特集ドラマ「風をあつめて」  〜平成２３年度文化庁芸術祭参加〜　実話による感動の物語 (2011年2月11日NHK放送) 制作統括 - 谷口卓敬 脚本 - 荒井修子 演出 - 真鍋斎 音楽 - 羽岡佳

--------------------------------------------------------
1987年春、病院の分娩室に駆けつける夫の浦上誠。妻の攝(セ
ツ)が現在出産中で、無事女の子が生まれる。
同じ職場の関根健介も出産した事を聞いて病室まで祝いにやっ
てくる。誠は子供の名前を杏子と書いてモモコという名前に
する事を発表する。
誠は妻・攝に対して、父が自分の幼少期に脳梗塞で倒れて以降
苦労して生活してきたので、普通の家庭に憧れていたことを
語り、杏子を生んでくれた事を感謝する。仕事も家庭も大事に
すると約束する。

夫の誠ははまなす園で働いていた。
清澄クリニックという老人向けクリニックの建設を計画して
おり、その為のスポンサー探しに躍起になっていた。

8ヶ月後、病院に呼び出された浦上夫婦は、医師から娘の杏子
は福山型筋ジストロフィーである事を告げられる。筋肉が
脆くて壊れやすく、成長するに従い食事をするのも困難になっ
ていくという。原因遺伝子の異常で、劣性遺伝子を持つ夫婦
が出産すると1/4の確率でこの病気を発症した子が生まれて
くるという。効果的な治療は現在の所無く、八歳が筋力的に
ピークだという。

それを聞いた誠は何かの間違いだとして別の病院に見てもらおう
というが、攝は今思えば思い当たる事があるという。発育が
遅れているだけかと思っていたが、ミルクの飲み方、泣き声が
弱く、座ることも出来なかった事を語る。

翌日関根にもその事を話す。
誠は現在進行中の計画の新クリニックを実現させることに
集中して子供の件を忘れようとしていた。

しかし最近帰宅が遅いとして妻・攝は夫を非難する。
誠には逃げるところがあって良い事を告げると、俺が働かない
と生活が出来ない事を訴える。もしかしたら家に帰りたくないの
ではないのか?と言われ、否定するも当たっていた。
神様が居れば健常者の子をくれるハズだとし、元気な子供が
欲しかった事を語る。それを聞いた攝は、それならば私と結婚
しなければ良かったわねと激怒する。

※
ＮＨＫ厚生文化事業団が主催するＮＨＫ障害福祉賞は、障害の
ある人や障害のある人を支援する人たちの体験手記を募集し
ています。この賞の過去の受賞作の中から、第31回（1996年）
最優秀賞受賞作「私たち夫婦の普通の家庭」（浦上誠　著）
を、このたびドラマ化します。
ふたりの筋ジストロフィーの娘と向きあいながら、いつしか
幼い命に自分たちが生かされていることを知る夫婦の姿を描
く、実話に基づく単発ドラマです。
--------------------------------------------------------

劣性遺伝子同士を持つ夫婦が結婚し出産すると1/4の確率で生
まれてしまう筋ジストロフィー。普通の家庭に憧れていた誠は
ショックを受けるが、妻と交換ノートで交流を続けていくウチ
に、少しずつ前向きになっていく。そして発症が1/4の確率な
らば、3/4の確率に賭けたいとして、もう一人の子が欲しい事
を妻に相談する。

障害児を抱える、九州男児の夫とそれを支える妻の物語。

障害児として生まれてきた子供に当初は向き合えずにいたが、
少しずつ妻と交換ノートを通して交流しているウチに、子育て
にも前向きになっていく。

阿蘇山に二人の子を連れて登頂する際に、一家心中を考えて
いるのではないかというくらい、家族に突きつけられた現実
が過酷だったので、ハラハラドキドキの展開だった。

元々気骨心の溢れている人なのだろうけど、それでも挫折し
絶望を味わう中で、仕事上でも上手く行かず、人生の難儀な
一面が凝縮された物語である。

普通の人がしている事を出来ない辛さ。
しかし角度を変えれば努力次第で、全く出来ない訳でもなく、
それを証明するための登山だったというのは、この主人公の
人間性を上手く証明していると共に、強さというものを感じ
るものだった。

それでも娘の苦しむ姿を見て、首を締めようとする姿があり、
人は何故生きているのかの問いかけに、上手く意味・意義を
見出していく所など良くできた内容だったと思う。

出資者の社長が誠に対して言葉の選択を誤り怒らせてしまう
けど、社長に悪気がない事は分かるし、こういう状況ってどんな
言葉を使って良いのか判断が難しいよね。

20歳まで生きたとする辺り、家族のフォローが行き届いていた
証拠だろうな。