冬空に月は輝く
(2004年2月11日 フジテレビ放送、視聴率は6.6%)

脚本:安達奈緒子
プロデュース:関谷正征、下山潤
演出:松山博昭
主題歌:「Reborn」arp





ヤングシナリオ大賞 / P&Gパンテーンドラマスペシャル
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清南女子校の卒業式。
大人になると一歳程度の年の差は全く気にならないが、高校
時代は違う。あの二人(
今宮華子、上井江麻)はいつも輝いて
いた。

卒業式の後、弓道部では3年生の追い出し試合が行われる。
今宮と上井は卒業したら会えなくなるのに、喧嘩したまま全く
話さずに居た。本当にこのままで良いのか。

二人の出会いは高校2年の時。
今から一年前、
来宮神社に来ていた今宮華子は、神主であり
弓道の指導者でもある
遠野嘉道から指導を仰いでいたが、
今宮は
"早気"という弓道特有の症状に悩まされていた。
的を狙う一連の動作の中で、弓を引ききる前に手を離してしまう
事から的からは大きく外れてしまうもの。遠野は、今宮の弓道
の師匠であり、親代わりをしていた祖母の礼子が亡くなった事
がその原因だと考えていた。しかし華子は祖母の事とは関係
無いとし、もうこれ以上弓道をやっても意味がないとして、
弓道部を辞めようとしていた。

そんな中、神社にお参りに来ていた一人の女性・上井江麻と
初めての対面になる。彼女は神社の鈴を粗暴に扱っていた。
悪魔払い用の弓を華子に目がけて射るような素振りを見せる。

華子の父は建築家で、ニューヨークに単身で来ていた。
両親は離婚し父親の元で暮らすことになるが、父親の母が
華子を育てることになる。
父は正月にも帰国せず、現在手がけているウォール街のトリニ
ティ教会の修復チームの一員として参加していた。華子に対して
絵はがきを送る。華子の進学のことについても言及があり、
父は華子の決断を楽しみにしているという。

冬休みが終わり新学期。
突然転校生がやってくる。東京から来たという女性・上井江麻。
先日神社で会った女性だった。

華子は部室から自分の荷物を引き取りに行く。
弓道部を一時休部しようとしていたが、後輩の
木内沙織からは、
三年生が辞めたら、今の弓道部は私と華子先輩だけしかいない
ので辞めないで欲しいと懇願される。華子は弓道に於いて
一年生の時に既に県大会で優勝を収めたという逸材であるが、
今は"早気"に悩まされて辞めようと考えていた。

仕方なく弓道の練習場にいくと、そこには神主の遠野と上井
の姿があった。上井は華子が弓道を辞めようとしている事を
知って、"なんだ辞めるのか? 嫌になったのならば仕方がないね"
と挑発するような言葉を投げかける。

華子は幼い頃から弓道の指導をしていた祖母に育てられた。
華子に対して勝ち負けに拘りすぎる事を指摘し、それが弓道の
本質ではない事を語る。華子に対して、祖母は自分の後輩が
指導している尚嘉女子大に進学する様告げるが、私が弓道を
続けるかどうかは自分で決めるとし、留学したい事を口にする。
祖母は弓道が嫌になったのならば辞めても構わないとするが、
華子はそんなのウソだと語る。

上井と木内は、祖母が亡くなって以降一人で暮らしている
華子の家にやってくる。上井は弓道部に入部する事になった
のでヨロシクと言いに来たという。

華子は上井らと弓道の練習をする中で、上井が的を外している
にも関わらず楽しそうにしている事に気がつく。当たらなく
ても何が楽しいのか?と問うと、弓が飛んでいくだけでもスカ
っとするのだと告げ、その上的に命中すれば、快感である事を
語る。

そんな中、ライバルの
柴田祐子が在籍する北校との定期戦が
行われる。団体戦は三人なので、清南女子校は上井の加入に
よって辛うじて戦うことが出来た。個人戦ではエースの華子は
柴田と対決することになるが、"早気"に悩む華子は一度も
的に当たることなく敗退する。

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高校生活を通して、新たな出会いと育ててくれた母親との別れ。
部活動でのスランプも含め、そんな事に頭を悩ませながらも、
自分の将来について深く考察していく。

本放送の時にも見たのだけど、ホームページで感想を書いてい
ないので改めて再放送の機会に見返してみた。

高校生特有の物なのか、日本人の気質的な物なのか。
他人に配慮してなかなか本音を相手に伝えることのできない
もどかしさの中、立ち直るきっかけを与えてくれるのもまた
他人であり友人である事を考えると、人との繋がりや関わり合い
が如何に大切であり、そして難儀な物なのかが描かれる。

ちょっとした恋バナだったり、上級生に憧れる姿だったり、
ロケーションの美しさなんかも相まって、なかなか良質で
高校時代を思い出させるつもり。
こういう系統のドラマならば他のアジアの国に輸出するのも悪
くないよね。

進学の問題で悩む華子。
高校時代に自分一人で将来について何かを決めるという事や、
家庭環境を考えると、有る意味では酷な状況だった。

弓道というこれまで拘ってきたものを捨てる事への名残惜しさ、
祖母の願いでも有ったのではないかと思わせる大学への進路を
見限る事への後ろめたさなど、色々と華子自身が背負っている
ものの大きさから、それを振り解く事への勇気というものを
感じる。

何故江麻に嫌われてしまったのか、その理由が分からず
無視される事への辛さなんかも、一人で暮らしている華子の
事を考えるとちょっと可哀想だったな。

ただ高校時代って僅か三年である事を考えると、互いに交流が
途絶えていた月日が如何に無駄で勿体ないことをしていたのか
考えさせられるものがあったな。

因みにP&Gパンテーンドラマスペシャル

2003年 笑顔セラピー
2004年 冬空に月は輝く
2005年 音のない青空
2006年 トゥルーラブ
2007年 永遠の1.8秒
2008年 かるた小町
2010年 初恋クロニクル
2011年 フォルティッシモ―また逢う日のために―

今宮華子 …… 綾瀬はるか (上級生)
上井江麻 …… 佐藤めぐみ (華子の友達)
木内沙織 …… 上野なつひ (下級生)
多和田有仁 …… 森本征輝 (遠野の親戚、弓道を指導)
柴田祐子 …… 水川あさみ (ライバル校の生徒)
遠野嘉道 …… 中丸新将 (神社の神主)
今宮礼子 …… 長内美那子 (祖母)
今宮父の声 …… 神保悟志

岩橋道子、沢尻エリカ、石川佳奈、越井真優


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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