新春ドラマ特別企画筆談ホステス

耳が聴こえないハンデのある女性がなぜ日本一になれたのか?
そこには母との壮絶な感動秘話があった!!話題のベストセラー
完全ドラマ化


原作/斉藤里恵
脚本/加藤綾子
プロデューサー/志村彰、森雅弘
演出・プロデュース/竹園元

http://www.mbs.jp/h-hostes/


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2001年青森。
斉藤理恵は遊びたい盛りの高校生。彼氏の正樹にバイクで送っ
てもらう彼女。彼氏とお揃いのストラップに友達からも羨まし
がられる。
放課後、クラブに行くという友人の朋子、真由、ひかり。
理恵も一緒に行くという。彼女は耳が聞こえないのにクラブに
行っても楽しめるのか。

理恵は二歳のなろうとしていた夏の日、兄・悟志と母恵美子で
プールで遊んでいた。母親がちょっと目を離した隙に理恵は
倒れ髄膜炎によって耳が聞こえなくなる。そこから家族の歯車
は狂い始めていた。

音楽が終わっても一人踊り続ける理恵に周りは不思議がる。
一休憩している時に二人の男性にナンパされるが、耳が聞こえ
ず、言葉の発音が正しくない事を知ると途端に男達は彼女を
罵倒する。それに怒りを感じた理恵は男性に水を浴びせかけ
取っ組み合いの喧嘩になる。
夜遅くに帰宅する理恵に厳格な母親は何処に行っていたのか
問い詰める。兄がフォローし二人の仲裁役を買って出るが、
母親は決して許そうとしなかった。黙っている彼女に何の為に
発音の練習をしたのかと告げ、黙っていると話せなくなってし
まう事を語る。
理恵は母が健常者と同じよう育てる為に繰り返し唇の動きで
相手の言葉が分かるよう訓練し、何でも習い事をさせた。
なんでも良いから一番になれと告げ、そうすれば例え言葉が
聞こえなくても認めてくれるという。
それが理恵の心にプレッシャーとして重くのし掛かっていた。

翌日の放課後、友人達に無視される理恵。昨日みたいなのは
面倒だという。朋子は黒板に"理恵は神様に耳を取られた"と
書いて彼女を傷つける。傷心の中彼氏の家に行くと、今度は
彼氏が体の関係を求めそれを拒むと、彼女の心を傷つける。

悲しみに暮れ服店のショーウィンドを眺めている理恵に、店員
の佐々木が声を掛けてくる。楽しそうに買い物をしている客や
店員にいたたまれなくなり、商品を持ったまま外に出てしまう。
万引き防止ブザーがなり、佐々木は店長の小橋に引き渡す。
佐々木は警察官を連れてくるが、小橋は彼女が耳を聞こえない
事を知り、警察には引き渡さなかった。
翌日登校すると彼氏が新しい彼女を連れているのを知り、学校
に居場所が無いと感じた彼女はその日以来学校に行くのを辞め
る。母親ももう嫌だと泣き叫ぶ理恵の姿を見て、何も言わなく
なるのだった。
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いやぁなかなか面白い作品でしたね。

皮肉だけなものだけどドラマの題材としての障害者の価値は
実社会以上に重宝してしまう所が有るのかな。

ドラマとしては筆談というもののアイディアと、障害者、ホス
テスものという事を除いては極一般の若い女性が体験する思い
やエピソードとかなり通じるモノが有ると思う。

家で厳しくする母親、居場所を学校に求め、彼氏に求め。
それらが全て失われたときに、自分の心の拠り所とこれからの
自分をどうするのかという不安な心境を描いたものだった。

言葉というものの影響力が強く描かれている。
なんでも良いから一番になれという幼い頃に聞かされた母親の
言葉が、まるでトラウマの様に重くのし掛かる。
人生の軌道が上手く行っているときにはそんな言葉に何の抵抗感
も感じないものだろうが、歯車が狂った彼女にとって、その言葉
がより重く心を蝕むものとして存在してしまうのだから辛いこと。

言葉に対するコンプレックスを、上手くポシティブに利用して
行く所などとても気の利いた作りでもあり、母親が幼き頃
から習わせていたものが役に立ってしまう所など、歯車が再び
揃い始めると人生は面白いように転がっていく。

このドラマが安心して見ていられるのは、周りの人たちの主人公
に対する暖かい視線だった。高校時代の人間関係には若干の失敗
が含まれるが、それ以外はどれも彼女の活躍を見守り手助けする
暖かい視線ばかり。
人生に於いて最も大切なのは人とのめぐり逢いである事を実感
させる。
これが連ドラ化されると、ホステス同士の鍔迫り合いが有ったり
高校時代の描写が生々しくなったりするのだが、それらが全て
省略されている点は、このドラマの良さばかりを際立たせる
格好となっている。

東京に出てくる兄と一席を設けて逢う約束をするが、約束を
した時点でフラッグが立ち、会いに行けないだろう事は多くの
人が思ったことだろう。
また母親と娘の確執、そして言葉による呪縛を解くために、彼女
の筆談が用いられることは早い段階で予想は出来た。

最後の母子の対面シーンは、放送事故に近いほどの沈黙を保っ
ていたけど、その沈黙が逆に見る者を引き付けたと思う。

脚本家は加藤綾子さん。フジテレビのアナウンサーと同じ
名前ですね。恐らく出会う方達に同様のことを何度も言われた
だろう事は察するものがあるな。

キャストが安定的でどれも及第点以上の演技を見せてくれた。
その中でも兄役の福士誠治さんは今後の活躍を期待する役を
見事こなした感じだ。
そして手塚理美&戸田菜穂さんはクラブのママが似合いすぎる。
この二人、芸能界辞めてもクラブで十分常連の心を掴むことが
出来そうだ。

斉藤理恵 …… 北川景子 (髄膜炎で聴力を失う)
斉藤悟志 …… 福士誠治 (妹思いの兄)
斉藤志郎 …… 梨本謙次郎 (単身赴任の父)
斉藤恵美子 …… 田中好子 (健常者と同じよう育てる母)
永井杏子 …… 手塚理美 (クラブ"Diana"のママ)
小橋史生 …… 井上順 (洋服屋"JackPot"店長)
河原三春 …… 戸田菜穂 (クラブ"Water Tower"のママ)
瀬川耕造 …… 笹野高史 (建設会社・社長)

島田 …… 春田純一 (青森時代の客)
池波 …… 石井康太 (青森時代の客、アメリカ転勤)
朋子 …… 折山みゆ (理恵の高校の同級生 ->信金)
ひかり …… 麻生夏子 (理恵の高校の同級生 -> 保育士)
真由 …… ゆき (理恵の高校の同級生 -> OLへ)
正樹 …… 木咲直人 (理恵の彼)
佐々木 …… 春日井静奈 (洋服屋"JackPot"店員)
佐保 …… 黒木美早 (銀座のホステス)
美菜 …… 野口逢里 (銀座のホステス)
幼少悟志 …… 巨勢竜也
赤ちゃん里恵 …… 清田海子

三田村賢二、西岡秀記、奥村友美、吉井宇希
石田妙、天野勝弘

大嶋守立、麻田あおい、中村龍介、八戸亮、帆足健志
佐々木哲平、吉田雄樹、河中彩、紺谷みえこ、澤田萌音
稲垣鈴夏、小西結子

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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