相棒14
(2015年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第12話 陣川という名の犬

脚本/真野勝成 監督/橋本一
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陣川警部補は警察車両によって乗せられていく。彼の表情は憔悴
しきっていた。大河内は右京と冠城に陣川に何が有ったのかの
説明を求める。「叶わなかった恋をコーヒー豆をかみつぶした時
のような苦みが広がる。」冠城はそう表現したという。冠城は
大河内に対して陣川から相談を受けたとし、彼と出会ったとき
にはもう始まっていた事を語る。

--- 2週間前 ---
1/20、品川区の自宅マンションで帰宅した女性・瀬山圭子が
家に入るなり押し込み強盗によって殺害される。
捜査一課はすぐに現場入りすると、芹沢は被害者女性の顔の
切られ方は5年前の事件と共通していることを告げると、伊丹
はヤツが復活したなと語る。
角田いつもの調子で特命係へ。
冠城は現在新聞を賑わせている事件に関して右京に話す。
「息を潜めていた連続切り裂き犯が犯行を再会した」。
女性の顔を切り裂くなんて完全に猟奇殺人だという冠城。
5年前に4人(根本凛H22/12/19、大塚美佳H23/1/18、明名望美
H23/2/25、杉原和音H23/3/18)が連続殺人されたにも関わらず、
逮捕出来なかった事件で、角田によると現在一課の捜査官は
カッカとしているのであまり口を挟まないことだという。
同一犯だとすると、この5年の沈黙は何故なのか。そして再開した
のは何を意味するのかと右京は語る。
そんな中陣川は組対五課の捜査官たちにコーヒーを配りつつ
特命係にやってくる。冠城は誰なのかと問うと、角田は警視庁
には関わらない方が良い人間が何人か居るがその一人だという。
右京も過去の例にならうと君の事を後輩扱いするという。
陣川はコーヒーを冠城に配ると、冠城はエチオピアのコーヒー
豆だと語る。そんな口利きが聞いてイケメンの冠城に、陣川は
後輩扱いではなく先輩と呼んで相談したいことがあることを
告げる。「ボクに力を貸してください・・・」と。

陣川は冠城を外に連れ出す中、ボクの周りは恋愛には役に立た
ない人ばかりだという。連れてきたい店があるとしてやって
来たのはコーヒー店"Cafe de Muguet"。
店を経営しているのは矢島さゆみという可愛い子が働いていた。

右京は大河内に対して、陣川がこの店のさゆみに恋をしたであろ
うことを語る。

「毎日出勤時や休憩時に一杯のコーヒーを買うが、その時にコー
ヒーをいれる女性の笑顔が男性の癒しに転じて恋をいるのは
珍しくない。」何処でも転がっている恋のハズだったという。

陣川によると仕事でヘマをした帰り道に雨が降っていて、雨風
にサラされていると彼女が声を掛けてくれたのだという。
どうしてさゆみさんは彼に声を掛けたのかと尋ねると、昔雨の
中に捨てられていた子犬を思い出したという。その時は親の反対
で見捨ててしまったが、今度そんな犬を見つけたら必ず拾うと
思っていたという。陣川はあの時彼女にいれてもらったコーヒー
の香りを決して忘れないという。記憶と香りは密接に関係して
いるので臭いを嗅ぐ度にその時の光景が思い出されるだろうと
冠城も語る。

花の里で冠城は酔った陣川を連れて行く。陣川は彼女と結婚
しますと宣言する。みんな幸せになりましょうと。
酔った陣川の事を自宅まで介抱して連れて行く右京と冠城。
室内が指名手配犯・未解決事件の犯人の写真が壁一面に貼られて
いた。彼は刑事にあこがれて未解決事件にただならぬ執念を
向けていることを説明する。
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今回は1シーズンに一度は登場する陣川君が絡んでくるエピソー
ド。冒頭から思わせぶりな構成で、いよいよ陣川君の異常性が
負の方向に働いてしまったのかという緊迫感のある状況下で、
何が起きたのかを右京の解説と共に描かれていくというもの。

犬、嗅覚、香りと記憶というキーワードの刷り込みが行われて
いたエピソードで、普段からコーヒー派で拘りのある冠城が
今回は右京以上の活躍を果たすというものだった。

相棒という割りに右京一辺倒のドラマだと感じていた人に取っ
ては、今回のエピソードはようやく冠城の活躍や一課の比重多き
捜査構成に満足感のいくものだったのではないかな。

一課の捜査の流れと右京たちの捜査の流れを上手いこと別の角度
から流れ・段取りを付けて居るし、何よりも先頭に立っている
陣川くんのただならぬ正義感が、カイトの正義感と精通する所も
有り、今回の犯人同士がたまたまシンパシーを感じてしまったこと
から流れが複雑化したけれど、犯人には犯人の、捜査官には捜査官
の、それぞれの立場に応じて共感するような感覚というものが
有るんだろうね。

嗅覚が鋭いことは長所でも有り短所でもあったこと。
良い臭いをかぎ分けることが出来るという点ではとても良いスキル
ではあるが、逆にクサさまでかぎ分けてしまうところはなんとも
皮肉。普通はそれでも全く知らない他人の臭いに関してクレーム
を付けることなど無いのだろうけど、そうせずには居られない性格
が結果的に知らない内に人を傷つけていたところは、被害者にしか
分からない心の傷として残る物なんだろうね。

「コーヒーの香りとその場の画像が記憶に残ってしまう体になった」
「胡散臭いですな」

冠城と米沢が牽制し合っている中、相変わらず突っ込み処はツボを
押さえていて楽しかったし、右京の能力を認めている伊丹たちの構図
とは逆に右京もまた伊丹たちの捜査を信じているところも今回の
一面から感じられて、伊丹が今回は「プライドよりも真実だ」と
して事件解決に向けた流れを優先させたところも良かったと思う。

記憶といえば陣川くん。
立場は違えど異性の笑顔に惹かれる気持ちは誰もが一緒だという
ことが描かれつつも、それに対して逆に相手からの視線の違い
というのが犯行の動機のようにもなってしまった。

しかし陣川君はこれで結構危険性をリアルで感じる印象が出来て
しまったなぁ。
正当防衛は十分に成り立つものがあったけど、馬乗りになって
犯人を殺そうとした時の目つきを考えると、捜査官も犯人も互いに
表裏一体のところで成り立ち、そしてちょっとした気持ちの掛け違い
によって、誰もが殺人者になり得るところがあるんだなと感じる。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、法務省キャリア官僚)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長->官房長付。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)

陣川公平 …… 原田龍二 (捜査一課・経理担当)
矢島さゆみ …… 黒川智花 (コーヒーショップの店主、7人目の被害者)
北一幸 …… 野間口徹 (38歳、司法書士)
矢島絵里 …… 今村有希 (さゆみの姉、父・聡、母・有予)
生木拓 …… 草野イニ (33歳、元ノダ消毒勤務)
宮沢彩花 …… 関谷春子 (弁当屋勤務時代、生木にストーカー被害)
??? …… 宮島三郎 (DVD店)
野田 …… 剛州 (ノダ消毒)
瀬山圭子 …… 田野口萌 (28歳、翻訳、5人目の被害者)
根本凛 …… (1人目の被害者、5年前)
大場美佳 …… (2人目の被害者、5年前)
明名望美 …… (3人目の被害者、5年前)
杉原和音 …… (4人目の被害者、5年前)
中里薫 …… (6人目の被害者、27歳)
鹿沼雄太 …… (指名手配)

森山大博



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