特別ドラマ企画 誰かが嘘をついている

有罪率99%痴漢冤罪事件と闘う家族達・夫がわいせつ罪で逮捕!?
その時妻や子は…会社は?…そんなアナタを信じてくれますか?


脚本/上杉隆之
企画・プロデュース/喜多麗子
演出/宮本理江子

http://wwwz.fujitv.co.jp/dareuso/index.html


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平成19年10月16日。
佐藤敏昭はいつものように通勤する。しかし普段乗る電車には
乗ることが出来ず、次の急行電車に乗る。
満員電車に揺られながら、京南線のゆめ見ヶ丘から京南新宿駅
までの15分間。
駅に降りた瞬間、女子高生の持田舞に呼び止められて、痴漢
しましたよね?と声を掛けられる。すぐに駅員室に連れて行か
れて身柄は新宿北署へと連れて行かれる。指紋を採られ所持品
の検査。現行犯逮捕だという。その時まで敏昭は何故警察署に
連れてこられたのか事情も良く解っていなかった。

敏昭の勤める東亜時計(株)にも連絡が渡る。三浦が電話の対応
に出て本部長の阿藤に変わる。現在取り調べを受けている事
だけ告げられ、何の罪なのかは一切語られるモノがなかった。

敏昭は留置所では256号と呼ばれた。
すぐに弁護士で友人の山崎に来て貰う。
すると彼は否認はするな、痴漢の場合99%は有罪になると言う。
罪を認めないとこのまま拘置が続いて、会社もクビになると
言う。認めれば示談にして無罪のまま出られる事を告げられる。
痴漢の場合、刑事は端からやったと思っているという。
妻の美羽にも夫が留置所に居ることが連絡されるが、彼女は
息子の貴浩や娘の由香には出張だと偽る。

10/17。留置所で目が覚める。朝7時に起床。掃除して食事。
検察で取り調べが行われる。敏昭は電車に乗っていた際に、
左手にはカバンを持ち右手には資料の入った封筒を持っていた
ので物理的に人に触れるのは無理だったと告げるが、一切聞く
耳を持たれなかった。
留置所に着替えを届ける美羽は、そこで手錠姿の夫の姿を見か
ける。
結婚詐欺で5回も捕まったという男性からは、否認しているの
ならば10日間は最低出られない事を教えられる。

10/18。拘留が決定する。否認しているので外には出られない。
10/19。妻との面会が許される。妻にはやっていない事を告げる。
美羽は子供達に父は出張に行っているとしている事を知らされる。
10/22。会社の三浦や阿藤が面会に来る。
敏昭のことを盲腸で入院としているという。これ以上長引くと
辛いとして、さっさと認めて仕事に戻れと言われる。
10/23。家宅捜索。息子がちょうど帰宅する時に警察官達が捜索
していた為に父親の事がばれてしまう。
10/25。山崎は敏昭は戦うつもりである事を認識。美羽に会い
敏昭に折れるよう説得してくれないかと語る。それを受けて
美羽は敏昭に面会し、冤罪事件を勝ち取った弁護士を探そうと
提案する。しかし周りに相談していることが夫に伝わり、周り
に広めるような行動は取らないでくれと告げる。
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ドラマとしては痴漢事件で捕まることがどういう事なのかを
克明に描き出した話だった。
ドラマでは無く映画として公開しても十分に通じるほどの
内容だったと思う。

このドラマでは冤罪者の家族に対して決定的な破滅までは描か
れないけれど、被害者の言葉一つで一家を崩壊できる割りに
その重さを認識していない警察官、検察官、そして裁判所の
対応を暗に非難するような内容だった。

ドラマとして面白いのは、最初の分岐点に於ける対応の違いが
どのような結末を生むのかを比較して描いている点だ。
痴漢をしたのかどうか。認めることで汚名は着せられるわけだ
が、無罪として釈放され被害は精々罰金程度のものである点。
しかしそれを否認することで裁判にまで持ち込まれて、数百万円
の実質的被害と、社会的信用を失い、家族の崩壊、そして
本人には1年3ヶ月の懲役刑を与えられるという、実に矛盾した
流れとして描かれた。

