまで見せられた希和子と薫の物語によって、本当の親子は
恵津子だと分かりつつも、希和子との関係を成就してもらいたい
心情が芽生えているのも確かだ。

血の繋がりが愛情を示す物ではないという事が分かる内容だし、
皮肉なことに現状の恵理菜にとって、希和子との過去の方が
よく見えてしまう部分もあって、全ての答えはそこにあるのでは
無いかと思ってしまう。

そんな論法によって、恵理菜自身も子供に対して、親の事情に
関係なく妊娠したからには子供には産まれる権利が存在すること。
そして何より自分も子供に素晴らしい世界があることを見せて
あげたい気持ちに誘導していることが、結末としては一定の
納得感を得ている。

最後に希和子が恵理菜に声を掛けてしまうシーンは蛇足じゃな
いかという気がするが、この辺は好みが分かれそうだね。

恵理菜が求めていた忘れていた過去の言葉。
希和子は離ればなれになる際に、何を叫んでいたのか。
"その子はまだ朝ご飯を食べていないの"。
この言葉の解釈を巡っては、とても深い物が有ると思う。
一見すればこんな言葉を求めるために迷走していたのかとも考え
られるし、希和子が子供のためを思っての言葉にも思える。
聞く人によっては色んな解釈の出来るセリフだろうね。

そして何より小豆島の中での変わったものと変わらないものの
違いが演出的に涙を誘う物があったし、口数の少ない篠原文治
の役割が予想以上に大きい物だったなと実感する内容だった。


野々宮希和子 …… 檀れい (OL、丈博と不倫)
秋山丈博 …… 津田寛治 (夫)
秋山恵津子 …… 板谷由夏 (妻)
薫=恵理菜 …… 北乃きい (秋山家の娘)

薫 …… 小林星蘭
薫(6ヶ月) …… 奥村夏帆
恵理菜(13歳) …… 勝沼美紅
満里奈(10歳) …… 丹羽絵里香
満里奈(2歳) …… いろは

沢田昌江 …… 吉行和子 (久美の母、沢田製麺)
篠原文治 …… 岸谷五朗 (猟師)
永井千草 …… 高橋真唯 (元マロン)
写真店 …… 藤村俊二

坂東正敏、櫻木誠、井上麻衣子
伊東由美子、足立麻美、牧村泉三郎、舩木壱輝、田中恵輔
寺岡知彦


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

inserted by FC2 system