臨月の娘
(第9回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞)

脚本/小山ひとみ
プロデューサ/川西琢、壁谷悌之
演出/常廣丈太

http://www.tv-asahi.co.jp/scenario/


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10年前妻子と別れた梅村省三は、この日出張で栃木から東京へ
と向かう。10年ぶりに娘・千鶴に逢いたいとして元妻に電話
するもあっさりと切られてしまう省三。しかしその後突然娘
の方から連絡があり、ぶっきらぼうに待ち合わせ場所を指定
してきたという。同僚の多田政春からは、捨てたことをむかつ
いて居ることは確かだろうから覚悟しておくように告げられる。

娘と再会する省三は度肝を抜く。なんと16歳で高校に通って
居るはずの娘は、大きなお腹をしてやってきたのである。
高校は辞めた、子供の父は元彼だという。元彼は子供を認知し
てくれずにいるが、好きな男性の子供であるし産むことを決め
たという。
二人で食事に向かう。省三は元妻に電話しようとするが、母には
内緒で来た事を理由に電話しないで欲しいという。ただでさえ
悪いことをして母親には迷惑をかけているとのこと。悪いこと
とは万引きや家出だという。千鶴は父親に再婚はしたのか尋ねる
がしていない事を告げると、他の女と結婚するために別れたの
ではないのかと告げる。
私に逢いたくなかったのか?と千鶴は問う。逢いたかったとは
言うが実際に会いに来ることはなかった事を問い詰める彼女。
なんで急に会いに来たのかと告げる。
千鶴から子供の父親だとするキヨシの写真を見せられる。
親とも友人ともソリが合わない時期に近所でアルバイトしてい
たキヨシだけが優しくしてくれたので関係を持ったとのこと。
それを聞いた省三は、娘に寂しい思いをさせてしまったと悔いる。
明後日帰るまでにキヨシに逢わせて欲しいという省三。千鶴は
結婚は考えていないし相手にはもう別の彼女が居ることを告げ
る。それでも明日必ず連れてきて欲しいと告げタクシーで送る。

宿舎に戻る省三は多田から10年ぶりの再会はどうだったかと
尋ねられ思わず"道に迷った野良猫だ"と告げる。

翌日再び娘と逢う省三。キヨシに連絡はしたが、何故逢わねば
ならないのかと断られたという。省三は彼の家まで案内して
くれと告げると千鶴はキヨシが現在付き合っている女性の元へ
と連れていく。しかし不在。近くにある公園で彼の帰りを
待つことにする。
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10年ぶりにあった娘は妊娠・臨月の状態だった。
父・省三は娘のために何が出来るのか考え、気持ちに従い行動
を取ることになる。

ドラマ「交渉人」で見せたような筧利夫さんのシリアスな演技と
父親を困らせるようでそれでいて愛らしい娘役を桐谷美玲
さんが演じる。

イマイチ何故10年なのかという理由については良く解らないもの
が有ったが、10年間離れていたという設定により、娘の中で何が
変わり何が変わっていないのか、触れあっていくウチに変わって
しまった事への責任感を省三が感じていく所は良く描かれている。

この二人、とても息のあった感じに会話の中にはユーモラス
な一面も垣間見られて、見ていて飽きない。

娘は父親を困らせようとするが、その行動の節々には愛情が
見え隠れしているし、父親を求めようとしている所にも何処か
同情してしまいそうになる。

優秀な娘がふしだらさを演出することで、父親に対して一種の
賭けに出たのでは無かろうか。
娘が突きつけた課題に対して、父親のとる態度如何によっては
二度と逢わない事を誓う位の意気込みがあったのかも知れない
し、父親の影を吹っ切るかどうかの最後の賭けだったのかも
知れない。

妊娠に関しては何処か嘘を付いているのではないかと思わせる
部分が有り、千鶴の人物像に対しても途中でそのヒントになる
べきものが存在している。

最後はやや出来過ぎていて蛇足な感じもしたが、普通の制服姿
の娘を見た省三にとっては感慨深い物があるのでは無かろうか。

梅村省三 …… 筧利夫 (43歳、父、栃木で働く)
真野千鶴 …… 桐谷美玲 (16歳、娘、高校生)
多田政春 …… 石井康太 (省三と同じ会社で働く)
高木キヨシ …… 若葉竜也 (千鶴とバイト仲間)
渥美レイコ …… 岡本 玲 (千鶴と同級生、演劇部)
高橋誠二 …… 松島庄汰 (アルバイト、父が倒れる)


評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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