おやじの背中
(2014年7月期・TBS・日21時枠)

脚本 - 橋部敦子
演出 - 竹園元
ナレーション - 徳光和夫
脚本スタッフ - 中村千明
プロデュース - 八木康夫
音楽 - 兼松衆





第6話 父の再婚、娘の離婚
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吉崎典久は定年後、元上司の青木からの紹介で、とある会社の
総務部に部長待遇で再就職していた。日動物産で働いていた
典久としてはもう少し自分に見合う仕事があるのではないかと
掛け合うが、コンピュータに疎く、他の社員との連携も上手く
行かず、結局辞めることになる。
再就職を世話してくれたのに断ってしまったことを謝罪に行く
典久。元常務の青木は来月に再婚するのだとし、ここ一年婚活
に励んだ甲斐が有ったのだという。典久も再婚したらどうかと
言われる。彼も妻を亡くしてから4年が経過し、娘も独り立ち
して結婚したことも有った。青木からはこの先一番恐いのは
孤独だと言われる。

なかなか実家に帰宅しなかった典久の娘の七海は信用金庫で
働き、売れない役者をしている大悟の面倒を見ている格好だった。
母親の法要で実家に帰省した七海は、父親からこのままの生活
で良いのかと問われる。いつまで七海の稼ぎで生活するつもり
なのかと問うと、好きな事をして生きるという生き方もあるの
だとして、父さんこそ最近はずっと家にいるのではないかと
問う。無理して仕事をする必要はないと感じた事を告げると、
娘は一気に老け込むようなことにはならないでよと告げる。
何か趣味でも持ったら良い事を告げ、毎日散歩でもしたらどうか
と告げると、父は婚活をすると言い出す。
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七海は気が付くと幼少期から父・典久の言うとおりに成長して
きたことに嫌気を指し、社会人になったことを機会に父の
忠告は無視して、仕事をもたない売れない役者との結婚を
してしまう。自由に生きている感じが七海には心地良く写って
いたが、いざ結婚してみると、生活力の無さに七海が家計を
支える格好で、夫婦仲も最悪だった。父親に対して楯突いた手前
なかなか父にも相談出来ず、実家からも疎遠になっていたが・・・

橋部敦子さんというと不器用な人間関係を少しずつ心を開いてい
って相手のことを理解して和解させていくというシナリオがとても
上手い方だ。

父親頼みだった娘は独り立ちしたかと思ったけど、自由になった
は良いが実際にはうまくいかず、経験値の少ない娘としては
父親の存在は大きいと感じるものがある。
肝心の父親の方は、気に入らないとみるやスパッと会社を辞めた
り、婚活して新しい人生を送ろうとしているところなど、娘とは
対象的な状況にあり、皮肉にも自由に生活する父親のことが
疎ましくも感じてしまう。

母親という存在を娘という立場から見てきた人と、夫の立場から
眺めてきたという違いというのも有るのだろう。
家庭に於ける役割りの違いみたいなものを感じるところも有る
けど、親子関係に於いてはあまり心配しすぎて関わりすぎるのも
問題だし突き放しすぎるのもまた問題だし難しいものがあるな
という気がする。

母親は友達よりも父を望んでいた。
娘は夫よりもやはり父親のことを望んでいたのだろうか。
そんな気持ちの一端を知る事になる旅館でのやりとりは、とても
良い感じで普段は喋れないことを沢山喋る機会が与えられて、
娘の望みによって、今度は父親が結婚出来なくなるという流れを
見る限りでは、立場的には逆転しているのかも。

親子の関係を抽出する為に最小限のキャラクターの登場に止めて
いるのがこのシリーズの良さかも。
BS12なんかで放送していた「クルマのふたり」シリーズとか、
低予算ドラマの割りに良い企画だなと思っていたけど、上手くそう
いう会話劇を通して他人を知り自分を理解する機会を得ていく
という面白い内容だと思う。


杉本七海 …… 尾野真千子 (典久の娘、信用金庫勤務)
吉崎典久 …… 國村隼 (父、妻は4年前にガンで他界、定年)
杉本大悟 …… 桐谷健太 (七海の夫、売れない役者)
青木久志 …… 本田博太郎 (元典久の上司、再婚する予定)
岡宮芳子 …… 中田喜子 (典久の友人)
伊達 …… 伊藤正之 (典久の再就職先の社員)
高山 …… 管勇毅 (典久の再就職先の社員)



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