おやじの背中
(2014年7月期・TBS・日21時枠)

脚本 - 倉本聰
演出 - 石橋冠
ナレーション - 徳光和夫
脚本スタッフ - 中村千明
プロデュース - 八木康夫
音楽 - 兼松衆





第3話 なごり雪
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小泉金次郎(70歳)・金属加工会社イズキンのワンマン社長。
16歳で富山を出てきて東京で一代で会社を軌道に乗せた社長
である。イズキンの創立40周年行事を盛大に計画していたが、
息子の金一、武田、玲子たち、金次郎が提案していた式典の
計画には全て反対していた。堺田経産大臣も出席出来ず秘書が
代替で出席、歌手のイルカを呼ぼうとするもスケジュールが
悪かった。
例年この時期金次郎の機嫌は悪かった。しかしこの時期は受賞
のメダルの発注が多く、商売としては順調だった。しかし自分
はこれだけ勲章を作っているのに受勲の知らせは一向に届か
ないとして文句をいう。しかもこの工場の騒音によって
職業病とも言える耳の遠さで金次郎は不便を強いられていた。

金次郎は主治医の向田医師の元に診察に行く。
脳に異常はなく老化現象による難聴だとして、ドイツ製の補聴器
を付けることを進められる。しかし金次郎は一時間半も待たせた
挙げ句だれもが分かる老化現象だというのかとして、呆れる。

会社に戻ると加納から呼び出される。
40周年の記念に金次郎は妻に対して自主的に内助に対する
メダルを授与したいと考えていた。白綬がベストだとし、
國から与えられるメダルの中で白は使われていないからだとい
う。加納からの計らいでメダルを入れて一度箱を締めて蓋を
開けると金次郎と妻にとって思い出の「なごり雪のオルゴール
がなる様に工夫されていた。

金次郎重役会議に出ると40周年の記念式典に自分のアイディア
が一切ないことに不満を述べる。
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16歳に地元富山から出てきた金次郎は、金属加工業を興して
から40周年の記念を迎えることになる。70歳を迎えこれまでに
散々苦労して来た彼に対して、誰も誉めてもらえず、妻に
対しても苦労をかけ通しだったことも有って、金次郎は妻に
サプライズのメダルをプレゼントしようと考える。
そして自らの功績を祝うための金属加工業40周年記念のパーティー
だが、息子や娘婿など会社の役員たちは、金次郎の案を悉く
否定し、自分の意見などまるで反映させていない事を知る。
更に医師からは耳の老化現象を指摘されると、金次郎は周りが
誰も自分の気持ちを理解していない事を知り、ある時突然
彼は姿を消してしまう。果たして彼は何処に行ったのか。
友人で元刑事の大塚喜平こと"ウン平"に警察に知らせる前に
相談することになる。

面白かったようなつまらなかったようなやや微妙な感じにも
思えた。ただ出演陣は豪華だったし、脚本を担当したのは倉本聰
御大だったので、ネームバリューの高さがハードルを高くしすぎて
いたのかもしれない。

耳が聞こえづらい状況を上手く利用して、聞こえたり聞こえなか
ったりが有ったけど、聞こえていないと思っていた家族からの
陰口は聞こえていたというところなのかな。

自分の父も地方出身なので同郷の仲間をとても大切にする。
今住んでいる埼玉のことなどあんまり関心がなく、寧ろ生まれた
故郷で過ごした小学生から高校までのメンバーに対しては
特別な思いがあるようで、住んでいる期間は東京とか埼玉の方が
全然長いのに、そういうモンなんだよなと思わせるものが有る。

70歳という年齢を前にして、世代交代の必要性を通して、より
自分の存在が家族や周りに及ぼす影響力の低下に繋がり、切なさ
を覚える中で、自分の存在感を改めて知る為、そして自分を
ぞんざいに扱ったものたちへのちょっとしたイタズラっぽい
エピソードを通して、改めて周りとの距離感というのを図って
いたのだろう。

倉本聰さんのドラマ「風のガーデン」でも生前葬を通して
ジョークとも言えないような絶妙なイベントを用意して、改めて
本人の影響力を通して、自らの立場というものを認識して
いく内容が有ったけど、分かってくれるのはやはり同世代の人で
有り、そして同郷の人で有って、家族以上の繋がりが有ったり
するんだろうね。
唯一孫が金次郎に対してもっとも理解を示していたところを
見せると、おやじの背中を通して影響を与えたのは息子・娘を
通り越した孫に対するものが有ったのかも知れない。

西だ敏行さんの役者としての性格を知り尽くしたようなちょっと
した子狸っぽい小ずるさなんかを上手く引き出した作品って感じ
でしょうか。


小泉 金次郎 …… 西田敏行 (金属加工会社)
武田 エリ …… 木村多江 (長女)
小泉 金一 …… 光石研 (長男、専務)
竹中 玲子 …… 市川実日子 (秘書)
小泉 歌子 …… 中島ひろ子 (金一の妻)
武田 一平 …… 梨本謙次郎 (常務、エリの婿)
小泉 夕子 …… MEGUMI (次女)
小泉 しのぶ …… 広瀬すず (孫、金一の娘)
南 寛 …… 大杉漣 (映像作家)
向田 春彦 …… 田山涼成 (医者)
加納 茂吉 …… 織本順吉 (職員)
村田 修 …… 中西良太 (工場長)
小泉 秋子 …… 由紀さおり (金次朗の妻)
大塚 喜平 …… 小林稔侍 (元警視庁刑事"ウン平")

平尾仁、寺井文孝、柳下季里、下杉一元、浜田美優



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