橋田寿賀子ドラマスペシャル

結婚〜一人っ子同士の結婚大騒動娘を溺愛父
vs息子一筋の母が激突!!親の心、子知らず
…今まで、必死に育ててきた親心を石井ふく子がプロデュース


脚本/橋田壽賀子
プロデューサー/石井ふく子、西河喜美子
演出/脇田時三

http://www.tv-asahi.co.jp/kekkon/


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2009年春、悠造は庭でタバコを吸う。娘のちかげは禁煙出来無
いのは意志の弱い証拠だと告げるが、その気が無いのだから
意志の弱さも何もないとヘリクツを捏ねる父。父には母親の
為にも長生きして欲しいという。私が結婚したら家に居るのは
母親だけになってしまうというと、相手が居るのか?と一瞬顔色
を変えて聞き返してくる父。ちかげは相手が居ることを話そう
とするが、口には出せずにいた。
今日は母親・千津の誕生日。誕生日は家族全員で祝うものだと
してちかげに今晩は早く帰ってくるよう告げる。年を取っても
祝って欲しいものだという母親だった。

一方加納家はこの日結婚記念日だった。今まで通り家族全員で
祝うものだとして当然のように息子の弘太に早く帰宅するよう
告げるが、息子はそろそろその役目は夫婦間だけでやって欲し
いと心情を吐露する。弘治は独身の間は母・秀子は子離れでき
ないのだろう事を告げる。それだけ秀子にとって息子は生き甲
斐になっているとの事。

ちかげはデパート売り場で働いていた。同じ職場の弘太とは
両親に内緒で付き合って一年半になる。弘太は彼女の職場を
訪れて今夜は一緒に居て欲しい事を告げる。今日はオレにとっ
て親から自立するチャンスであり、弾みがないと結婚の事を
親には告げられないと語る。二人が結婚を言い出してから早く
も一年が経ってしまったこと。二人共に一人っ子の家庭故に
そう簡単に結婚式にたどり着けるとは思っていなかった。

ちかげは約束の時間に帰ってこない。
イライラするのは父・悠造だった。遅れて帰ってくるような
子供に育って平気なのかと妻の千津に告げる。しかしちかげが
花束を持って帰宅すると悠造は何もなかったかのように振る
舞う。三人で食事をし、母が風呂に入っている頃、ちかげは
父親に付き合っている人の存在とその人と結婚したいことを
告白しようとする。しかし悠造は娘からの話を聞こうともせず
話ののらりくらりと交わしてしまう。

一方加納家でも息子の弘太が帰宅しない事に苛立つのは母・
秀子だった。ぶつぶつ文句を言う秀子に夫の弘治はそろそろ
息子を付き合わせるのはよしたらどうかと声を掛ける。弘太に
も付き合っている相手が居るのだろうと告げるが、秀子は
付き合っている人物が居たとしても恋人と結婚相手はまた別の
問題だとして、結婚には敏感な様子が伺えた。
弘太は帰宅すると両親の前でちかげの事を告げる。相手は一人
っ子で両親は、銀座の老舗和装小物点を経営している事を
語る。秀子は相手が一人っ子だと聞いて真っ先に疑うのは、
養子になると約束していないかという事だった。弘太には加納
家を継いで貰わねばならないことや、親である私達の面倒を
見て欲しい事を語る。結婚はちかげと二人の問題である事を
告げると弘太は母が反対しても結婚する決意を見せる。

そんな中秀子が上原家が経営する店に足を運んだことで問題が
大きくなる。上原家にしては秀子の語る話しを理解できなかっ
たが、秀子がちかげに電話したことで徐々に真相が発覚して
いる。ちかげは両親に帰ったら話すと告げるが・・・
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一人っ子同士の結婚。
両家の親は共に子供たちに溺愛し、そんな親に甘えながら育っ
た子供たちは親の気持ちとは余所に結婚すると言い始める。
果たして親子はこの難題に歩み寄ることが出来るのか。

一人っ子故に課せられた家を守ることの意味、そして親の面倒
を見る事の必要性を訴えかけるもので、親と子の考え方の違い
が浮かび上がる。

あまりに意固地に自分の意見を押しつける親の姿を見ていると
親のエゴにしか思えない所もあったり、主張としても親よりも
子の方が時代性に適合しており、時代錯誤の親の主張を見てい
ると、ちょっと子供たちが気の毒に思える様な内容だった。
しかしそんな主張も徐々に気持ちがすり寄っていき、親子が
互いに必要な存在であることを認知していき、子供にとって
親の有り難みを感じていくような展開になっていく。

ドラマなどではよく問題点が発覚すると、向き合うことの必要
性を訴える内容が多いが、このドラマではどちらかというと
娘は父親と話し合いたいにもかかわらず、聞く耳を持たれないと
いう昔ながらの頑固な父親像が目の前に立ちはだかる。
また加納家では逆に母親が子供の主張に向き合おうとしない
現実に苛立たせるものとなる。

ドラマとして面白く出来ているのは、男親・女親の違いを浮か
び上がらせる演出や、子供が男性なのか女性なのかによって、
心配するのが互いに異性である親側に有るというシチュエー
ションだ。

子供を介した家族の付き合いは決して上手く行かないのだが、
親同士、男親、女親同士の間では同じ気持ちを共有して徐々に
関係を深めていく所など、良くできている部分だ。

ドラマでは温室育ちの子供達同士の結婚という事で、結婚に
対する本気度が何処まで有るのか、同棲する事を静かに見守る
事でそんな事情が浮かび上がってくるところは面白い部分で
いざ親元を離れた二人が、一人で暮らすことの厳しさを知る内に
親の気持ちや子供の気持ちを少しずつ育んでいくという段取り
に無理が無く、素直に共感できる内容となっている。

ただ一箇所、ちかげと弘太が結婚を辞めると言い出す辺りは
ちょっと安っぽい展開だった。弘太がその事を父親に告げて
殴られる辺りは、ドラマとしての常套手段では有るのだけど、
やや安易な感じがした。まぁこれも温室育ちの現代っ子っぽく
上手く行かねば諦めれば良いとするあっさりとした所を
描きたかったのかも知れないね。

少ない人物で構成された話で、どの人物もピッタリくるような
役柄だったが、松坂慶子役の秀子はちょっと突出した愛情を
見せていた感じも受ける。上戸彩は近年石原軍団化している
けれど、こういう娘役は安定感があるな。理想の父と娘という
感じがする。
家族以外に叔母という逃げ道を作っている設定も上手く利用
されていたと思う。

上原悠造 …… 渡哲也 (父、銀座老舗和装小物店"うえはら")
上原ちかげ …… 上戸彩 (デパート勤務、24歳)
上原千津 …… 高橋惠子 (母、小物店手伝い)

加納弘治 …… 西郷輝彦 (父、商社に勤務、趣味は釣り)
加納弘太 …… 徳重聡 (デパート勤務、27歳)
加納秀子 …… 松坂慶子 (母、専業主婦、息子命)

奥仲志乃 …… 若尾文子 (福島・いわきで割烹旅館。悠造の姉)

渡辺宜嗣(アナ)、別府康男、伊東知香、菊口富雅、東海林梨紗

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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