ドラマとしては失うモノの大きさ以上に得たモノの存在がより
大きく取り上げられたこともあって、皮肉なことにそんなに
酷い事として取り上げられていない事もある。

会社の論理や社会の縮図に巻き込まれたイチ社会人。自分を見失
っていた様が冒頭からの精気の無さに集約されている。
逮捕されてもその実感さえ浮かばないほどに、感情を無くした男。
しかし裁判をして自分を見つめ直す機会に恵まれ、本当の人間
関係や家族の絆、会社のネームに縛られない本当の姿と
いうものが明らかにされていく。
泣いている子供を見て、人間とはこんなに感情に溢れていたのか
と実感する様。留置所に入ったことで、一つ一つの何気ない事
が感動として伝わってくるところなど、人間らしさを逆に取り
戻して行く点では、まさに皮肉としか言いようがない。

ドラマでは諦めないことで一つの光明を得ていくわけだが、
やはり現実問題としては2%未満のラッキーな人間だったという
感じだな。

父親の事を見守る家族の様子もまたとてもよく描かれている。
最後までそんな父親を見捨てず、非行に走ることもなく育って
いく様にはとても心強さを感じたし、家族の助け合いこそ、
この手の困難な状況の中では最も必要なことだと分かるものだっ
た。

最後、持田舞が"じゃあ一体誰がやったというのよ!"と憤りを
感じているが、それよりも先ずは謝罪が先なんじゃないかという
後味の悪さも感じる。この子の被害には同情するが、やはり
彼女の証言によってこれだけの事をしているわけだからね。

逃走犯に対して警察官がカラーボールを投げつけるように、痴漢
されている時にスプレーやペンで犯人の手に印を付けるとか、そう
いう防御策でも有れば良いんだけどね。混雑している状況では
難しいか。

佐藤敏昭 …… 水谷豊 (痴漢冤罪に巻き込まれる)
佐藤美羽 …… 宮崎美子 (妻)
佐藤貴浩 …… 手越祐也 (息子、大学生)
佐藤由香 …… 谷村美月 (娘、高校生)
持田舞 …… 佐津川愛美 (痴漢被害者・16歳)
鬼塚敬二 …… 平田満 (冤罪を勝ち取った事のある弁護士)
山崎 …… モト冬樹 (敏昭の友人・弁護士)
阿藤 …… 浅野和之 (東亜時計の本部長。敏昭と同期)
三浦 …… 山本未來 (東亜時計の係長)

大宮 …… 佐戸井けん太 (判事)
小川 …… 黒川芽以 (検察官)
日比野 …… 伊藤正之 (検察官)
詐欺師 …… カンニング竹山
直木雅治 …… 荒川良々 (痴漢冤罪)
倉田 …… 酒井麻吏 (弁護士、鬼塚の仲間)
秋山 …… 森下哲夫 (高裁の裁判長)
山本 …… 久世星佳 (裁判官)
戸倉 …… 一本気伸吾 (戸倉精密工業・社長)

佐上 …… 山中崇史 (刑事)
畑山 …… 安齊肇 (被告人)
町田 …… 野仲イサオ (刑事)
小笠原 …… 工藤俊作 (刑事)

飯田基祐、村松利史

歌澤寅右衛門、牧村泉三郎、児玉頼信、田上ひろし、伊藤幸純
長谷川はまれ、嶋崎伸夫、若林幸樹、長谷川公彦、久ヶ沢徹
豊永利行、青木一、堤匡孝、徳永淳、篠木幸一、最所美咲
横塚真之介、真下玲奈、石橋よしゆき、夏川亜咲

評価:★★★★★★★★☆☆ (8.0)

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