相棒14
(2015年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第5話 2045

脚本/徳永富彦 監督/橋本一
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法務省刑事局刑事課企画室・主任の藤井由紀夫がホテルの一室
でベッドの上で遺体として発見される。捜査一課と鑑識の米沢
は現場で調べる。米沢によると死亡推定時刻は午後7時から9時
で、死因はインスタントコーヒーに混ぜられた青酸化合物。
遺書はなく持ち込んだ毒物もないという伊丹と芹沢は犯人が
持ち帰ったものなのかという。ツインルームに宿泊している事
から相手がいたものなのか。
チェックインのカメラ映像(2015年11月19日18:28)には藤井だけ
が写っていた。宿泊者以外にも客が多いことと、廊下にカメラ
が設置していないので、後からやってきたのではないかと推察
する。

右京は冠城に対して藤井のことは知らないのかと尋ねる。
冠城は法務省は本庁職員だけで57000人、非常勤が55000人も
居る組織で分からないという。携帯電話を見ると見村彩那
という女性と浮気し、揉めているであろうことは誰の目で
見ても明らかだった。奥さんとは話して別れるようなことを
口にして、実際には奥さんにも浮気のことは話していないので
はないかという。

そんな中、米沢がやってくる。捜査資料に於けるデータシート
が普段と違うことに気がつく右京。米沢によると法務省も助成金
を出している研究機関が今月試験的に警視庁に来ていて、ひの
事件でも例のアレを導入するのだという。アレとは犯罪を捜査
する人工知能だという。事件発生の状況や容疑者のデータから
スーパーコンピュータがピンポイントに犯人を割り出すもので
今までにも試験的に試した結果4件を当てているとのこと。
アメリカでは既に人工知能に犯罪の予測をさせてその日の警邏
方針を決めているところもあると右京は語る。

内村はサイバーにも強い警視庁になれば鼻高だと語る。中園は
指揮権を握る我々の立場が弱くならないかとするが、実用される
頃には我々はもう隠居しているだろうという内村。
内村は中園がおかきを用意するが、今日は甘いものが食べたい
気分だとして"予測の弱さに"、使えないと語る。しかし中園と
しては意図的な感じでほほえむ。

人工知能技術研究所では人工知能JAMESを長江菜美子が操って
いた。

一方(株)ブルーライトシステムズで働く被害者の愛人・見村
彩那が第一容疑者であるとにらんでいた捜査一課の面々だが、
人工知能はそれを否定したという。愛人はシロだとすると、
伊丹達は激怒し、機械に人間の捜査はできないと語る。右京は
是非一度会いたいと語り、菜美子の元を尋ねる。

菜美子から色々とシステム(JAMES)についての説明が有る。
現在は私の声にしか反応しないように出来ているという。
それを見た右京は、まるで母としか話さない人見知りの子供
のようなシステムだと語る。どのような仕組みなのかとすると、
法務省にある裁判記録を全て学習させていて、犯罪現場のあら
ゆる状況・データ(ビッグデータ)を検証するのだという。
裁判は昨年だけで16万6千件。今では自ら学習することが出来る
ようになったという。刑事の勘も経験則に基づいたもので、母体
とするデータが多ければ多いほど有利だという。コンピュータ
に動機が理解出来るのかと問うと、コンピュータが感情が分か
らないという固定観念はこれまで処理する情報が少なかった
だけで、必ず理解出来るという。捜査のアシスタント程度ならば
今でも役立つことを語る。JAMES君はチェスは出来るのかと
問うと、チェスは人工知能のショウジョウバエ、遺伝学の研究
でもショウジョウバエが使われることになぞられた言い方だ
とするが・・
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藤井由紀夫がホテルの一室で殺害される。
彼は法務省の官僚で、コーヒーの中に入れられた青酸カリに
よって死亡したことが判明する。容疑者として愛人だった
という見村彩那と言う人物が揚げられる。
捜査には法務省が助成金を出している研究機関の人工知能に
よる捜査方法が導入されるということで、人間とコンピュータ
の捜査が試されるものだった。

