相棒15
(2016年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道
音楽:池頼広

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第8話 100%の女

脚本/金井寛 監督/権野元
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裁判の法廷。
2016年9月23日に宮ノ葉公園で発生した刺殺事件。
検事の倉田映子は証拠として近くの防犯カメラ映像を提示する。
被告は中嶋祐介、被害者は57歳で外務省欧州第一局長の棚橋譲。
被告が映っている自国は午後8時7分。犯行時刻と合致している
という。しかし被告側弁護士の藤江田光一は、証拠の映像は
きわめて不鮮明だとして証拠能力がない事を告げる。倉田は
それに関して同じ時間帯に通行人に被告が目撃されていると
して証人がいることを語る。
証人尋問で田村紗季は被告を目撃した場所をプロジェクタに
映された地図で場所を示す。ここで被告人とぶつかったこと。
そんな裁判の傍聴席には冠城の姿が有った。

休憩後に反対尋問を行うとする裁判長。
冠城は外に出て来た倉田に声を掛ける。この事件にちょっと
関わっていたので傍聴していた事を語る。倉田は冠城が法務省
から警察になったことに驚く。冠城もまた倉田が次席検事に
昇格しそうな程に活躍していることを賞賛する。今の生ぬるい
検察のあり方を変えたいという。日本の検察は有罪率99%だと
公言しているが勝てないものは不起訴にして排除しているだけ
だという。それを聞くと流石「100%の女」だと語る。冠城は
先ほどの証人の件を話そうとするが、そこでは言及を辞める。

特命係に戻ると冠城は裁判のことを話す。
倉田検事の噂は右京の耳にも入っていて彼女が起訴した被告の
有罪率は99%どころか100%だそうで・・冠城の知り合いですか
と。法務省時代の研修で一緒だっただけだという。当時から彼女
は優秀で勝てるものは居なかったという。
2ヶ月前に暇だった時、自分は伊丹刑事に捜査一課とくっついて
捜査した時に起きた事件だという。

--- 当時 ---
事件捜査していた芹沢は死亡推定時刻は昨夜8時から10時だと
し、死因は失血死。傷の形状から凶器はナイフだという。
被害者は棚橋譲(57歳)、外務省欧州第一局長。帰宅途中の
被害だろうという。サイフと時計がないという冠城

--- 現在 ---
冠城は以上のことから当時は物盗りの犯行かと思われたが、
内村は被害者は事件の4日前に次期駐ロシア特命全権大使として
内々定し内示を受けていたのだという。彼はロシアに対して
強硬派だったこと。ロシア側にとって都合の悪い人物による
犯行の線も出て来たという。

しかし冠城は警察の捜査の際に公園近くにある中学の国語教師が
犯人を見たと名乗り出たものが居たという。その時間の防犯カメラ
を取り寄せたら同じ外務省の中嶋祐介だと判明したという。
防犯カメラには男のシャツに血痕らしき物が認められたことから
目撃証言が信頼性があると判断され検察は被疑者否認のまま起訴
したという。右京はそれの何が引っかかっているのかと尋ねると
冠城は裁判では証言を変えているのだという。警察で話した時
とは違うので話を聞いたら勘違いだとしていたとのことだった。
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事件を見るとロシアとの外交問題に発展したり政治家が仲介して
面倒な捜査妨害の元で起きる大事件かに思われたが、結果的と
して見ると男女関係が事件に発展するという殺人事件の動機とし
てはシンプルなもの。

優秀な検事がおかした1%のミス。
しかしそのミスの根っことなるものが犯罪者によってもたらされ、
その後の彼女の人生を大きく狂わせてしまう。それが血となり肉と
なり彼女なりの正義感へと繋がっていく中で、検察官同士の出世
争いの足の引っ張り合いの中でも気丈に振る舞っていた彼女だけど、
そんな落ち度をハイエナのように探している同僚たちの監視の
視線によって発覚してしまうものではなく、皮肉にも警察であり
特命係が足を引っ張ってしまうというものだった。

よくドラマでは刑事が殺人犯だと知りながらもそれを罪に問うこと
が出来ずに世直し殺人みたいな形で関わることはあるけど、多少内容
は変われど今回は検事が同様のことを行っていた。

事件自体の動機の読み違いということも有れば、検事が100%の拘り
を持っていたのは裁判での勝敗というよりも、自分の中にある弱さ
を見せることに否定的見解があり、その背景にはメンタルクリニック
に対する日本人の偏見も左右しているんだろうなと思わせる。

冠城の行動真意が途中で上手く誤魔化されるけれど、実際には裏の
裏をかいて伊丹達を操っていたという辺りは、右京一辺倒の流れを
打開しようと努力している流れは有る。
冠城という一見すると分かりやすいキャラクターだけど、実は意外と
掴み所のない人物像であり、彼の持つ人脈の広さと野心的行動を
見るとなかなか無条件で信頼出来るかどうか。

今回は久しぶりに右京の中の正義感とそれ以外の人の正義感のぶつかり
合いがあった。
イチ視聴者としては確かに容認しても良さそうなミスだと思うもの
なんだけど、結果的に少しでも改ざんした流れが有るのであれば、
彼女の中では今後も似たようなケースではそういう不正に手を染めて
しまう可能性は否定出来ないからね。

結果的に見ると冠城がこの事件を掘り当ててきたものだし、その結果
を冠城としては想定出来なかったのだろうか?
今回のドラマで1%残念だと感じたのは、冠城が直前に検事は官給品と
して風呂敷が支給されると話したばかりなのに、またその直後に
倉田に同じセリフを繰り返し語るんだよね。これはちょっとくどい。
種明かしは倉田に語る時まで黙って居るか、視聴者には聞かせない
形で右京に伝わっているという流れが欲しかった。

今回いよいよお正月スペシャルに向けた前振り感が有ったのか青木
のセリフは思わせぶりだった。
内村さん久しぶりに見たけど、特命が解決した事件を伊丹が褒められ
屈辱に感じた彼のセリフもまた思わせぶりだよね。
「いつかやってやる!!」と。

青木が持ち込む捜査資料なんかは、正直今回の検事が改ざんする
のとは違う意味合いが出てくるのでこの人に全幅の信頼を寄せて
いると怖いことになりそうだよな。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、総務部広報課->特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長->官房長付。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)
青木年男 …… 浅利陽介 (サイバーセキュリティー対策本部特別捜査官)

倉田映子 …… 鶴田真由 (「100%の女」と評される検事)
棚橋 …… 窪園純一 (外務省欧州第一局長、公園で刺殺)
田村紗季 …… 志保 (公園近くの中学校で教師)
中嶋 …… 松下哲 (棚橋と同じ外務省)



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