空中ブランコ
(2005年5月27日・金曜エンタテイメント特別企画・フジTV)

原作 - 奥田英朗『空中ブランコ』(文藝春秋刊)
企画 - 荒井昭博、保原賢一郎
脚本 - 橋本裕志
プロデューサー - 関口静夫、橋本芙美
演出 - 村上正典

連ドラ版 Dr.伊良部一郎 】【 映画 イン・ザ・プール 】



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ドリームサーカスで働く山下公平は、観客がが注視する中、
メインイベントである空中ブランコを行う。公平の事を受け止
めるのはスタントマン出身の
内田。しかし受け渡しは失敗し
下に落下してしまう。公平は楽屋に戻るとどういう事だと内田
を問いつめ、もっと腕を伸ばしてくれないと受け渡すことは
出来ないという。俺はオヤジの代からサーカスで働き、お前ら
スタントマン上がりとは違うという。公平の彼女の
エリ
そんな公平の事を止める。
公平の調子が上がらず苛立っている事を知って、
丹羽は最近
眠れていないから調子が上がらないのだとして、睡眠導入剤
だけでももらった方が良いと告げられ、病院に行くよう言われる。

病院で子供・
健太とキャッチボールをしている伊良部一郎
通院に来た公平にボールが何度も当たり、公平は苛立つ。
公平は受付で睡眠導入剤ならば精神科に行くよう言われ、
案内板に沿って精神科へと足を運ぶ。
精神科では不機嫌そうな看護師の
マユミが対応に出てくる。
医師の一郎に患者が来たことを告げると、一郎は久しぶりの患者
だと喜ぶ。

公平から話を聞くと不眠症だとしり、在り来たりな症状だと
してガッカリする一郎。気の静まるように取りあえず注射を
打つ。眠れないときにはビタミン剤が良いという。とにかく
心の病は気にしない事が一番で、病は気からというでしょうと
告げる。公平は自らサーカス団に所属している事を聞くと、
一郎は興味を持ち今度必ず行くことを約束する。
そんな中、一郎の元に別居中の妻から電話が鳴る。慰謝料3千万
を要求する妻に対して誰が払うかと手荒く電話を切る。
それを聞いた公平は患者に訴えられるとはヤブ医者だと感じて
その場から立ち去ってしまう。

公平はサーカス団に戻ると丹羽から病院に行ったか?と尋ねら
れる。うの病院は東京では有名な大病院だから、精神科の医師
も素晴らしいハズだという。先生を信じろといわれるが、公平
は何処か信じられなかった。

そんな中、看護師のマユミの香水のニオイがしたかと思うと、
一郎はサーカスを見に来ていた。一郎が共に来ていたのは、
先日キャッチボールをしていた少年・健太とその母親である
みどりだった。メインイベントの空中ブランコには山下が再び
チャレンジするが、客の前で大失敗。楽屋に戻ると山下は内田
に対してわざと失敗したなと告げ殴り飛ばす。駆けつけたエリ
や丹羽は、山下らしくないとして彼を止める。
楽屋に一郎とマユミがやってくると、取りあえず注射することに
なる。
注射だけで帰ろうとする一郎達。ウチはカウンセリングはやら
ないのだという。一郎はもう友達になったのだから今度一緒に
酒を飲もうと山下を誘う。

一郎は帰宅したかと思えばサーカス団が練習している場所に
行くと自ら空中ブランコに上り始める。皆危険だとして下りる
様説得するが辞めようとしない。丹羽はそんな彼の姿を見て、
もしかして患者の気持ちを知ろうとしているのではないか?と
いう。どうせビビッて飛べはしないというが、一郎はあっさり
とブランコに揺られ相手のブランコに飛び移ろうとする。
しかし握力・腕力が不足する彼では飛び移ることなど不可能だ
った。一郎は腕力を鍛えてまた明日来ると目を輝かせる。

