生きててもいい・・・? 〜ひまわりの咲く家〜

脚本/龍居由佳里
出演/広末涼子、松下由樹、笑福亭鶴瓶、福田沙紀、成宮寛貴
八嶋智人、山内菜々、西尾まり、中丸新将、富田早苗
宍戸美和公、吉見幸洋

http://www.fujitv.co.jp/ikite/index2.html

3月3日に放送した金曜ドラマ。

里子故の問題ばかりでなく、極一般の親子の躾けや教育問題、
思春期に於ける若者特有の悩みなど、色んな内容を含んでいる
ので、特に里親制度に精通していなくてもドラマとしては
見やすく、共感できる内容だと思う。

本当の親子の絆が織りなす権利と義務の発生が、血の繋がりの
ない里親・里子に対してもそれが適応されるのか。

ドラマとして絶妙なのは、子供の時には理解できない事でも
大人になり困難を経験していく内に、自然とそれらに理解を
示すようになっていく点だ。これは上述した事にもかぶるが、
何も里子ばかりの問題ではなく、一般にも当てはまる人間の
精神的な成長の物語であるので、納得できる部分が多いの
だと思う。

もの凄い教育ママぶりを発揮した松下由樹さんの役どころ。
始めは心に傷を背負った里子側にも問題があるのではないかと
思いもしたが、流石に裁判沙汰となった時には、里子の心情を
理解するはずもない態度によって、強引に自らの都合に合わせ
ようとする姿は、とても痛いげなものだった。

そんな松下由樹の性格を無理に180度転換させることなく、
上手い形で情熱のベクトルを別の場所へと向けさせ、里子に
対する気持ちを負の方向から正の方向へと傾けさせる演出は
見事だった。

こういう親の監視の目を窮屈に思えたりする時期は一般の
子供ならば誰でも経験したりする。しかし大抵の場合、血の
繋がりが前提にあるので、複雑な方向には発展していかない
ものかもしれない。

このドラマでは幾つかの逃げ道が用意されている。
自分の居場所が里親の元には無いと分かった時にも、幼い時を
共有した子供達の居る施設に何時でも帰着出来る点だ。
同じ境遇の元で育った仲間がいることは、それだけでとても
心強いし幸せなことだと思う。今回精神的な支えとなった
成宮寛貴とは、主人公が共感する事も多かったので、実は共に
自殺してしまうのではないかと不安だった。しかしこの人物も
また虐待を受けて育った割に、他人を思いやる良い人間に育った
感じがした。

あと里親制度を見ると、主人公がそんなに監視の目を深刻に
思う必要が有るのかなと思うところがあった。
18歳には一般的にこの関係が解消される前提があるようなので、
抑圧された感覚を持っていたとしても、何年か我慢して自分に
害の及ばない程度の生活をしていれば、晴れて社会に出られる
のではないかな。

寧ろ成人になったときの広末涼子が感じたときの気持ちが本当
の所だと思う。やっぱり社会に一人置き去りにされる感覚、
経済的にも精神的にも助けてくれる人のない孤独な生活の方こそ
耐えられないものではないかな。

子供も成長し、親も成長する姿を持って和解したことは本当に
出来すぎているほど良くできた物語だった。

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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