ドラマ・大阪ラブ&ソウル〜この国で生きること
(平成22年度文化庁芸術祭参加作品)

原作/林海象
音楽/村松崇継
演出/安藤もじり
チーフ・プロデューサー/越智 篤志、青木 信也

http://www.nhk.or.jp/dodra/lovesoul/


「国境を越えて結ばれる家族の絆」

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大阪・生野区生まれの在日コリアン三世・金田哲浩は法学部の
大学生。彼は趣味の音楽活動でブルースハープの演奏をしてい
るが、仲間からはお前にはソウルが無いといわれる。苦労知ら
ずの大学生では仕方がないかと言われる。

大阪・鶴橋は日本でも有数のコリアン・タウン。人口の1/4は
在日。哲浩は在日三世で国籍は韓国にあるが、心は日本人だと
感じていた。父・
暉雄は朝鮮戦争の時に生まれ、哲浩はソウル
オリンピックの時に生まれた。

この日、
焼き肉屋"オボジ屋"を経営する父・暉雄の還暦のお祝
いとして、親戚や仲間が店に集まる。長男の
正夫は乾杯の音頭
を取ろうとするが、暉雄がマイクを奪う。普通自分の祝いの
席で乾杯は取らないだろうとするが、私の生き方にルールなど
無いという。

金田家は62年前に済州島から日本に渡ってきた。
昭和43年にホルモン焼きの屋台をし、現在は正夫が引き継いで
くれたという。後は哲浩が卒業して弁護士になってくれたら言う
事はないと語る。暉雄は自分の力でここまでのし上がってきた
事。日本人に何ら言われる筋合いはないとするが、祖母の
スン
ジャ
は今は今、昔は昔だという。

そんな中、哲浩は突然マイクを握り、みんなの前で発表が
有るという。今度結婚するという事。相手はミャンマーからの
難民で自分と結婚すれば永住権を得られるという。愛は国境を
超えたので応援して欲しいとの事。そして自分は独立して
ハープで暮らすというと、暉雄は俺は外国人が嫌いだとし、
結婚は許さないという。親にごちゃごちゃ言われたくないとし、
頑固親父は自分の思い通りにならないとすぐに鉄拳が飛ぶと
文句を告げ、店から出て行く哲浩。
親戚一同で写真を撮影するが、その中に哲浩の姿はなかった。

哲浩の相手・
ネイチーは料理店で働いていた。そんな彼女に
哲浩から電話が鳴り、仕事が終わった11時30分頃、安田家で
会おうと告げる。

二人の出会いは半年前。
バイト先の居酒屋で出会ったもの。哲浩は店長の
北村守から
彼女を紹介してもらい、彼は自分は在日の韓国人である事を
語ると、彼女は日本に来る前には韓国に5年間滞在しており、
その時にとても優しくしてくれたとして、韓国に好感を持って
いるという。ネイチーの歓迎会の場で、彼女は祖国の歌
"お母さんの家"を歌うことで、それを聞いた彼は一目で美声に
惚れてしまったのである。そこにはソウルが込められていた。

ネイチーは
日本ビルマ支援ネットワークをしている安田雅恵
の家にお世話になっていた。結婚したら安心して日本に住める
というが、ネイチーは哲浩が好きだが迷惑は掛けたくないと
いう。しかも彼が22歳に対して、自分は29歳という年齢差も
気にしており、結婚は愛情だけではどうにもならず、家族に
祝福されないような結婚は無理だという。安田も二人でじっくり
話し合って欲しいと語る。

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哲浩はミャンマーからの難民・ネイチーと恋に落ち結婚したい
と考える。しかし哲浩が現在大学生である事や、ネイチーとは
年齢差がある事、そして何よりも外国人が嫌いだとする父から
の反対があり、関係を結ぶことが出来ないで居た。更にネイチー
は、日本で難民認定を待つよりもカナダで国籍取得した方が
良いのではないか?と弁護士から言われ思い悩む。

自分たちのルーツを巡る旅という事で、親戚の居る韓国に渡る。
家族が引き裂かれる悲しみに触れることで、国籍の違う二人の
思惑の違いを徐々に近づけていくもの。
果たして祖父母の故郷である韓国・済州島に渡り、何を感じて
いくのか。

済州島の四・三事件という韓国ではタブー視されている惨殺事件
が取り上げられる格好となった。
なんと言っても30万近くいた済州島の人口が一気に、9割近く
減ってしまったという数値上の衝撃さが目に付く事件。
今でこそ観光地として取り上げられているが、済州島は
ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」などでも描かれるけれど、
罪人の流刑地として使われていた事もあったり、本土からの
激しい差別があった事もよく耳にする。

家族は一緒に過ごすべきで有るという主張も、済州島の親戚たち
の言葉を聞いていると、なんだかその気も失せてしまいそうに
なるけれど、大阪に居る在日の家族は言い争いしながらも良い
関係を保っている。

厳しい時代を生きてきた人が目の前にいることで姿勢を正される
様な思いがするが、現在放映している橋田壽賀子の「99年の愛」
同様に祖国から離れた人の、アイデンティティの問題だったり
どちらの国からも受け入れられない辛い差別の現実が存在して
いる。

気勢を張って生きてきた父親が見せた初めての涙。そして
頼りない次男の一歩成長する姿。親子で旅をしながら今まで
とは違う家族の一面を眺めることで、自覚しながら生きていく
事が出来るようになったのではなかろうか。

そういえば、スジュン役は、日本でもおなじみ「冬のソナタ」
のユジンの父役の俳優さんだね。


金田哲浩 …… 永山絢斗 (次男)
ネイチー・ティン …… ダバンサイヘイン (難民)
安田雅恵 …… 南果歩 (難民支援団体を主宰する女性)
浜田嘉雄 …… 石倉三郎 (弁護士)
金田貞子 …… 三林京子 (哲浩の母)
金田暉雄 …… 岸部一徳 (哲浩の父)
金田正夫 …… 小市慢太郎 (哲浩の兄)
金田宏美 …… 吉井有子 (哲浩の義姉)
北村守 …… 阿南健治 (居酒屋店主)

キム・スンドゥ …… ユ・スンチョル (哲浩の亡き祖父・金喜斗(キム・ヒドゥ)の実弟)
キム・スジュン …… ハ・ジェヨン (暉雄の従兄弟。承斗(スンドゥ)の息子)
キム・ヒドゥ …… チェ・ゼウ (哲浩の亡き祖父。)
キム・スヨン …… ホン・アルム (哲浩の再従兄弟。收鐘(スジョン)の娘)
パク・スンジャ …… 笛木優子 (回想シーン)
パク・スンジャ …… 新屋英子 (哲浩の祖母)

土平ドンペイ、鍋島浩、村上かず、浜口望海、いけだあさひこ
東島悠期起、中尾雅典、榎田貴斗、細田龍之介、杉本湖凜
イ・ギョンベ、ムン・ヨンスク、チョン・デハラ
チョン・チョルジョン、キム・ギョンウン、チェ・ユンチョル


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