一郎は病院で体を鍛える中、患者の
安川広美(27歳)が訪れる。
自ら女優だと名乗る彼女。取りあえず一郎はマユミに話して
ビタミン剤を注射で注入させる。一郎は精神科に来たらまずは
カウンセリングをしないといけないとして、広美から事情を
聞く。
広美もまた不眠症に悩む患者の一人だった。そうなった原因には
自分が外を歩くと周りからの視線が気になり、男性はストーカー
を始めるのだという。警察は犯人が特定しないことには動いて
くれないのだという。一郎は貴方が綺麗すぎることが問題で、
イメージを一新させるのもストーカー被害を防ぐ一つの手だと
告げる。ストーカーは意中の女性を神聖化しているので、犯人
を幻滅させる様な行動を取ればいいという。

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一見すると精神科・伊良部一郎治療しているとは思えない不可解
な行動を繰り返す。しかし患者と接していくウチに、医師と
患者という関係の壁を取り去ったように、一郎は患者の心に
違和感無く入り込み、上手く彼のペースに乗せられていく。
果たして彼を訪れる数々の患者の心の闇を取り除くことが出来る
のか。

連ドラ版に比べると似たようで居て実際には全然違うなという
感じがする。
やはり阿部寛さんの演じるキャラクターが特異では有るけど、
何処か憎めない所が上手くドラマを惹き付けているのだと思う。
どんな役柄を演じても嫌み無くハマってしまう所は、阿部さんの
強みだね。

2時間のドラマだけど、"先端恐怖症"、"自己愛性パーソナリティ
障害"、"全般性不安障害"、そして"ブランケット症候群"の患者
を登場させ、それぞれに上手く物語に関わり合いを見せる。
そして最後はこのドラマの主柱となっている空中ブランコの
エピソードに物語を集約させていくところなど、計算され尽く
されていてとても上手い。

連ドラ版を見ていると何で突然注射を打ち始めるのか分からず、
突拍子もない行動ばかりが目立つけれど、スペシャル版では
行動の一つ一つに意味があり、上手くその行動の意図を回収して
いる姿がある。

一郎に対して患者本人は不信感を覚えていくも、周りの人が彼
に対して名医だと疑う余地もなく、心酔していくところなど
とても面白いし、焦臭いヤクザの役目も上手いところに納めて
いるなと思う。

自分の信じる世界観を他人によって無理に否定される事を廃し
患者自身に誤りであることを気付かせるような行動・治療を
取る事が一郎の目指す診療だというのも、分かりやすい主張で
一郎の人間性がよく分かる。

細かいシュールなネタも面白く、元妻との慰謝料を巡る攻防戦
での一郎のキレっぷりも笑える物があったな。

連ドラ版は一話に一つの症例を紹介していくような感じ(アニメ
版形式?)なので、人間関係の妙が上手く出せないかも知れないな。

伊良部一郎 …… 阿部寛 (精神科医、院長の息子)
マユミ …… 釈由美子 (精神科の看護師)
山下公平 …… 堺雅人 (ドリームサーカス、演技部)
安川広美 …… 佐藤仁美 (女優志望)
猪野誠司 …… 遠藤憲一 (ヤクザ)
エリ …… 国分佐智子 (ドリームサーカス、公平の彼女)
内田 …… 飯沼誠司 (ドリームサーカス、ブランコキャッチャー)
吉安 …… 松重豊 (ヤクザ)

丹羽 …… 光石研 (ドリームサーカス)
羽鳥 …… 西川忠志 (小児科医)
原口みどり …… 浅野麻衣子 (健太の母、シングルマザー)
春樹 …… 古畑勝隆 (子分)
原口健太 …… 武井証 (息子、風邪、伊良部に慣れる)


俵木藤汰、隈部洋平、戸沢佑介、BOB藤原、鈴木葉月
野口かおる、野口寛、坂本三成、一青妙、THE MAN、ZEN、Mie、
椎葉辰朗、荻野藍子、高久ちぐさ、渡部彩、田中知彩都
井尚美、LAURA、小山佳織、土方みなみ、佐藤寿夫、馬杉俊介
瀬尾和永


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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