クルマのふたり〜TOKYO DRIVE STORIES

脚本:龍樹
演出:松本創
プロデューサー:中山和記、伊賀宣子





第7話 お楽しみはこれからだ
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金次郎と銀次郎は5年前まで漫才コンビを組んで浅草で活動を
していた漫才師。しかし弟の銀次郎は、家族の為に漫才師を
辞めて事業を興し、ようやく軌道に乗り始めていた。
この日、金次郎がテレビ収録が有るとのことで銀次郎は車で
送っていく。テレビ局に着くまでの間に、金次郎は銀次郎に
今日披露するネタを彼に見せて評価を聞こうとする。
どのネタはオチが無いという銀次郎。しかも何処かで聞いた事
のあるネタだと感じていた。金次郎は弟になんとかネタのオチ
のアイディアを出してくれと頼むが、自分はもう引退した身だ
として断る。しかし金次郎は、今日だけはカンバックすると約束
しただろうと詰め寄る。
弟はそんな約束した覚えがないと告げるが、兄が何を考えている
のかよく分からないために、金次郎のマネージャーに電話しよう
とする。しかし金次郎は弟から携帯電話を取り上げると、突然
真っ二つに壊してしまう。取引先の連絡が全て入っているのに
なんてことをするのか!?と憤怒する銀次郎。しかし一体何を隠し
ているのか?と問い詰める。

銀次郎はそもそも約束をした覚えがなかった。
金次郎によるとスタジオに乗り込むので助けてくれると約束した
とするが、銀次郎はその言葉の意味をスタジオまで車の送迎を
するだけだと思っていた。しかし金次郎はコンビの再結成の
お願いだったという。
そんな中、金次郎の懐から電話が鳴る。金次郎は電話を持って
いなかったハズなのに何故持っているのかと問い詰める。
金次郎の生活費など全て銀次郎が出している事も有って、携帯
電話を持つ事など言語道断だとして持たせなかったのである。
これは俺のではなくアケミのものだとして、電話を見せると
確かにデコレートして有り、金次郎のものとするには無理が有っ
た。しかし甲斐性もない彼が女を作るなんてどういう事なんだ
と告げる。

金次郎はピン芸人になってから泣かず飛ばずの日々を過ごして
いた。銀次郎はいつまでこんなデタラメな生活を続けるのかと
告げる。

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二人は兄弟であり、そしてかつては漫才コンビを組んで居た
パートナーだった。弟の銀次郎は夢を諦め家族のために事業を
興し5年間で見事成功を収めるが、兄の金次郎は50歳を過ぎて
尚も夢にしがみついていた。そんな金次郎は、今日のステージ
がダメならば引退するとして、最後の勝負である事を告げる
が・・

これまでの展開とは趣向が変わり、話の流れ自体が漫才を行っ
ているような軽快さがある。しかし軽快なやりとり・雰囲気で
行われるからこそ、その裏で見えてくる現実感が、寂しさを
感じたり、意外さなんかを浮き上がらせて面白いドラマとして
成立している。

互いに兄弟のことを思った行動が目に付き、良いコンビだなと
思う。兄弟だからこそという感じがするし、兄と弟の立場が
逆転したような間柄で、兄が兄っぽく見えない所も、ドラマと
しては上手く機能している感じ。

芸人は宵越しの金は持たないとか、金が無い時の方が、飢餓感
も作用して売れるようなことをよく言われる一方、やっぱり
生活の心配とは切り離せない。
弟が成功を収めていることで、ある意味では兄は安牌の立場に
いるけど、そんな弟から今更50歳になって人生の方向転換を
迫られるというのも全く分からないでもないが、微妙なものが
存在するのは確かだ。

才能が無かったのは銀次郎ではなく、金次郎と組んでいたこと
だったとする辺り、兄にとっては辛い事実だろうし、それを
知りつつ拘ってきた兄の心境と弟の気持ちがなんとも複雑な
感じで、なかなか上手く出来ていたのでは無かろうか。

サンシャイン銀次郎 …… 長谷川朝晴 (弟、5年前にコンビ解消)
サンシャイン金次郎 …… 阿南健治 (兄、漫才師)

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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