第10回文芸社ドラマスペシャル
あの海を忘れない 〜アルツハイマー病を支えて

脚本:浅野妙子
原作:山本陽子
企画協力:文芸社
演出:竹村謙太郎
プロデュース:小林由紀子、松島俊輔、島川博篤




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夫をガンで失い、妻の睦美は生活に困窮し、館山の海で自殺し
ようとする。しかし海岸で遊んでいた息子の
は、母に向けて
声を掛ける。
"やどかり"を見つけたという事だった。

ライブハウスに行く
高橋響子は、12歳年下の彼・堺仁と結婚を
間近に控えていた。ライブハウスには仁に抱きつく女性の姿が
有り、それを見た響子はムッとするが、仁から母親の睦美だと
紹介される。
三人でなじみの
居酒屋「熊野や」で、食事をすることになる。
睦美と響子は互いに名刺交換をする。睦美は株のコンサルタント
の仕事で、響子は小さいながらも
古着屋「jurian」を経営して
いた。全く儲からないですけどと、響子は微笑む。
響子は誰に言われるまでもなく、自分の年齢は仁よりも12歳
年上だというと、睦美は仁は甘ったれで無精だから、年上の相手
の方が良いとして、あっさりと受け入れてもらえる。仁も
ようやく音楽活動で売れてきたみたいだから、変な女性に取ら
れない様に仁を見張っていてと睦美から言われて和やかなムード
が漂う。みんなで記念写真を撮ると、睦美は二人を居酒屋から
追い出し、二人っきりになりたいでしょうと告げる。

響子は結婚の話もしているのか心配するが、来月にイギリスで
式を挙げる事は話している事を告げる仁。結婚後に別居しても
良いのか?と問うが、仁は母だって若いし女を捨てていないと
して、人生を楽しみたいところだって有るのだと告げる。
響子は正直逢うまでは睦美のことを怖い人だと思っていたと
告白する。

仁は響子を送り届けた後に、母を迎えに居酒屋に走る。
しかし既に出て行ったという。近くを捜すと公園の池にいる
のを見つける。母は小さいときに行った海の話をして、あの海
は何処の海だったのかと呟く。響子はいい人そうねと仁に語る。

響子は高円寺に有る古着屋「jurian」を経営していた。
ずっと携帯電話で撮った彼との写真を見つめる彼女。店員の
佳奈に対して、この前彼の母と会ってきたが、社会人としても
女性としても良い先輩であり、この人とならば上手くやって行
けそうだと告げる。

旅行の日、荷物をバッグに詰める仁に対して、母は何処に行く
のかという。それを聞いて母は響子との関係に反対しているの
かと思い、認めてくれたハズだろう?という。母は仁の歯ブラシ
を使って磨いているのを見て、仁は呆れる。
響子が家まで迎えに来ると、睦美に挨拶する。しかし睦美は
響子を見て、この女は誰なのか?と問い、息子になれなれしく
触るなと告げる。
それを聞いて響子は、睦美はやっぱり反対しているのか?と
尋ねるが、全部話して納得してもらっている事を告げる。しかも
普段はあんな事を言う人ではないのに・・・と違和感を感じる。

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仁と響子は結婚を約束する間柄。しかし響子は自分が12歳も
年上であることに引け目を感じ、更には母一人・子一人で
育ってきた母親から息子を奪う事への済まない気持ちで包まれて
いた。一度は面会した彼の母親から自分の存在を否定された時、
響子は、やっぱりそうかと落ち込んでしまう。

社会問題となっている介護の問題を取り上げた話だった。
特にアルツハイマー病に関しては、個人ではなかなか対処でき
ない事が言われているけど、これを見ていると二人で対処しても
難しそうだ。

ただ最後のセリフに現れていたように、頑張れるところまで
頑張り、ダメならば仕方がない程度の考えを持っていれば
介護している側にとっても気持ちが軽くなるのだろうね。

ドラマとしては、冒頭から自殺しようとする母親の姿が有り
思わせぶりな所から始まる。
死のうとした時点で、一人の人格者は無くなり、またもう一人
の自分が誕生するというリセット説が上手く描かれる。

相手の為を思って身をひく仁は立派だけど、苦しい時に苦しい
とは言えない日本人の姿が至るところで見られた。最後に
なってようやく開放的な思考を持つことが出来るが、母子の
絆を考えると、なかなかその考えに帰着するのが難しいものを
感じさせる。

若村麻由美さんが年齢を感じさせない程の若々しさを演じ、
萬田久子さんに至っては、息子とコミュニケーションを取る
時の子供っぽさは、驚くべき物がある。萬田さんの声を聞くと
デスパのスーザン・メイヤーにしか聞こえない所があるので、
そんなイメージと相まって、かわいらしさみたいなのがにじみ
出ているのだろうな。

高橋響子 …… 若村麻由美 (41歳・古着屋「jurian」店主)
堺仁 …… 綾野剛 (29歳、バンドのギター担当、響子の婚約者)
堺睦美 …… 萬田久子 (53歳・仁の母、元株のコンサルタント)
大将 …… 小林稔侍 (居酒屋「熊野や」主人)
佳奈 …… 松永裕子 (響子の店の店員)
園田 …… 野村信次 (介護施設・緑総園職員)
幼い日の仁 …… 平林智志
仁のバンドメンバー …… 小野雄一郎、小澤秀明、渡辺裕次(butterfly in the stomach)
館山警察署員 …… 佐藤旭
ナナちやん …… (居酒屋「熊野や」店員)


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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