とんび
(2013年1月期・TBS・日曜21時枠)

原作 - 重松清「とんび」(角川文庫刊)
脚本 - 森下佳子
音楽 - 羽毛田丈史
音楽プロデュース - 志田博英
プロデューサー - 石丸彰彦
主題歌 - 福山雅治「誕生日には真白な百合を」
演出 - 平川雄一朗、山室大輔、中前勇児

http://www.tbs.co.jp/TONBI/





第10話 終幕〜父が息子へ…30年の愛と命の物語が起こす奇跡の贈り物
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平成11(1999年)冬、ヤスは葛原家の孫を助けるために荷物の下敷
きになる。容体が心配されたが、大したケガはなかった。駆けつ
けた旭に今すぐ帰れと発するが、念のために再検査すると言われ
たヤスは言葉とは逆に気弱になり、早くも死を意識した発言を
行っていく。
そんな中、会社に戻った旭は上司・小林から東京で父親も一緒に
暮らす事は出来ないのか?と問われ、由美と相談すると彼女も
一緒に暮らすこと快諾。その裏で彼女は旭との子を身ごもっている
事を知る。しかし東京に出てくることさえ嫌がっている父親が
容易に同居するとは考えられず、誘導するような計画を立てなけ
ればならないとするが・・・そんな折り本社の萩本からヤスに
東京本社の研修センターの講師の仕事をしないかという話が
持ち上がりそれに便乗していくことになるが・・・

最後の90分は色んな要素が混在していてかなり濃密度のある内容
だった。

上手い形でヤスにはヤスの生活・人生があるという事を示したし、
自分自身の生活リズムを主張しつつ、親としての役割というものも
誇示することが出来て、良い感じのドラマに仕上がった。

故郷が心の拠り所である事はもちろんのこと、逃げ道としての
存在価値を示し、そこを守る事が親としての勤めだとすることで
子供が安心して暮らせるような心のゆとりを作ってあげるところ
は親心を感じるところ。

故郷を離れることが容易ではないことも分かるし、ケガや病気で
親であれ気を弱くしてしまう辺りもリアルな流れが有った。

東京に出て来たヤスが忙しく動き回る都会人の姿を見たり、
新人職員たちの態度を見ていく中で、東京での生活に於いても
ヤスがヤスとしての存在感を発揮出来るかと思わせるものが
有ったけど、交差点の真ん中で佇む姿を見ると、ヤスがヤスで
有る為の存在感が多勢の中に埋まり薄まってしまう気がしたし、
ヤスという人物を構成するには、やはり故郷の人々があってこそ
のものだろうなと感じさせる所へ繋がっている。

ドラマとして上手いのは、ヤスと旭の物語ではあるけれど、
周りの人たちの存在感も決して埋もれていないことだった。

葛原との別れ、リストラの流れがドラマにアクセントをもたらし
たし、血のつながりの問題に於いては、照雲と父とヤスの関係を
引き合いに出し、それを旭と健介と康介の問題に当てはめた。
また何と言ってもヤスとネエちゃんこと、たえ子との関係に於い
ても、姉弟以上のものを感じつつ、日本人らしく他人の幸せを
考える流れの中で、たえ子のヤスへの視線が故郷を離れるヤス
に対する視線の全てを物語っているつくりで上手く出来ていた。

放送延長なのにそれを感じさせず、一貫して最後までドラマに
興味を引きつけ続けられたという点でとても上手かったと思う。

比較的長いスパンで描かれたエピソード故に世代交代の寂しさ
も感じさせた。その中でも照雲の母親がいつのまにか遺影の中
に居たのが寂しいな。

市川安男 …… 内野聖陽 (父、とても家庭思い)
市川旭 …… 佐藤健 (徳田出版)
(3歳 - 五十嵐陽向、6歳 - 荒川槙、11歳 - 福崎那由他)
市川美佐子 …… 常盤貴子 (安男の妻、家族を求める)
坂本由美 …… 吹石一恵 (徳田出版)
六川進之介 …… 内野謙太 (徳田出版)
松本京 …… 本田翼 (徳田出版)
坂本健介 …… 黒澤宏貴 (由美の息子)

曽根崎幸恵 …… 加藤貴子 (美佐子のママ友。照雲の妻)
曽根崎照雲 …… 野村宏伸 (安男の親友、坊さん)
葛原鉄矢 …… 音尾琢真 (安男の後輩)
尾藤 …… ベンガル (カナエ水産・社長)
たえ子 …… 麻生祐未 (小料理「夕なぎ」)
曽根崎海雲 …… 柄本明 (薬師院・住職)
葛原の妻 …… 橋本真実
萩本 …… 高橋和也 (天ヶ崎通運・課長)
曽根崎頼子 …… 岩本多代 (海雲の妻)
山田春夫 …… 今村均 (安男の先輩社員)

小林 …… 長谷川朝晴 (徳田出版「City Beat」編集者)

荒川槙、浅野和之、六角慎司、藤間宇宙、伊藤正之、永堀剛敏
蒲生麻由、藤代太一、廣瀬雄一郎、上原拓馬、田中奏多

評価:★★★★★★★★☆☆ (8.0)

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