王様の家
(「第29回ATP賞テレビグランプリ2012 ドラマ部門 最優秀賞 受賞記念
スペシャルドラマ 王様の家」)

プロデュース - 大木由起子、井上竜太
脚本 - 樫田正剛
演出 - 伊藤寿浩
主題歌:「残された時間」 和田アキ子

http://www.bs-asahi.co.jp/king/




 

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平井陽介「ナイトセブン」のニュースキャスターであり、
キングと呼ばれていた。私生活は公表されていなかったが、
10年ぶりに戻った長男・翔、父親と同じ年齢の男性と恋に落ちた
長女・有沙、引きこもり気味の次男・準を抱える家庭の持ち主でもある。
キャスターとして脚光を浴びる前にはコメディアンとして
活動していた。
2年前の生放送の中で、家族がいることを暴露した陽介は、
私にとってかけがえ無い存在である事を語り、ジャーナリスト
として、世界の紛争地に行き、自分の新たなスタートラインと
したい事を宣言した。
あれから2年後、再び「ナイトセブン」のニュースキャスター
として復帰する

私生活を暴露した陽介に対して、妻の節子は高校時代の学友
三人を自宅に招くことが多くなった。話題の中心は夫の定年
で有ったり、孫のことで有ったり・・・
キングは室内で仕事をしていたが、居間で妻たちが会話して
居るためにトイレになかなかいけずにいた。
節子の友達は結婚したという手紙こそもらったものの、まさか
キングと結婚しているとは思わなかったとして、驚きの目を
向ける。そんな中、キングがトイレの為に部屋から出てくると
みんな好奇の目でキングを見る。テレビで見るよりも若いと。

節子は今は普通のことがとても楽しく感じられると告げると
キングもこれからはどんどん友達を自宅に招いて楽しめと
語る。節子は私たちの話題はほとんど孫の話だが、私たちも
良いお爺さん・お婆さんになれるか?と問う。
翔は32歳、そろそろ結婚時期ではないかとするが、相変わらず
バイト生活しているところを見るとその期待は無理だろうと
いう。
翔が帰宅する中、キングはいろいろと説教しようとするが、
最近翔は物忘れがひどいので、レン坊だと呼ばれていること
を告げる。

一方節子は有沙は二人だけで食事をする。食卓が寂しくなった
事を告げる二人。翔はバイトで次男の準は全寮制の高校に進学
したことも有り、夕食時は二人だけの食卓だった。
そろそろ「ナイトセブン」が始まるとして節子はテレビをつける。
いつか子供たちも出て行くので私と陽介の二人きりになるのか
と寂しがるのだった。
そんな中テレビの陽介は、日本は晩婚化の傾向にあり、男性は
30歳、女性は28歳平均だという。
二人は翔に結婚相手は居ないのか?と問うと、有沙は翔は夢ばかり
語る人の妻になったら苦労するので難しいのではないかという。
節子は私たちだって生活は不安定だった事を告げると、今は
母の時代とは違って物価が違うという。テレビでは陽介が
子供一人にかかる養育費は1人平均1300万で、大学まで通わせれば
2100万円がかかると告げ、子供を持つことが容易ではないこと
が語られる。
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キングこと平井陽介は、今まで家庭がいることを公にしてはこなかった
がナイトセブン降板をきっかけとして、最後に事実を公表する。
自分には2人の息子と1人の娘、そして妻がいるということ。
あれから2年、再びキングはナイトセブンのニュースキャスターとして
復帰する中で、相変わらずバイト生活を続けている翔があるとき突然
酔った女性・木下奈保子と帰宅する。酔った勢いで、奈保子は陽介たち
の前で翔と結婚する事を告げ、翌日シラフになった際に改めて挨拶
するという。陽介ら家族は正式なプロポーズの話かと思い、彼女たち
が部屋から出てくるのを一日中待っているが・・・

BS朝日で連ドラ版として放送されていた王様の家のスペシャル版。

まさかスペシャル版が制作されるとは思わなかった。
偶然番組表を見てスペシャル版の放送を知ったのだけど、危うく
見逃すところだった。

2年後という設定だけどオフィシャルの年齢設定では一年しか繰り上がって
いないような気がする。60歳定年制みたいな口ぶりであるところも微妙
に気になるし、陽介はジャーナリストとして初心に戻るべくして、
紛争地に取材に行くという設定はどうしたんだ?って突っ込みどころもある。

世間からはキングと呼ばれているけど、家庭内では至って普通の父親だと
言わんばかりにして、家族から愛されていることを示しつつもなぜかみんな
から存在が消されたかのようにして扱われて、特に次男に関しては、
ビデオメッセージ内で完全に父親のことを無視しているという構図が、
ほほえましくも有り、無礼にも感じる。

ネタとしては偶然なのか、つい先日まで市村正親さんが出演していた
Oh,my Dadの主張と似ているテーマの下で描かれた話だった。
定年を間際に控えた男たちの意地の張り合い。
誰よりもプライド高くして働いてきたキングと、それ以上にプライドの高い
大学時代の同期生を登場させて、二人の行き違った人生に於ける
価値観・主張をぶつけていくところなど面白くできていたのではなかろうかと。

息子がバイトの身でありながらも結婚することや、突然酔ってプロポーズの
挨拶に来た結婚相手のことなど、ものすごく無礼過ぎるにも程があると
思いながらも、キングは奈保子のことに関しては、礼儀正しいと称するところ
はかなりの違和感は有った。ただジャーナリストとしてのキングとしての立場
と、家族の父親的立場の視線に立つ視線の差異に若干視聴者も振り回され
つつも、結果的にはニュースキャスターとして手慣れた感じに他人を引き込む
だけの発言力・説得力で展開を丸め込んでしまうところは流石なんだろう
けどね。

仕事と家庭、そして社会に於ける学歴や肩書きの問題などにも触れつつ、
何が正しいのか正しくないのか。世間的な見栄の為家族を犠牲にして
来た事へのツケなり、責任を感じさせつつも、最終的にはプライドなど
かなぐり捨てることが出来た初心に帰ることの必要性をうまく唱えた感じ
だった。

うまく話がまとまりそうだったのに、奈保子の劇団のチラシを見せて、親を
心配させたり、有沙がまた沢田との交際が続いていることを示唆したり
して凄いオチを用意した。62歳の定年間近の親に対するエール的意味合い
も有ったりするのか。
キングが同期生の光太郎と会話することを通して、自らにも言えることだと
考えてプライドをかなぐり捨てていくところもまた、愛されるべき父親の姿が有っ
たね。

平井陽介 …… 市村正親 (62歳、「ナイトセブン」のニュースキャスター)
平井翔 …… 要潤 (31歳、長男、12年ぶり帰宅)
平井節子 …… 岡田奈々 (54歳、陽介の妻)
平井有沙 …… 佐津川愛美 (24歳、長女、キャリアウーマン)
平井準 …… 吉岡澪皇 (15歳、次男・中三)
牧野智孝 …… 石倉三郎 (62歳、陽介のマネージャー)
川崎祐一 …… 春川恭亮 (24歳、マネージャー)

大島蓉子、松本じゅん、小柳友貴美、小野麻亜矢

木下光太郎 …… 風間杜夫 (62歳、奈保子の父。大手企業の重役)
木下奈保子 …… 鈴木砂羽 (38歳、翔の結婚相手、劇団"夢のムーミン社")
沢田信一 …… 森本レオ (62歳、有沙の彼)

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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