ちょうど時事的に日本のスーパーコンピューターが世界一位の
演算能力はじき出したという情報と共に飛び込んできた、スー
パーコンピューター関連事業の予算が削減されようとして
いる現状と、映画「Back to the Future」に於ける2015年
10月21日のネタを組み合わせて、現在のAI技術が何処まで進んで
いるのかを示したいが有ったのか。

人工知能を持ち込んだ捜査の流れというと、海外ドラマ
「PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット」みたいな感じだけど、
それには当然及ぶようなところがなく、日本の人気ドラマに
してなんというショボい描写なのかという感じ(笑)

誰がどう見てもこのきな臭い研究員が犯人だとばかりの存在感を
発揮していたし、幾ら金がないという状況でも一人でシステム
を操っているという不自然極まりのなさが何とも言えない。
もちろんドラマ自体が犯人がどうとかいう以前に、テーマと
して、コンピュータと人間に於ける主従関係なり、能力差を
超越した母子愛というものがクローズアップされていることは
有るのだろうけど、それにしてもちょっと滑稽な描写だった。

このシナリオもチェスの世界チャンピオンがコンピュータに
敗れたという1997年に制作されていたらまだ面白く感じたの
かもしれないけど、寧ろこのシナリオを見て居ると日本の
IT技術の認識の甘さを感じて切なくなる。

AIと言えば、ドラゴンクエスト4の戦闘システムに導入された
として話題になった気がするけど、その時の認識のままで
止まっているのではないかと思うほどショボい。
近年日本のロボット技術と称して色んなロボットが出てきて
いるけど、ただただ音声を認識して反応しているだけのロボット
ばかりで、本当の意味でロボットと呼べるようなものが
生まれていないところも残念だ。

人間とコンピュータの知恵比べというのは楽しいし、それを
複雑な感情が入り交じる犯罪捜査に導入することでどんな結論
に導かれるのかということだけど、これだけコンピュータが
割り出す結論が変わってしまうと途端に信憑性も無くなる。

ヒューマンエラーを扱う意図はありありと見えたので、
問題の核心は、犯罪云々よりも、狂信的な菜美子がどのように
してコンピュータを都合良く操作しているのかというところが
着眼点になり、それを右京がどのようにして見抜くのかという所が
ドラマとしての肝だった。

ドラマでも右京のことを持ち上げすぎで、スーパーコンピュー
タと戦って右京がチェスで勝てるはずもない。
チェスの戦術が変わったことで、人為的に操作されているであ
ろうコンピューターの傾向を見て、「古畑任三郎」に於ける
「汚れた王将」を思い出したなぁ。
人間に癖があるように、コンピュータの癖もまた人間の癖が
乗り移ってしまうところがあるんだよね。

ちょっと面白かったのは、冠城が右京の物まねをするかのよう
にして、タバコの火の流れの中で「はぃぃ〜?」と語るシーン
と、内村が中園に対して、おかきか甘味か好みを割り出すこと
が出来ないもどかしさの裏に中園の意図した感情的行動が
見て取れたところが有った。

それにしても冠城亘の居る意味が完全に人脈を利用している
ことくらいしかないのが切ない。出向して何をしているのか
と問われ暇つぶしのようなものだなんて言われるとかなり
官僚に対する偏見が生まれるのではないか。冠城自身が官僚とは
世間で思われている程に暇ではなく激務だし大変だとしてて
いたけどね。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、法務省キャリア官僚)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)

藤井由紀夫 …… 小林博 (法務省刑事局刑事課企画室・主任)
見村彩那 …… 田川可奈美 (ブルーライトシステムズ)
長江菜美子 …… 平岩紙 (人工知能技術研究所研究員)
藤井玲子 …… 寺田千穂 (由紀夫の夫)
坂本紘一 …… 木下政治 (法務省刑事局刑事課企画室長)
小林大樹

長谷川ほまれ、小林博、山崎秀樹、小田久史



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