まいど238号 
(日本放送作家主催 第33回創作テレビドラマ大賞最優秀作品)

「発明マニアの祖父が作った介護ロボットがひきこもりの孫に奇跡を!」

原作/辻本昌平
演出/梛川善郎

http://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/8000/37178.html


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謙吉は部屋に引きこもる孫の文也に頼まれ買い物に行く。
父は出張、母は東京へと行き家には謙吉しかいない。
会話するときはいつも部屋の扉からメモを差し出してくる位で
話をしようともしない。

謙吉は気ままな年金暮らしで趣味の発明に興じていた。
唯一の気がかりは3年間心に傷を負って引きこもっている孫の
文也のこと。

謙吉は妻のツネが入居している老人ホームへ。
痴呆症が進んでおり、時々元の人格を失う彼女。今でも孫の文也
は幼稚園だと思っていた。
そんな老人ホームで働く福島正美と謙吉は出会う。
正美が元気に働いている姿を見て謙吉は、孫とは一つしか違わな
いのに、孫は3年間顔一つ見せてくれないという。それを聞いた
正美は絶対私が外に引き出してやると告げる。

文也の部屋にいくと正美は強引に扉に体当たりして扉を開けよ
うとする。無理矢理入るならば窓から飛び降りるという文也に
頭を抱える。正美は咄嗟にツネさんは癌で余命半年なのに死に目
に逢えなくて良いのかとして、一目でも逢うよう説得する。
正美は謙吉に嘘を付いてごめんと謝罪する。文也は学校で相当な
イジメに遭い、家では秀才の兄と比べられてきたために、人に
見られるのも喋られるのも嫌だとして部屋に閉じこもってしまっ
たという。謙吉が発明をしている事を知り、正美は得意の発明で
なんとかならないのかと告げる。

謙吉はロボットを制作しながら文也の幼いときのことを思い出し
ていた。そして完成させたのは"まいど238号"だった。
ごれで誰に見られても恐くはない。完成させたロボットとは、
文也の全身を覆うスーツの様なもので、フルフェイスのマスクを
被るために誰が中に入っているのか分からない物だった。
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引きこもりの孫のために発明したのは、外界から身を隠すための
全身を覆うロボット。それを使って外に出すきっかけをつくって
いく。

短いスパンのドラマで素材としてもかなり特異なものがあるとい
う不利な条件が重なる中、なかなかのアイディアもので面白かっ
た。
NHKに引きこもりの若者を語らせると上手いドラマを作るよね。

文也の事を外界と接触させずに部屋から出すためにはどうしたら
良いのか。決して強引に引き出したのではなく、出て行きたい
と思うシチュエーション作りも良くできていたし、一度外に
さえ出すことが出来ればどんな形であれ社会復帰は近い物では
無いかなと。

このドラマの面白さは、主人公の他人とのコミュニケーションの
方法を全て封じる中、どうやって心の中の声や感情を表現して
いくのかに尽きる。
無骨なロボットの動きが不思議と上手い表現力を持っていて、
視聴者にも上手く伝わる仕組みだったし、携帯電話というツール
の使い方も面白く、単なる文字列の中にも上手く感情を吹き込
めるものだなと感心するものがあった。

両親が息子のことに一番熱心にならねばならない所を、突き放し
ている辺りの事情に、この家族の事情が分かる気がするし、
高齢者時代の現在、高齢者の役割を上手く引き出すような内容
だった。

謙吉の弟役にレツゴー三匹のレツゴーじゅんさん。

三柳謙吉 …… 津川雅彦 (三柳製作所で発明)
三柳謙次郎 …… 逢坂じゅん (謙吉の弟、老人ホーム経営)
三柳文也 …… 辻本祐樹 (孫、次男・引きこもり)
幼少期の文也 …… 山崎竜太郎 (長男と比較される)
三柳孝子 …… 吉田羊 (母親、教育ママ)
福島正美 …… まつこ (介護士、ぽっちゃり)
前田先生 …… 野添義弘 (診療医)
西田義男 …… 石井光三 (老人)
村尾 …… 田岡美也子
小松 …… 土平ドンペイ
前島 …… 細見大輔
中島 …… 山野史人
金沢 …… 桂亜沙美
木村 …… 築出静夫
石川 …… 嶋村仲夫
橋本 …… 角谷栄次
嶋田 …… 池田道枝
辻吉 …… つじしんめい
大山 …… 飯田孝男
芝浦 …… 山梨ハナ
日舞の先生 …… 児玉陽子
岡島 …… 中谷竜
守屋 …… 松下哲


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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