おやじの背中
(2014年7月期・TBS・日21時枠)

脚本 - 鎌田敏夫
演出 - 山室大輔
ナレーション - 徳光和夫
脚本スタッフ - 中村千明
プロデュース - 八木康夫
音楽 - 兼松衆





第4話 母の秘密
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慎介は父の背中の最後の記憶は何だっただろうかと考えて居た。
多摩川の土手で父の背中に飛びついた時の記憶。母が死んだ後
には父は家を売ってしまい四国に行ってしまった。昔の仲間
と介護器具のレンタル業をおこなうと行って出て行ったきり。
母が死んでから一度も遭っていなかった。

慎介の妻・加奈子は義父・賢三から電話が有った事を告げ
一緒にお遍路にいかないかという誘いが有ったという。
他人の私に話した方が相談しやすいと思ったのでしょうと
いう加奈子は行くべきただと提言する。

父に逢うと四国の八十八カ所にすれば良かったのではないか
と告げるが、既に行った事を語る。三ヶ月歩いて走破したこと。
しかし一体オヤジに何が有ったのかと考える。
「宗教は民衆の意識を曇らす麻薬だと行っていた父」。
お遍路には、西国の三十三カ所、板東三十三カ所、秩父三十三
カ所があるという。合計九十九カ所。江戸の頃は一つ足して
100にしたのだという。賢三はお遍路に回る先々の情報にとても
精通していて、地蔵などの造形物の意味にも長けていた。
元々隠れキリシタンが作ったものを仏教徒が子育て観音として
浸透していった像を見ると日本人は何にでも信仰の対象に
するので楽しいと語る。

父から突然5才の時の三里塚闘争で行き詰まっていた際に、
帰宅すると慎介が居なくなった時が有ったという。当時
権力に敵対していたものばかりが集まっていたので警察に
いうべきかどうかで迷ったとするが、帰ったらケロっとした
顔して自宅にいたのを見つけたのだという。何処にいたのか
と問うと、洋服のタンスの中にいて、あれが父へと最初の
反抗だった事を語る。
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父・賢三から妻の加奈子を経由して突然息子の慎介に対して
お遍路にいくことに誘われる。母が亡くなり、父が借金を
返済した後に四国に渡った後、一度も会話していないと
いう慎介は一体何の為に自分を呼んだのか分からなかった。

学生運動時代に参加した人が社会の一線で働く人物を取り上げた
ドラマの中では「宿命 1969-2010 -ワンス・アポン・ア・タイム・
イン・東京-」はかなり面白く見たドラマだけど、そろそろドラマ
の中に反体制運動の活動家、学生運動時代の人間が現役で働き、
その影響を受けて居る家庭というのを描くのが難しい時代になって
いるような感じもする。

前回の西田さんが演じた世代交代の話と同様に、このドラマでも
そういう時代に生きた人たちの影響力が影を潜めているものの、
その時代に見合った形で世界を変えようとしている人がいるという
価値感を見せることで、血は引き継がれており、争えないものは
あるのだろうなと思わせるところが有った。

自分さえ良ければ良いのか・・・そう思い込んでいる父に対して
息子がしていることを何処まで熟知しているのか、この父親に
してみれば知る由もないというところに、あんまり変わっていない
部分もあるのではないかと思ったけど、全行程を通して少しでも
わかり合える部分が有ったところは、決して後悔のない旅には
なったと思う。

過去の記憶を掘り返してはその時の気持ちが何処に有ったのか
思い返していくところは面白いと思う。家族三人がいて、それぞれ
に記憶の断片しか持ち合わせていない。それらを保管する意味
でも今回お遍路を通して一つの正しい記憶として完成させることは
ある意味ようやく一つの真実へとたどり着けた感じがするし、一つ
の家族の形を見つけた感じのものがある。

父親が末期の病気で何かを取り戻そうとしている行動の真意があるの
ではないかとするものが有った。加奈子という第三者が意外にも
重要な役割を果たして一つの家族を繋ぐのだから不思議なものだ。

昔話をしたくて俺を連れて来たのかと高圧的態度で接することで
口をつぐんでしまう父。これまでの中でこの家庭ではそういうことの
繰り返しで結局、真摯に向き合うことがなかったのだろうね。

昔のことだと言ってしまえばそれまでだけど、昔の女性・女房
にはなかなか夫のすることに口出しできないところも有ったのだろう
し、そういう価値感が少なからず社会を取り巻いていたのだと思う。
そんな時代の家庭の姿と、今の息子の家族の姿を対比して、時代の
変遷を感じると共に、共通する中から決して家族として過ごした日々
が無駄ではなかったことを示唆していて、良い感じのドラマになった。


麻倉賢三 …… 渡瀬恒彦 (父)
麻倉慎介 …… 中村勘九郎 (息子)
麻倉加奈子 …… ともさかりえ (慎介の妻)
麻倉幸恵 …… 神野三鈴 (賢三の妻)

山口みよ子、酒井麻吏、島邑みか、伊住聰志、日下部千太郎
師岡広明、有村圭助、呑山仁奈子、岩田遥、杉園啓仁
三谷翔太、黒濱優至



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