母とママと、私。 -10年目の再会-

/伊沢満
出演/岸恵子、夏川結衣、吉行和子

http://www.tv-asahi.co.jp/bungeisya/

第6回 文芸社ドラマスペシャル。

10年ぶりに再会する産みの親と娘の対面に、育ての母親も含めて
3人で逢うことになる話し。

ただでさえ難しいのが母親と娘の関係。
そんな関係の中に、もう一人の母親である育ての母親が参入して
くるのだから、そりゃもう大変。

産みの親と育ての親が面を併せれば、子供に対する一種の所有権
争いが勃発するし、産みの親と娘の間には養子に出した事への
非難と、幼い頃からの葛藤が存在している。
これらを良識有る大人が静かな中にも密かな闘志を燃やして
コミュニケーションを図っていくのだからもの凄い。

母親と娘。このドラマの様なすれ違いを見ていると、血の繋がり
の有る親子でも所詮は他人かなと思える。
似たもの同士は相手の気持ちが読める分、嫌に思える所が有るの
かな。
人間同士のコミュニケーションが如何に難しいのかを考えさせ
られる。

初めはやっぱり娘を養子に出した事への母親の責任が問われる
内容になるのかと思っていた。岸恵子が育ての親・吉行和子との
間で娘に対する優位性を見せようとする所なんて、岸恵子のエゴだ
なんて思ったりもするのだが、それらが少しずつ同情的な視点に
変わってくるところがドラマとしての面白いところだ。

初めて駅に降り立つ母親の姿を見て、何処か迷惑そうにしていた
夏川結衣も、エンディングで駅から去っていく母親の姿を見て
全く正反対の表情を見せる。それだけこの2日の間に起こった
親子での会話は充実感が有ったし、始めて腹を割って話し合う
ことが出来た証拠でも有ると思う。

一杯のミルクティに込められていた真実。三人の子供の中で
何故娘である夏川結衣だけが養子として送り出されたのか。
派手な演出はないけど、よく作られたシナリオだったと思う。

どんなに対立・葛藤を迎えた家庭であっても、冷静に判断できる
ような年頃に再会すれば、このドラマのように分かり合えるとき
が来るのかも知れない。
特に家庭を持つ頃の年代になれば、母親の気持ちというものが
分かるわけだし、廉が取れてより建設的な話し合いが出来ると
思う。
幼い頃に背負ったお互いの傷を僅か1日共に過ごしただけで修復
してしまったところにドラマの妙味が詰まっている。
これまで過ごしてきたどんな日よりも濃い一日だっただろう。
その日がまた別れの日になるという切なさも、ドラマではより
多くの事を感じる作りになっている。

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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