泣くな、はらちゃん
(2013年1月期・日テレ・土曜21時枠)

脚本 - 岡田惠和
演出 - 菅原伸太郎、狩山俊輔
チーフプロデューサー - 大平太
プロデュース - 河野英裕、小泉守、萩原真紀

http://www.ntv.co.jp/harachan/





第10話 私の世界
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越前さんは自分の世界に幻滅し、はらちゃんたちの居る漫画
世界に身を投じていく。毎日歌って過ごす穏やかな生活に心が
落ち着いていく中で、現実社会では越前さんが居なくなった事
で百合子を始めとした事実を知るものたちがなんとかして
彼女を現実社会へと呼び戻そうとしていく。

人間は知恵をつけたからこそ生活に於いて良い面ばかりでなく、
悪い一面も同時に発展してしまった所が有るのかなと思わせる。
人間が作ったロボットが人間を殺害する為に動き出すという
映画や小説の素材は多い。
何も知らない純真無垢なはらちゃんが少しずつ知恵を付けて、
知識を蓄えていくのと同時に、悪い一面も身につけてしまうの
ではないかとする不安感がドラマとして興味深く描かれていた。
前回のはらちゃんが起こした暴力は、例え愛する人を守る為の
行為とはいえ、自分たちの世界感には無かった要素の一つ。
そんな純粋な人の心を曇らせていくことに、この世界で生きる
ものとして、改めてかしこまってしまう感じが、このドラマの
上手さでも有った。

しかし今回は自虐的になる越前さんのことを逆にはらちゃん
が嫌いだと発したり、現実の社会が素晴らしいものであると
いう事をはらちゃんから発することで、ちょっぴり安心させられ
ると共に、この世界を愛する為に必要な事は何かを端的に示して
くれたと思う。

大きな世界の中で一人の人間が居なくなっても誰も気がつかない
と発していたが、越前さんが居なくなったとする疑似体験を
通して、越前さんを求める人の存在なり、人間関係を改めて
知る機会とする辺りは上手い流れだったしね。

百合子さんが語る"常識"とは何かもまたドラマとしては
心に響くモノが有り、世界の常識と違うことを言う人を特異な
人だと決めつけることへの違和感を唱えている辺りは、現在
外交問題に揺れている近隣国なり身近に起きている他人との
関係を示唆していてなかなか興味深かったのかなと思う。

今いるこの世界だって誰かが書いた漫画の世界なのかも知れない。
6話の感想の中でも書いた事だけど、現実の世界の居酒屋での
光景はまるで漫画の世界と類似する部分が多く、それを意識
したような作りで有った事は明らかだった。
越前さんが名字しか明らかにされなかったので、最後には名前を
明らかにするような演出があるのかなと思っていたのだけど、やはり
漫画の世界の人との共有感を保つために下の名前を設定しなかった
のだろうか?

その気持ちを愛と言うんだ・・なんてセリフを見ると、
「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」by サンボマスターって感じ
だったけど、ドラマの中で歌われる二つの同じリズムの違う
歌詞の違いというのが、その社会を反映しているようで上手く
出来ていたな。

越前さんの現在を象徴するかのようにして、漫画の中の内容の
中にも殺伐としたセリフが消えて笑顔を取り戻していくという
のもベタだったけどとても良かったし、傘をそのまんま持ち帰って
しまったハラちゃんが雨に濡れている越前の前に現れて、
いつでも傍に居る的登場の仕方はあまりに格好良すぎたぞ。

大橋の息子さんネタとか思いっきり滑りまくっていたけど、
それもまた愛嬌のある流れとなったね。

漫画「泣くな、はらちゃん」の世界
はらちゃん …… 長瀬智也 (越前さんを好き)
ユキ姉 …… 奥貫薫 ("殺すよ"が口癖)
マキヒロ …… 賀来賢人 (清美と恋に落ちる)
あっくん …… 清水優 (犬が好き)
笑いおじさん …… 甲本雅裕 (名前が無いと落ち込む)

現実世界
越前さん …… 麻生久美子 (姉、漫画で現実逃避、"神様")
田中くん …… 丸山隆平 (ふはまる水産)
紺野清美 …… 忽那汐里 (ふはまる水産、"悪魔")
越前ひろし …… 菅田将暉 (弟)
長沼さん …… 稲川実代子 (ふはまる水産・ボス)
警官 …… 小松和重
玉田 …… 光石研 (ふはまる水産・工場長)
越前秀子 …… 白石加代子 (母)
矢口百合子 …… 薬師丸ひろ子 (ふはまる水産。パート長)

しのへけい子、よしのよしこ

渋谷謙人、大地泰仁、後藤健、武田聖真、山崎翔太

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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